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医療企業分析アカデミー

第63講 代替品の脅威とは何か?――新しい医療技術は既存企業の市場をどう変えるのか

JMEI 医療企業分析アカデミー 第63講 新しい医療技術は既存企業の市場をどう変えるのか

はじめに

こんにちは。日本医療企業研究所(JMEI)です。

前回の第62講では、「供給者の交渉力」について学びました。

医療企業の収益性は、原材料や部品を供給する企業との力関係によって影響を受けます。

特定の原材料を供給できる企業が少なければ、調達価格が上昇する可能性があります。

また、供給停止によって製品の製造ができなくなる場合もあります。

しかし、医療企業の長期的な競争力を考えるとき、もう一つ重要な問題があります。

それは、「現在販売している製品そのものが、将来必要とされなくなる可能性はないのか」という問題です。

例えば、ある医療機器メーカーが、特定の診断装置市場で60%のシェアを持っているとします。

競合企業よりも高い技術力を持ち、多くの病院に製品を販売しています。

営業利益率も高く、安定した収益を確保しています。一見すると、非常に競争力の強い企業です。ところが、新しい診断技術が登場しました。

従来の装置を使用しなくても、同じ臨床上の目的を達成できる可能性が出てきたのです。

もし新しい技術が医療現場に普及すれば、従来の診断装置の需要は減少するかもしれません。

この場合、既存企業が市場シェア60%を維持していても、市場そのものが縮小すれば売上高は減少します。

ここで重要になるのが、代替品の脅威(Threat of Substitutes)という概念です。

今回は、医療企業の競争環境を大きく変える代替技術について学びます。

医療機器、医薬品、医療DXを例に、代替技術が企業の売上高、利益率、研究開発戦略、企業価値にどのような影響を与えるのかを考えていきましょう。

代替品の脅威とは何か

代替品の脅威は、ファイブフォース分析の5つの競争要因の一つです。

代替品とは、既存の製品やサービスとは異なる方法で、顧客の同じ目的や必要性を満たす製品・サービスを指します。

例えば、ある病気を診断するために、従来は特定の検査装置が必要だったとします。

しかし、新しい検査方法が登場し、同じ診断目的を達成できるようになれば、その新しい検査方法は既存装置に対する代替手段となる可能性があります。

重要なのは、製品の形が似ているかどうかではありません。

顧客が達成したい目的を、別の方法で実現できるかどうかです。

医療産業では、この目的が非常に重要です。たとえば、患者の病気を診断する、病気を治療する、症状を改善する、合併症を予防する、医療従事者の業務負担を軽減する、医療費を適正化する、といった目的が挙げられます。

こうした目的を、異なる技術や方法によって達成できる場合、代替関係が生まれる可能性があります。

ただし、医学的に似た目的を持つだけで、直ちに代替品になるわけではありません。

臨床的有効性、安全性、適応患者、費用、医療制度などによって、実際に代替できる範囲は異なります。

代替品と競合製品は何が違うのか

ここは非常に重要です。競合製品と代替品は、似ているようで異なります。例えば、病院が超音波診断装置を購入するとします。

A社とB社が、同じ用途の超音波診断装置を販売している場合、両社は直接競合する可能性があります。

一方、特定の診療目的について、超音波検査とは異なる検査方法で必要な情報を得られる場合、その検査方法が代替手段になる可能性があります。

ただし、検査方法が異なっていても、診断できる対象や精度、安全性が異なれば、完全な代替にはなりません。

つまり、競合製品は同じ市場内で顧客を奪い合う関係です。

代替品は、異なる方法によって顧客の需要を満たし、既存市場の需要そのものを変化させる可能性があります。

企業分析では、この違いを理解する必要があります。

市場シェアが高くても安心できない理由

ここで、第60講で学んだ市場シェアとの関係を考えましょう。

ある医療機器市場の年間売上高が1,000億円だったとします。

A社は、この市場で60%のシェアを持っています。

A社の売上高は、1,000億円×60%=600億円です。

ところが、新しい代替技術が普及し、既存市場が5年間で600億円へ縮小したとします。

A社が60%の市場シェアを維持した場合、売上高は、600億円×60%=360億円となります。

市場シェアは60%のままです。

しかし、売上高は600億円から360億円へ減少しました。

減少率は40%です。

このケースから重要なことが分かります。

市場シェアが高いことと、市場そのものが成長することは別の問題です。

企業分析では、競合企業とのシェア争いだけでなく、市場全体が将来どのように変化するのかを考える必要があります。

代替品の脅威を強くする5つの要因

代替品の脅威は、主に次の5つの要因によって強くなる可能性があります。

1つ目は、「代替技術の性能が優れている」という要因です。新しい技術が、既存技術より高い有効性や安全性を示す場合です。ただし、医療では適切な臨床評価が必要です。

2つ目は、「代替技術の費用が低い」という要因です。同じ臨床目的を、より低い費用で達成できる場合です。ただし、製品価格だけでなく、導入費用や運用費用も考慮する必要があります。

3つ目は、「代替技術の使いやすさが高い」という要因です。操作が簡単で、医療従事者の負担を軽減できる場合です。

4つ目は、「既存製品からの切り替えが容易である」という要因です。新しい技術への移行に必要な研修や設備投資が少なければ、普及が進みやすくなる可能性があります。

5つ目は、「医療制度が普及を後押しする」という要因です。診療報酬や保険償還制度などが、代替技術の導入に影響する場合があります。これらの要因を組み合わせることで、代替技術が既存市場に与える影響を分析できます。

医療技術では「新しい=優れている」ではない

医療産業の代替品分析で、最初に注意すべきことがあります。

それは、新しい技術が必ずしも既存技術より優れているとは限らないことです。

例えば、AIを利用した新しい診断支援システムが開発されたとします。

従来より短時間で画像を解析できる可能性があります。

しかし、解析速度が速いことだけで、既存の診断方法を代替できるとは判断できません。

診断精度は十分か。偽陽性や偽陰性はどの程度か。異なる医療機関でも同じ性能を発揮できるか。患者の診療結果にどのような影響を与えるか。医療従事者による確認が必要か。こうした問題を評価する必要があります。

さらに、臨床的な有用性が確認されても、費用や制度上の問題によって普及が進まない場合があります。

したがって、医療企業分析では、技術的な可能性、臨床的な有用性、商業的な普及を分けて考えることが重要です。

医療機器市場における代替技術

医療機器市場では、さまざまな技術が発展しています。

例えば、診断技術です。

従来の検査方法に対して、異なる測定原理を利用した検査方法が開発されることがあります。

また、治療技術でも、従来の外科的治療に対して、低侵襲な治療方法が選択肢となる場合があります。

ただし、低侵襲治療がすべての患者で従来治療を代替するわけではありません。

疾患の種類、重症度、患者の状態などによって適切な治療方法は異なります。

ここで企業分析に重要なのは、代替技術が登場したとき、既存企業の売上高がどの程度影響を受けるかということです。

例えば、ある企業の売上高の80%が特定の診断装置に依存している場合、その装置の需要が減少すれば企業全体への影響は大きくなります。

一方、複数の診断技術を持つ企業では、既存製品の需要減少を別の製品で補える可能性があります。

つまり、代替技術の脅威は、企業の製品構成によって異なります。

ケーススタディ1 代替技術で市場が縮小したらどうなるか

架空の医療機器メーカー、Medical Device A社を考えます。

A社は、特定の検査装置を販売しています。年間販売台数は1,000台です。販売価格は1台500万円。1台当たりの変動費は300万円です。年間固定費は10億円とします。まず、売上高を計算しましょう。

1,000台×500万円=50億円。

変動費総額は、1,000台×300万円=30億円。

限界利益総額は、50億円-30億円=20億円。

固定費10億円を差し引くと、営業利益は10億円です。

ここで、新しい代替技術が普及し、A社の販売台数が30%減少したとします。

販売台数は700台になります。

売上高は、700台×500万円=35億円。

変動費総額は、700台×300万円=21億円。

限界利益総額は、35億円-21億円=14億円。

固定費が10億円のままであれば、営業利益は4億円です。

比較してみましょう。

代替技術の普及前は、販売台数が1,000台、売上高が50億円、変動費が30億円、限界利益が20億円、固定費が10億円、営業利益が10億円で、営業利益率は20.0%です。普及後は、販売台数が700台、売上高が35億円、変動費が21億円、限界利益が14億円、固定費は10億円のままで、営業利益は4億円、営業利益率は約11.4%になります。

販売台数は30%減少しました。しかし、営業利益は60%減少しています。なぜでしょうか。固定費が変わらないためです。

このように、固定費の大きい企業では、販売数量の減少が利益に大きな影響を与える場合があります。

代替技術の脅威を分析するときには、市場縮小率だけでなく、企業の費用構造を確認する必要があります。

代替技術と営業レバレッジ

先ほどのケースは、営業レバレッジの重要性を示しています。

営業レバレッジとは、売上高の変化が営業利益にどの程度大きく影響するかを示す考え方です。

固定費の割合が大きい企業では、売上高が増加すると利益が大きく増える場合があります。

一方、売上高が減少すると、利益が大きく減る場合もあります。

医療機器メーカーでは、製造設備や研究開発体制などに一定の固定費が必要になる場合があります。

そのため、代替技術によって既存製品の販売数量が減少すると、利益への影響が大きくなる可能性があります。

企業分析では、売上高が何%減少する可能性があるか、固定費をどの程度削減できるか、新しい製品へ生産設備を転用できるか、という視点が重要です。

製薬企業における代替品の脅威

次に、製薬企業について考えましょう。

製薬企業では、既存医薬品に対して新しい治療法が登場することがあります。

例えば、ある疾患に対して、長期間の薬物治療が必要だったとします。

その後、新しい作用機序を持つ医薬品や、異なる治療方法が開発される場合があります。

新しい治療法によって、従来の医薬品の使用が減少する可能性があります。

ただし、すべての患者が新しい治療法へ移行するとは限りません。

たとえば、治療効果、副作用、患者の状態、治療費、投与方法、医療制度といった条件があります。

こうした条件によって、実際の代替範囲は異なります。

製薬企業を分析するときには、新しい治療法が既存医薬品のどの患者層を代替する可能性があるのかを考える必要があります。

特許切れと代替品の脅威は同じではない

ここで重要な違いを整理しましょう。

製薬企業では、医薬品の特許が満了すると、後発医薬品との競争が生じる場合があります。

しかし、これは必ずしもファイブフォース分析における代替品の脅威と同じではありません。

同じ有効成分を持つ後発医薬品との競争は、基本的には既存市場内の競争として考える方が適切な場合があります。

一方、異なる治療方法によって同じ臨床目的を達成する場合には、代替品の脅威として分析できる可能性があります。

例えば、薬物治療に対して、異なる治療技術が選択肢となる場合です。

重要なのは、技術の違いだけではありません。

医療現場において、実際に同じ患者の治療選択肢として比較されるかどうかです。

この違いを理解することで、製薬企業の競争環境をより正確に分析できます。

ケーススタディ2 主力医薬品が代替されたらどうなるか

架空の製薬企業、Pharma B社を考えます。B社の年間売上高は1,000億円です。そのうち、主力医薬品Xの売上高は400億円です。

つまり、企業全体の売上高の40%をXに依存しています。

ここで、新しい治療法が普及し、Xの販売数量が3年間で50%減少したとします。

販売単価が変わらないと仮定すると、Xの売上高は、400億円×50%=200億円となります。

他の製品の売上高が変わらなければ、企業全体の売上高は、1,000億円-200億円=800億円です。

売上高は20%減少します。

ただし、営業利益への影響は、この情報だけでは計算できません。

医薬品Xの利益率、製造費用の変化、研究開発費、販売費、新製品の売上高といった要因によって影響が異なるからです。ここで重要なのは、主力製品への依存度です。

代替技術の脅威が同じでも、売上高が特定製品に集中している企業ほど、企業全体への影響が大きくなる可能性があります。

代替技術は市場を消滅させるとは限らない

ここまで、代替技術によって既存市場が縮小する例を考えてきました。

しかし、代替技術が登場したからといって、既存市場が必ず消滅するわけではありません。

例えば、新しい診断技術が登場した場合です。

その技術が特定の患者群では優れていても、別の患者群では従来技術が適している場合があります。

また、新しい技術の費用が高く、導入できる医療機関が限られる場合もあります。

このような場合、既存技術と新しい技術が共存する可能性があります。

企業分析では、代替技術の普及を、完全代替、部分代替、補完関係という3つの可能性から考えることが有効です。

完全代替とは、既存技術の需要の大部分が新技術へ移行することです。

部分代替とは、特定の患者や用途で新技術が使用されることです。

補完関係とは、既存技術と新技術を組み合わせることで、医療上の価値が高まることです。

医療AIは既存技術を代替するのか

医療AIは、代替技術を考えるうえで重要なテーマです。

例えば、医療画像を解析するAIです。

AIによって、画像の異常候補を検出したり、医療従事者の判断を支援したりすることが期待されています。

しかし、AIが画像解析の一部を支援することと、医師による診断全体を代替することは異なります。

医療AIには、診断支援、業務効率化、情報整理など、さまざまな用途があります。

そのため、企業分析では、AIがどの業務を代替するのか、どの業務を補完するのか、医療従事者による確認は必要か、医療機関の費用構造は変化するのか、という視点が重要です。

例えば、AIによって医療画像の読影作業の一部が効率化されれば、医療機関の業務負担が軽減される可能性があります。

一方、AIの導入によって新しい検査需要が生まれる可能性もあります。

つまり、医療AIは既存市場を縮小させるだけでなく、新しい市場を形成する可能性もあるのです。

代替技術は新しい需要を生み出す場合がある

代替技術の分析では、市場縮小だけを考えてはいけません。

新しい技術によって、従来は提供できなかったサービスが可能になる場合があります。

例えば、ある検査が大型設備を必要とし、限られた医療機関でしか実施できなかったとします。

その後、小型化や操作性の改善によって、より多くの医療機関で利用できるようになった場合です。

この場合、既存の大型装置の需要が減少する可能性があります。

一方、検査を受けられる患者数が増え、市場全体の需要が拡大する可能性もあります。

つまり、代替技術には、既存需要を奪う効果と、新しい需要を生み出す効果という2つの側面があります。企業分析では、この両方を考える必要があります。

市場規模と代替率を分けて考える

代替技術が既存企業に与える影響を分析するときには、代替率という考え方が役立ちます。

ここでは、代替率を、既存製品の需要のうち新しい技術へ移行する割合として考えます。

例えば、ある医療機器市場の年間売上高が500億円だったとします。

新しい技術によって、既存市場の20%が代替されると仮定します。

既存市場から移行する売上高は、500億円×20%=100億円です。

既存市場は400億円になります。

ただし、これは販売価格や市場全体の需要が変わらないと仮定した単純計算です。

実際には、新しい技術によって価格や検査件数が変化する可能性があります。

そのため、代替率だけで市場規模を予測することはできません。

代替技術の普及速度をどう考えるか

新しい医療技術が開発されても、すぐに医療現場へ普及するとは限りません。

医療技術の普及には、いくつかの段階があります。たとえば、研究開発、臨床評価、必要な規制上の承認・認証など、保険償還や費用負担の検討、医療機関での導入、医療従事者への教育、実際の診療での使用拡大といった段階です。これらの段階を経て、普及が進む場合があります。

ただし、具体的な手続きや順序は製品や国によって異なります。

ここで重要なのは、技術が開発された時点と、企業業績に影響を与える時点は必ずしも同じではないということです。

例えば、画期的な医療技術が開発されても、臨床評価や制度上の対応に時間がかかる場合があります。

また、医療機関が新しい設備を導入するためには、予算や人員の確保が必要になる場合があります。

したがって、代替技術の脅威を分析するときには、普及速度を考える必要があります。

ケーススタディ3 代替技術の普及速度によって企業価値はどう変わるか

架空の医療機器メーカー、Medical Technology C社を考えます。

C社の主力製品の年間売上高は300億円です。

新しい代替技術が登場しました。

今後5年間の影響について、3つのシナリオを考えます。

シナリオA:普及が遅い場合

5年後の既存製品売上高が10%減少すると仮定します。

300億円×90%=270億円。

シナリオB:標準的に普及する場合

5年後の既存製品売上高が30%減少すると仮定します。

300億円×70%=210億円。

シナリオC:急速に普及する場合

5年後の既存製品売上高が60%減少すると仮定します。

300億円×40%=120億円。

比較してみましょう。

シナリオAでは5年後の売上高が270億円で、減少率は10%です。シナリオBでは210億円で、減少率は30%です。シナリオCでは120億円で、減少率は60%です。

同じ代替技術でも、普及速度によって企業業績への影響は大きく異なります。

ただし、これだけで企業価値の変化を計算することはできません。

企業価値を評価するためには、利益率、投資額、キャッシュフロー、割引率なども必要です。

重要なのは、将来を一つの予測だけで判断しないことです。

JMEIでは、代替技術の分析において、複数のシナリオを設定することを重視します。

代替技術とTAM

ここで、これまで学んだTAMとの関係を考えましょう。

TAMとは、Total Addressable Marketの略で、一定の前提条件のもとで、製品やサービスが対象とする市場全体の規模を示す考え方です。

代替技術が登場すると、既存企業のTAMが変化する場合があります。

例えば、ある企業が従来型の検査装置市場を対象としていたとします。

新しい検査方法が普及すれば、従来型装置の市場規模が縮小する可能性があります。

一方、企業が新しい検査技術も開発していれば、対象市場が拡大する可能性があります。

つまり、TAMは固定された数字ではありません。技術革新。医療制度。患者数。診療方法。製品価格。こうした要因によって変化します。

企業分析では、現在のTAMだけでなく、将来のTAMがどのように変化するかを考える必要があります。

既存企業は代替技術にどう対応するのか

代替技術が登場した場合、既存企業にはいくつかの対応方法があります。

第一に、既存製品の性能を改善する方法です。

新しい技術に対抗するため、性能や使いやすさを向上させます。

第二に、新しい技術を自社で開発する方法です。

研究開発投資によって、新しい市場へ進出します。

第三に、新しい技術を持つ企業と提携する方法です。

共同開発や技術導入によって、必要な技術を獲得します。

第四に、新しい技術を持つ企業を買収する方法です。

M&Aによって、技術や人材を獲得する場合があります。

第五に、既存製品の市場縮小を受け入れ、別の成長分野へ経営資源を移す方法です。

どの方法が適切かは、企業の技術力、資金力、競争環境によって異なります。

自社製品を代替するという経営判断

ここで、重要な経営戦略を考えます。

それは、自社の新製品が既存製品の売上高を奪う場合です。

この現象は、カニバリゼーション(Cannibalization)と呼ばれます。

例えば、ある医療機器メーカーが、従来型の診断装置を販売しているとします。

新しい技術を開発すれば、既存製品の売上高が減少する可能性があります。

そのため、企業は新製品の開発に消極的になるかもしれません。

しかし、競合企業が新しい技術を開発すれば、既存市場を奪われる可能性があります。

この場合、自社の既存製品を代替する新製品を開発することが、長期的な競争力を維持するために重要になる場合があります。

ただし、すべてのカニバリゼーションが望ましいわけではありません。

新製品の利益率が低い場合や、研究開発費が大きすぎる場合には、企業価値が低下する可能性もあります。

したがって、既存製品の利益減少と、新製品による将来利益を比較する必要があります。

ケーススタディ4 自社の新技術で既存製品を代替すべきか

架空の医療機器メーカー、Medical Innovation D社を考えます。

D社は、従来型の診断装置を販売しています。現在の年間売上高は200億円です。営業利益率は20%です。

営業利益は、200億円×20%=40億円です。

D社は、新しい診断技術を開発しました。

新製品の発売によって、3年後には従来製品の売上高が100億円へ減少すると予測しています。

一方、新製品の売上高は150億円になる見込みです。

従来製品の営業利益率が20%、新製品の営業利益率が15%と仮定します。

従来製品の営業利益は、100億円×20%=20億円。

新製品の営業利益は、150億円×15%=22.5億円。

合計営業利益は、20億円+22.5億円=42.5億円です。

新製品発売前の営業利益は40億円でした。

したがって、この単純化したケースでは、営業利益が2.5億円増加します。

ただし、研究開発投資や追加設備投資、発売に伴う一時費用などは別途考慮する必要があります。

また、新製品を発売しなかった場合に、競合企業がどれくらい市場を奪うのかも重要です。

このように、カニバリゼーションは単純な売上高の減少だけで判断できません。

代替技術と研究開発投資

医療企業では、代替技術への対応に研究開発投資が必要になる場合があります。

しかし、研究開発には不確実性があります。

新しい技術を開発できるとは限りません。

開発できても、臨床的な有用性が十分に示されない場合があります。

また、製品化できても、医療現場へ普及しない可能性があります。

したがって、研究開発投資の評価では、成功した場合の市場規模だけでなく、失敗する可能性も考える必要があります。

ここで重要になるのが、研究開発ポートフォリオです。

研究開発ポートフォリオとは、企業が複数の研究開発テーマへ、どのように経営資源を配分しているかという考え方です。

例えば、ある医療企業が研究開発費をすべて既存技術の改良に投入している場合、代替技術への対応が遅れる可能性があります。

一方、新しい技術への投資ばかりを行えば、既存事業の競争力が低下する可能性もあります。

重要なのは、既存事業の改善と将来技術への投資のバランスです。

代替技術と資本配分

ここで、Capital Allocationとの関係を考えましょう。

Capital Allocationとは、企業が保有する資金を、どの事業や投資へ配分するかという経営判断です。

代替技術が登場した場合、企業は重要な選択を迫られます。

既存製品の改良に投資するのか。新しい技術を開発するのか。他社と提携するのか。新しい技術を持つ企業を買収するのか。あるいは、既存市場から撤退するのか。

これらの選択によって、将来の企業価値が変わる可能性があります。

例えば、既存市場が縮小しているにもかかわらず、その市場へ大規模な設備投資を続ければ、投資回収が難しくなる可能性があります。

一方、代替技術の将来性を過大評価し、多額の研究開発費を投入すれば、資本効率が低下する場合があります。

したがって、代替技術への対応では、技術の将来性だけでなく、投資額と期待されるキャッシュフローを比較する必要があります。

代替技術とROIC

代替技術は、企業のROICにも影響します。

ROICは、投下資本に対してどれくらいの税引後営業利益を生み出しているかを示す指標です。

例えば、ある医療機器メーカーが従来型の製造設備へ大規模な投資を行っていたとします。

しかし、代替技術の普及によって販売数量が減少しました。

この場合、設備の稼働率が低下する可能性があります。

利益が減少する一方、投下資本が十分に減らなければ、ROICは低下する可能性があります。

また、設備の将来収益性が低下すれば、減損損失が発生する場合もあります。

ただし、減損損失の計上とROICの変化は、会計処理やROICの定義によって異なるため、分けて考える必要があります。

企業分析では、代替技術による売上高の変化だけでなく、既存設備の価値や資本効率への影響も確認することが重要です。

医療制度は代替技術の普及を左右する

医療産業では、技術的に優れた製品が必ずしも急速に普及するわけではありません。

その理由の一つが、医療制度です。

例えば、新しい検査技術が開発されたとします。

臨床的な有用性が確認されても、医療機関が導入するためには費用負担を考える必要があります。

保険償還の対象となるか、医療機関の収益にどのような影響を与えるか、設備投資を回収できるか。こうした問題が普及速度に影響します。

また、医療技術の導入には、医療従事者の教育や診療体制の整備が必要になる場合があります。

したがって、医療企業の代替技術分析では、技術、臨床、制度、経済性という4つの視点が重要です。

代替技術の脅威を決算資料からどう読み取るか

実際の企業分析では、決算資料や有価証券報告書などを確認します。

代替技術の脅威を調べる際には、次の情報が参考になります。

1つ目は、「製品別売上高」です。特定製品への依存度を確認します。

2つ目は、「事業別売上高」です。代替技術の影響を受ける事業が、企業全体のどれくらいを占めるかを確認します。

3つ目は、「研究開発費」です。既存技術の改良と新しい技術への投資状況を確認します。ただし、研究開発費の金額だけでは研究開発の質を判断できません。

4つ目は、「新製品の開発状況」です。企業が新しい技術へどのように対応しているかを確認します。

5つ目は、「設備投資」です。縮小する可能性のある市場へ、過大な設備投資を行っていないかを確認します。

6つ目は、「事業等のリスク」です。技術革新や競争環境の変化について、企業がどのようなリスクを認識しているかを確認します。

7つ目は、「経営戦略」です。既存事業の強化、新規事業への進出、M&Aなどの方針を確認します。

こうした情報を組み合わせることで、代替技術に対する企業の対応力を評価できます。

JMEI式「代替品の脅威分析の15の質問」

医療企業を分析するときには、次の15項目を確認してみましょう。

1つ目は、「この企業の主力製品は何か」という問いです。

2つ目は、「主力製品は、どのような医療上の目的を達成しているか」という問いです。

3つ目は、「同じ目的を達成する別の技術は存在するか」という問いです。

4つ目は、「代替技術は既存技術より優れた臨床的価値を提供できるか」という問いです。

5つ目は、「代替技術の安全性や有効性は適切に評価されているか」という問いです。

6つ目は、「代替技術の導入費用や運用費用はどの程度か」という問いです。

7つ目は、「医療機関が代替技術へ切り替える費用は高いか」という問いです。

8つ目は、「代替技術の普及に必要な制度上の条件は整っているか」という問いです。

9つ目は、「代替技術は、どの患者群や用途を対象としているか」という問いです。

10個目は、「代替技術によって既存市場はどの程度縮小する可能性があるか」という問いです。

11個目は、「代替技術の普及速度はどの程度か」という問いです。

12個目は、「企業は代替技術を自社で開発しているか」という問いです。

13個目は、「代替技術を持つ企業との提携やM&Aを検討しているか」という問いです。

14個目は、「既存製品の売上減少が利益率やROICへどの程度影響するか」という問いです。

15個目は、「5年後、10年後も現在の主力製品は必要とされる可能性が高いか」という問いです。

この15項目を確認することで、企業の現在の競争力だけでなく、将来の競争環境を分析できます。

練習問題

問題1

代替品の脅威とは何でしょうか。

【答え】既存製品やサービスとは異なる方法で、顧客の同じ目的や必要性を満たす製品・サービスが登場し、既存市場の需要や企業の収益性に影響を与える可能性です。

問題2

競合製品と代替品の違いを説明してください。

【答え】競合製品は、主に同じ市場内で顧客を奪い合う製品です。代替品は、異なる方法で同じ目的を達成することによって、既存製品の需要を変化させる可能性がある製品やサービスです。

問題3

ある医療機器市場の年間売上高は800億円です。A社の市場シェアは50%です。A社の売上高はいくらでしょうか。

【答え】400億円です。800億円×50%=400億円。

問題4

問題3の市場が、代替技術の普及によって600億円へ縮小しました。

A社が50%の市場シェアを維持した場合、売上高はいくらになりますか。

【答え】300億円です。600億円×50%=300億円。

問題5

ある医療機器メーカーの売上高は500億円、営業利益は100億円です。

代替技術の普及によって売上高が50億円減少しました。

営業利益への影響は、この情報だけで計算できますか。

【答え】できません。変動費や固定費などの費用構造が分からないためです。売上高の減少が利益へどの程度影響するかは、企業の費用構造によって異なります。

問題6

カニバリゼーションとは何でしょうか。

【答え】企業の新製品が、自社の既存製品の需要や売上高を奪う現象です。

問題7

代替技術が登場した場合、既存企業が取ることのできる対応を3つ挙げてください。

【答え】例えば、次の3つです。既存製品の性能を改善する。新しい技術を自社で開発する。新しい技術を持つ企業と提携する。

問題8

代替技術が既存市場を縮小させるとは限らない理由を説明してください。

【答え】代替技術が新しい患者層や用途へ普及することで、新しい需要を生み出す可能性があるためです。また、既存技術と新しい技術が共存したり、補完関係になったりする場合もあります。

問題9

ある製薬企業の年間売上高は1,200億円です。主力医薬品の売上高は480億円です。主力医薬品への売上依存度はいくらでしょうか。

【答え】40%です。480億円÷1,200億円×100=40%。

問題10

代替技術の脅威を分析するとき、最も重要なことは何でしょうか。

【答え】新しい技術が、既存製品の需要をどの程度、どのような速度で変化させる可能性があるかを考え、その影響を企業の売上高、利益率、資本効率、研究開発戦略と結びつけて評価することです。

JMEIの視点

JMEIでは、代替品の脅威を医療企業の長期的な競争優位を理解するための重要な要素として位置づけています。

しかし、代替技術の分析には注意が必要です。

新しい技術が登場したという理由だけで、既存企業の競争力が失われると判断してはいけません。

医療産業では、技術の優位性だけでなく、臨床的な有用性や安全性が重要です。

さらに、医療制度や医療機関の導入費用なども普及に影響します。

したがって、JMEIでは、代替品の脅威を次の4つの視点から分析します。

第一の視点:技術的な代替可能性

新しい技術は、既存技術と同じ目的を達成できるのか。

性能や使いやすさに違いはあるのか。

第二の視点:臨床的な代替可能性

新しい技術は、どの患者群や用途で使用できるのか。

有効性や安全性は適切に評価されているのか。

第三の視点:経済的な代替可能性

新しい技術の導入費用や運用費用はどの程度か。

医療機関にとって経済的に合理的な選択となるのか。

第四の視点:企業の対応力

既存企業は、新しい技術へ対応できるのか。

研究開発や提携、M&Aなどによって、競争力を維持できるのか。

この4つを組み合わせることで、代替技術が企業の将来に与える影響をより深く理解できます。

さらに、JMEIでは、代替技術の分析において、現在の市場シェアだけでなく、将来の市場構造を重視します。

現在の市場シェアが高い企業でも、市場そのものが縮小すれば売上高は減少する可能性があります。

反対に、現在の市場シェアが低い企業でも、新しい技術によって市場構造が変化すれば、成長する可能性があります。

つまり、医療企業の競争力を評価するときには、現在の市場でどれくらい強いかという問いと、将来の市場でも強い企業であり続けられるかという問いを分けて考える必要があります。

これが、JMEIの代替技術分析の基本的な考え方です。

JMEI Medical Insight

医療企業の最大の競争相手は、現在の競合企業ではなく、将来の医療のあり方そのものかもしれない

医療企業の競争力を考えるとき、私たちは現在の競合企業に注目しがちです。

どの企業が市場シェアを拡大しているのか。どの企業の製品性能が高いのか。どの企業が価格競争で優位に立っているのか。これらは重要な分析項目です。

しかし、長期的な企業価値を考えるときには、もう一つ重要な問いがあります。

「その製品やサービスは、将来も同じ形で必要とされるのか」という問いです。

例えば、ある医療機器メーカーが、特定の診断装置市場で圧倒的なシェアを持っているとします。

高い技術力、強い販売網、長期的な顧客関係、安定した利益率などです。これらは、現在の競争優位を示す重要な要素です。

しかし、新しい診断技術によって、従来とは異なる方法で同じ臨床目的を達成できるようになった場合、競争環境は大きく変化する可能性があります。

そのとき、企業が直面する問題は、競合企業との市場シェア争いだけではありません。

市場そのものが変化するという問題です。

ここで重要になるのが、企業の自己変革能力です。

既存企業は、現在の製品によって利益を生み出しています。

そのため、既存製品の売上高を減少させる可能性がある新技術への投資には、慎重になる場合があります。

しかし、新しい技術への対応が遅れれば、競合企業に市場を奪われる可能性があります。

つまり、既存企業は難しい経営判断を迫られます。現在の利益を守るのか。将来の市場へ投資するのか。この問題は、医療産業で特に重要です。

なぜなら、医療技術の開発には多額の研究開発費が必要になる場合があり、開発期間も長くなることがあるからです。

また、新しい技術が臨床的に有用であることを示すためには、適切な評価が必要です。

したがって、医療企業は、将来の技術変化を予測しながら、現在の事業を運営する必要があります。

ここでJMEIが重視するのは、単に新しい技術へ投資しているかどうかではありません。

企業が、既存事業から生み出した利益を、将来の競争力へどのように変換しているかということです。

例えば、ある医療機器メーカーが高い営業利益率を維持しているとします。

しかし、その利益の大部分を既存事業の維持に使用し、新しい技術への投資をほとんど行っていない場合、将来の競争力に問題が生じる可能性があります。

一方、別の企業が、現在の利益率はそれほど高くなくても、将来の医療技術へ継続的に投資している場合があります。

ただし、研究開発費が多いことだけで、後者の企業が優れているとは判断できません。

研究開発投資が実際に新しい製品やサービスへつながるかどうかが重要だからです。

したがって、企業分析では、研究開発費の金額だけでなく、研究開発の成果や事業化能力を確認する必要があります。

さらに、代替技術の登場は、既存企業にとって必ずしも脅威だけではありません。

新しい技術によって、企業が対象とする市場が拡大する場合もあります。

例えば、従来は大型設備が必要だった検査が、小型化によってより多くの医療機関で実施できるようになった場合です。

この場合、従来型装置の市場が縮小する一方、新しい市場が形成される可能性があります。

既存企業が新しい技術を持っていれば、その変化を成長機会へ変えることができるかもしれません。

つまり、代替技術は、企業にとって脅威であると同時に機会でもあります。

ここで、もう一つ重要な視点があります。

それは、医療の目的です。

医療企業の製品やサービスは、最終的には患者や医療現場のために存在しています。

例えば、ある診断技術が、より少ない身体的負担で必要な情報を得られるようになったとします。

その技術の有用性が適切に確認されれば、患者にとって価値のある進歩となる可能性があります。

しかし、その技術によって既存企業の売上高が減少する場合もあります。

企業の利益という視点では脅威です。

一方、医療の発展という視点では望ましい変化かもしれません。

このように、医療企業分析では、企業の収益性と医療上の価値を分けて考える必要があります。

JMEIでは、代替技術を評価するとき、次の3つの問いを重視します。

第一に、その技術は、患者や医療現場へどのような新しい価値を提供するのか。

第二に、その技術によって、既存企業の市場や収益構造はどのように変化するのか。

第三に、既存企業は、その変化を新しい成長機会へ変えることができるのか。

この3つの問いによって、単純な技術比較から、医療企業の長期的な競争力の分析へ進むことができます。

また、JMEIでは、代替技術の普及を一つの予測だけで判断しません。

普及が遅い場合、標準的に普及する場合、急速に普及する場合といった複数のシナリオを考え、それぞれの条件で企業の売上高や利益、キャッシュフローがどのように変化するかを分析します。

さらに、企業が新しい技術へ対応するために、どれくらいの研究開発費や設備投資を必要とするのかも確認します。

なぜなら、代替技術への対応が成功しても、投資額が大きすぎれば、企業価値が十分に増加しない可能性があるからです。

最終的には、技術の将来性と資本効率を組み合わせて評価する必要があります。

本当に強い医療企業とは、現在の市場で高いシェアを持つ企業だけではありません。医療技術の変化に対応しながら、将来も必要とされる価値を提供し続けられる企業です。

そして、既存製品の成功にとらわれず、必要であれば自社の製品や事業構造を変えることができる企業です。

医療企業の長期的な競争優位を理解するためには、現在の製品だけでなく、将来の医療のあり方を考える必要があります。

これが、JMEIの代替技術分析の基本的な視点です。

今回のポイント

第63講で最も覚えてほしいのは、「代替品の脅威は、既存企業の市場シェアだけでなく、市場そのものの将来を変える可能性がある」ということです。

代替品とは、既存製品やサービスとは異なる方法で、顧客の同じ目的や必要性を満たす製品・サービスです。

医療産業では、新しい診断技術、治療方法、医療AIなどが、既存技術に対する代替手段となる可能性があります。

ただし、新しい技術が必ずしも既存技術より優れているとは限りません。

たとえば、臨床的有効性、安全性、適応患者、導入費用、医療制度などです。

こうした条件によって、実際の代替可能性は異なります。

また、代替技術が登場しても、既存市場が必ず消滅するわけではありません。

既存技術と新技術が共存する場合もあります。

新しい技術によって市場全体が拡大する場合もあります。

企業分析では、代替技術の普及速度と市場規模への影響を考える必要があります。

さらに、既存企業が代替技術へどのように対応するかも重要です。

たとえば、研究開発、提携、M&A、既存製品の改良、新規事業への進出などです。

こうした戦略によって、将来の競争力が変化する可能性があります。

そして、代替技術への対応には投資が必要です。

したがって、技術の将来性だけでなく、研究開発費や設備投資、ROICなどを組み合わせて評価する必要があります。

最後に、次の3つの問いを覚えておきましょう。

「この医療企業の主力製品は、将来も必要とされるのか」

「新しい技術によって、既存市場はどのように変化するのか」

「この企業は、技術の変化を新しい成長機会へ変えることができるのか」

この3つの問いによって、現在の競争力だけでなく、将来の医療企業の姿を考えることができます。

次回予告

第64講 新規参入の脅威とは何か?――医療市場の参入障壁は企業の競争優位をどこまで守るのか

今回は、代替品の脅威について学びました。

新しい技術や治療方法が登場すると、既存企業の市場が変化する可能性があります。

しかし、医療企業の競争環境を変えるのは、代替技術だけではありません。

新しい企業が市場へ参入することによって、競争が激しくなる場合もあります。

例えば、ある医療機器市場で、3社が高い市場シェアを持っているとします。

長年にわたり、安定した利益率を維持してきました。ところが、新しい企業が市場へ参入しました。既存企業より低い価格で製品を販売しています。

さらに、新しい技術や販売方法によって、顧客を獲得し始めました。

この場合、既存企業の価格決定力や市場シェアが変化する可能性があります。

一方、医療産業には、新規参入を難しくする要因もあります。

たとえば、研究開発費、製造設備、品質管理体制、必要な規制上の承認・認証、医療機関との信頼関係、販売網、保守サービスなどです。

こうした要因は、新しい企業にとって参入障壁となる場合があります。

このような競争要因を、新規参入の脅威(Threat of New Entrants)

と呼びます。

次回は、医療企業の競争優位を守る参入障壁について学びます。

特に、研究開発費や規制対応、ブランド、販売網、スイッチングコストなどが、新規参入企業にどのような影響を与えるのかを考えます。

また、医療AIや医療DXのように、新しい企業が参入する市場についても分析します。

さらに、参入障壁が高い市場であっても、新しい技術や事業モデルによって競争環境が変化する理由を、ケーススタディを通して学びます。

第64講では、「この医療企業の市場には、なぜ新しい競合企業が簡単に参入できないのか。そして、その参入障壁は将来も維持されるのか」という問いから、医療企業の競争優位と長期的な収益性を読み解いていきます。

JMEI|日本医療企業研究所 医療を変える企業と技術を読み解く。

本講座に関するご注意

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