JMEI 医療企業分析アカデミー 第1講 株価を見る前に、会社を見る
はじめに
企業分析と聞くと、「株を買うための勉強」と思う方が多いかもしれません。
しかし、JMEI医療企業分析アカデミーでは、企業分析をもっと広く考えます。
企業分析とは、
「その会社が、どのような価値を生み、どのように利益を生み、将来どこへ向かおうとしているのかを理解すること」
です。
株価は毎日変わります。しかし、
- 会社の事業内容
- 経営戦略
- 技術力
- 財務状態
- 医療現場での価値
- 競争力
といった企業の本質は、株価ほど短期間には変わりません。
だからこそ、この講座では最初に、「株価より先に会社を見る」という考え方を身につけます。
1.企業分析は何のために行うのか?
例えば、ある医療企業の株価が1週間で20%上昇したとします。
株価だけを見ると、「すごい会社なのではないか」と思うかもしれません。
しかし、株価が上昇した理由はさまざまです。
好決算。新薬の承認。新製品の発表。M&A。市場全体の上昇。一時的な期待。短期資金の流入。などです。
株価上昇だけでは、その会社が本当に優れた企業なのかは分かりません。
そこで、「そもそも何をしている会社なのか?」から調べます。これが企業分析の出発点です。
2.会社の「何」を見るのか?
企業を見るときには、まず次のようなことを調べます。
- 何を販売しているのか。
- 誰が顧客なのか。
- どのように利益を生み出しているのか。
- 競合企業はどこか。
- 市場は成長しているのか。
- 会社独自の強みはあるか。
- 財務状態は健全か。
- 将来の成長戦略は何か。
医療企業なら、さらに、
- その製品やサービスは医療現場で本当に必要とされるのか。
- 患者さんにどのような価値を提供するのか。
- 医療制度の影響を受けるのか。
といった視点も重要になります。
3.「良い会社」と「良い株」は同じではない
ここは非常に重要です。
良い会社だからといって、いつでも良い投資対象とは限りません。
例えば、とても成長している会社でも、株価が将来への期待を大きく織り込んでいる場合があります。
逆に、成熟企業で成長率が低くても、株価評価が低く、安定したキャッシュ・フローを生み出している企業もあります。
つまり、企業分析では、会社そのものの価値と市場がその会社をどう評価しているかを分けて考える必要があります。
この講座では、まず会社を理解し、その後にPERやPBRなどを使って市場評価との関係を学んでいきます。
4.企業分析は「答え探し」ではない
初心者のころは、「この会社は良い会社ですか?」「買った方がいいですか?」という答えを求めたくなります。
しかし、企業分析で本当に身につけたいのは、自分で問いを作る力です。
例えば、
売上が伸びている。→ なぜ伸びているのか?
利益率が高い。→ なぜ高いのか?
海外売上が増えている。→ どの地域で伸びているのか?
新薬が承認された。→ 市場規模はいくらか?
このように、一つの数字やニュースから次の疑問を作っていきます。
企業分析とは、「数字を覚えること」ではなく、「数字に質問すること」なのです。
5.医療企業では何が違うのか?
医療企業には、一般企業とは異なる特徴があります。
例えば製薬企業なら、研究開発。臨床試験。特許。承認。薬価。
医療機器企業なら、薬事承認。臨床評価。病院への導入。消耗品。保守。
医療DX企業なら、データ。システム連携。個人情報。診療報酬。
などが企業成長を左右します。
そのため医療企業を分析するときには、単なる財務分析だけでは不十分です。
JMEIでは、
財務 × 医療現場 × 技術 × 制度
を組み合わせて企業を見ていきます。
6.JMEI流の企業分析
JMEIでは、企業を見るときに大きく次の順番で考えます。
医療トレンド → 世界の医療企業 → 日本の医療企業 → 企業の事業内容 → 財務 → 競争力 → 医療現場での価値 → 将来性
という流れです。
つまり、最初から株価を見るのではありません。「医療はどこへ向かっているのか」から考えます。
7.ケーススタディ――A社とB社
次の2社を考えてみましょう。
- A社:売上成長率 15%/営業利益成長率 20%/新製品あり/海外売上増加
- B社:売上成長率 2%/営業利益 横ばい/大型新製品なし/国内売上中心
この情報だけなら、A社の方が成長企業に見えます。
しかし企業分析では、さらに調べます。
- A社の成長は一時的ではないか。
- 新製品に競合はいるか。
- 利益成長は為替の影響ではないか。
- B社は成熟企業だが安定したキャッシュを生み出していないか。
つまり、数字を見てすぐ結論を出さないことが重要です。
8.実際の企業を分析するときの入口
今後、実在する医療企業を分析するときには、まず次の資料を確認します。
- 企業ホームページ
- IR資料
- 決算短信
- 決算説明資料
- 統合報告書
- 適時開示
そして必要に応じて、厚生労働省。PMDA。論文。学会。医療ニュース。などを確認します。
企業分析では、ニュースだけで判断せず、必ず一次情報へ戻ることを大切にします。
9.企業のビジネスモデルを理解する
例えば検査機器会社なら、「検査装置を販売して終わり」なのか、「装置を導入した後に専用試薬が継続的に売れる」のかで、ビジネスの強さが変わります。
後者なら、
装置の設置台数が増える → 試薬売上が増える → 継続収入が積み上がる
という構造を作れるかもしれません。
こうした、「会社がどのように利益を生み続けるのか」という仕組みをビジネスモデルといいます。企業分析では非常に重要なポイントです。
10.医療現場からの視点
医療企業を分析するうえで、JMEIが特に大切にしたいのが、「その製品は本当に現場で使われるのか」という視点です。
例えば、非常に高度なAIを搭載した医療機器があったとします。しかし、
- 操作が難しい。
- 導入費が高い。
- 既存システムと連携できない。
- 医療従事者の仕事が増える。
としたら、技術的に優れていても普及しないかもしれません。
一方、一見地味な製品でも、
- 使いやすい。
- 安全性が高い。
- 患者さんの負担が減る。
- 医療従事者の時間を短縮できる。
のであれば、長期間使われる可能性があります。
JMEIでは、技術として優れているかだけではなく、医療として価値があるかまで考えます。
11.JMEI式「企業を見る7つの質問」
初めて企業を調べるときには、まず次の7つを考えてみましょう。
- この会社は何を売っているのか?
- 誰がお金を払っているのか?
- どのように利益を生み出しているのか?
- 市場は成長しているのか?
- 競合企業はどこか?
- 他社にはない強みは何か?
- その製品・サービスは医療にどのような価値を生み出しているのか?
この7問に答えられるだけでも、その会社についてかなり理解できるようになります。
12.練習問題
問題1 企業分析をするとき、最初に株価チャートを見ることが最も重要でしょうか。
【答え】必ずしもそうではありません。まず会社の事業内容、ビジネスモデル、財務、成長性などを理解することが重要です。
問題2 「良い会社」と「良い投資対象」は同じでしょうか。
【答え】同じとは限りません。良い会社でも、株価が将来の成長を過度に織り込んでいれば、投資評価は別に考える必要があります。
問題3 医療企業では財務分析だけで十分でしょうか。
【答え】十分ではありません。研究開発、医療制度、規制、医療現場での有用性なども企業価値に大きく影響します。
問題4 企業のニュースを見たとき、次に何をする習慣をつけるべきでしょうか。
【答え】企業自身が発表したIR資料、適時開示などの一次情報を確認します。
問題5 ある医療機器が競合製品より高性能です。それだけで企業として成功すると判断できるでしょうか。
【答え】できません。価格、販売力、保守、規制、使いやすさ、医療現場への定着なども確認する必要があります。
13.今回のポイント
企業分析とは、株価が上がる会社を当てる作業ではありません。
その会社が、何をしているのか。どうやって利益を生んでいるのか。何が強いのか。どんなリスクがあるのか。そして、将来どのような会社になろうとしているのか。を理解する作業です。
そのために、売上。利益。財務。研究開発。市場。競争力。医療現場。などを一つずつ学んでいきます。
この第1講で、まず一つだけ覚えてください。
「株価を見る前に、会社を見る。」
これがJMEI医療企業分析アカデミーの出発点です。
JMEI Medical Insight
医療企業を分析するということは、単に「儲かる会社」を探すことではありません。
企業の先には、患者さん。医療従事者。家族。医療制度。社会。があります。
だからJMEIでは、企業価値と医療価値の両方を見ることを大切にします。
業績が伸びていても、医療への価値が乏しければ持続しないかもしれません。反対に、現在の売上は小さくても、大きな医療課題を解決する技術を持っている企業には将来性があるかもしれません。
数字を見る。そして、その数字の向こうにある医療を見る。
それがJMEIの企業分析です。
次回予告
第2講 売上・利益・利益率とは何か?――「売れている会社」と「儲かっている会社」は違う
売上1,000億円の会社。売上500億円の会社。大きい会社はどちらでしょうか。
では、利益をたくさん残している会社はどちらでしょうか。
第2講では、売上高。営業利益。当期純利益。利益率。について学びます。
そして、「売上が大きい会社=優れた会社」とは限らない理由を、医療企業のケーススタディと練習問題を使って分かりやすく解説します。
本講座に関するご注意
本講座は、企業分析の考え方を学ぶための教育コンテンツです。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業には該当せず、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。講座内で企業を題材として扱う場合も、あくまで分析手法を説明するための例示です。
講座に関するご注意
本講座は、企業分析の考え方を学ぶための教育コンテンツです。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業には該当せず、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記事中で企業名に言及する場合も、分析手法を説明するための例示であり、投資を勧めるものではありません。
受講による学習成果、および受講者の投資成果を保証するものではありません。投資その他の意思決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。