JMEI 医療企業分析アカデミー 第73講 医療企業のMake or Buy戦略と利益構造を分析する
はじめに
こんにちは。日本医療企業研究所(JMEI)です。
前回の第72講では、バリューチェーン分析について学びました。
バリューチェーン分析とは、企業の事業活動を研究開発、調達、製造、販売、保守サービスなどに分解し、それぞれの活動がどのような価値を生み出しているかを考える方法です。
また、企業の競争優位は、製品の性能だけでなく、事業活動全体の仕組みから形成されることを学びました。
ここで、新しい疑問が生まれます。「企業は、すべての活動を自社で行う必要があるのでしょうか」という問いです。
例えば、ある医療機器メーカーが、新しい検査装置を開発したとします。
その企業には、製品を設計する技術者がいます。しかし、製造工場は持っていません。
この場合、自社で工場を建設するべきでしょうか。それとも、外部の製造企業へ生産を委託するべきでしょうか。
また、ある製薬企業が、新しい医薬品候補の開発を進めているとします。
臨床試験を自社で実施するための体制を整えるべきでしょうか。それとも、臨床開発業務を外部企業へ委託するべきでしょうか。
さらに、医療DX企業ではどうでしょうか。
ソフトウェアの開発から運用保守までをすべて自社で行うべきでしょうか。それとも、一部の開発業務を外部企業へ委託した方が合理的なのでしょうか。
こうした経営判断を考えるための重要な概念が、今回学ぶMake or Buy(内製か外注か)です。
Make or Buyは、単なる費用削減の問題ではありません。
企業の競争優位、品質管理、供給の安定性、資本効率、そして長期的な経営戦略に関係する重要な意思決定です。
今回は、Make or Buyの基本から、損益分岐点の計算、医療企業の実例を想定したケーススタディ、ROICとの関係まで学びます。
今回の目標は、「この医療企業は、どの活動を自社で行い、どの活動を外部へ委ねるべきなのか。そして、その選択は利益率やROICへどのような影響を与えるのか」という問いに答えられるようになることです。
Make or Buyとは何か
Make or Buyとは、企業が必要とする製品、部品、サービス、業務などを、自社で生産・実施するか、外部企業から購入・調達するかを判断することです。
日本語では、一般的に「内製か外注か」と表現されます。
例えば、医療機器メーカーが、製品に使用する電子部品を必要としているとします。その部品を自社で製造する方法があります。一方、専門の部品メーカーから購入する方法もあります。自社で製造することを内製と呼び、外部企業から購入することを外部調達と呼びます。
また、製造工程そのものを外部企業へ委託する場合には、製造委託という形になります。
Make or Buyでは、これらの選択肢を比較します。
ただし、実際の経営では、完全な内製と完全な外注だけが選択肢ではありません。
重要な工程だけを自社で行い、それ以外を外部へ委託する方法もあります。
また、通常は外部へ委託しながら、一部の生産能力を自社に残す方法も考えられます。
つまり、Make or Buyとは、企業が必要とする活動を、どのような組織体制で実行するかという経営戦略なのです。
なぜ企業は外注するのか
企業が外注を選択する理由は、単に費用を削減するためだけではありません。
代表的な理由を整理してみましょう。
設備投資を抑えられる
自社で製造する場合、工場や製造設備が必要になることがあります。
例えば、医療機器メーカーが新しい製造ラインを設置するために、数億円の設備投資を必要とする場合があります。
一方、既存の製造設備を持つ外部企業へ委託すれば、自社で同じ規模の設備投資を行わずに済む可能性があります。
これは、特に資金力が限られる企業にとって重要です。
専門技術を利用できる
外部企業が、自社にはない専門技術を持っている場合があります。
例えば、医薬品の製造では、高度な製造技術や品質管理体制が必要になる場合があります。
自社で一から体制を構築するよりも、専門企業の能力を活用する方が合理的な場合があります。
事業開始までの時間を短縮できる
自社で工場を建設し、人材を採用し、製造体制を整えるには時間が必要です。
一方、外部企業が必要な設備や技術を持っていれば、事業開始までの期間を短縮できる可能性があります。
医療企業では、製品開発や市場投入の時期が事業価値に影響する場合があるため、時間も重要な経営資源です。
需要変動に対応しやすい
製品の需要が安定していない場合、自社で大規模な設備を保有すると、需要が減少したときに設備が余る可能性があります。
外注によって生産量を調整できれば、需要変動への対応力が高まる場合があります。
ただし、外注契約に最低発注数量や長期購入義務が設定されている場合には、必ずしも柔軟に調整できるとは限りません。
経営資源を集中できる
企業には、資金や人材の制約があります。
そのため、すべての活動を自社で行うことが合理的とは限りません。
例えば、独自の創薬技術に強みを持つ企業が、研究開発へ経営資源を集中し、製造を外部へ委託する場合があります。
このように、外注は企業の強みに経営資源を集中するための手段にもなります。
なぜ企業は内製するのか
一方、内製にも重要な利点があります。
品質を直接管理しやすい
医療企業では、品質管理が極めて重要です。
例えば、医療機器の重要部品を自社で製造していれば、製造工程や品質管理の状況を直接把握しやすくなります。
もちろん、外注であっても適切な品質管理は可能です。
しかし、外部企業との情報共有や監査、契約管理などが必要になります。
重要技術を社内に蓄積できる
製造工程そのものが、企業の競争優位の源泉となる場合があります。
例えば、独自の加工技術によって高精度の医療機器を製造している企業では、その製造技術が重要な経営資源になります。
こうした技術を外部へ委ねると、自社に技術やノウハウが蓄積されにくくなる可能性があります。
製品改善を迅速に進められる
研究開発部門と製造部門が密接に連携している場合、製品設計の変更や製造工程の改善を迅速に進められることがあります。
例えば、製造工程で発見された問題を研究開発部門へ伝え、設計を改善する仕組みがあれば、品質や生産効率の向上につながる可能性があります。
供給体制を自社で管理できる
重要部品を外部企業だけに依存している場合、その企業で生産停止が発生すると、自社の製品供給にも影響する可能性があります。
内製によって供給体制を自社で管理できれば、外部企業への依存を減らせる場合があります。
ただし、自社工場の故障や災害によって生産が停止する可能性もあるため、内製が必ずしも供給リスクを低下させるとは限りません。
一定の生産量を超えると費用面で有利になる場合がある
外注では、製品1個当たりの委託費用が発生することが一般的です。
一方、内製では、設備投資や人件費などの固定費が必要になります。
しかし、生産量が増加すれば、製品1個当たりの固定費負担が小さくなります。
その結果、一定の生産量を超えると、内製の方が費用面で有利になる場合があります。
この関係を理解するために、次に固定費と変動費を学びましょう。
Make or Buyを理解するための固定費と変動費
Make or Buyの判断では、固定費と変動費の違いが重要です。
固定費とは、生産量が変化しても、一定の範囲では大きく変わらない費用です。
例えば、工場の設備に関する減価償却費や、固定的な人件費などがあります。
一方、変動費とは、生産量に応じて増減する費用です。
例えば、製品に使用する材料費などがあります。
ここで、架空の医療機器メーカーを考えてみましょう。
この企業は、検査機器に使用する部品を必要としています。
自社で製造する場合、製造設備や人員が必要です。
一方、外部企業へ委託する場合、部品1個当たりの委託費用を支払います。
次のような条件を仮定します。
内製は、年間固定費が4,000万円、1個当たり変動費が5万円で、設備投資が必要となり、生産量が変動しても固定費負担が残ります。外注は、年間固定費が0円、1個当たり変動費が9万円で、設備投資は原則不要であり、生産量の変動への対応は契約条件によります。
ここでは、外注の固定費を0円としています。
実際には、外注先の選定や監査、品質管理、契約管理などの費用が必要になる場合がありますが、まずは計算を理解するために単純化します。
この条件では、内製は固定費が高い一方、1個当たりの変動費は低くなっています。
外注は固定費が小さい一方、1個当たりの費用は高くなっています。
それでは、どちらが有利なのでしょうか。
答えは、生産量によって変わります。
Make or Buyの損益分岐点を計算する
先ほどの条件を使って、内製と外注の費用を比較してみましょう。
内製の年間費用は、内製費用=固定費+1個当たり変動費×生産量です。
外注の年間費用は、外注費用=1個当たり委託費用×発注数量です。
ここで、年間生産量を800個と仮定します。
内製の場合、4,000万円+5万円×800個=8,000万円となります。
外注の場合、9万円×800個=7,200万円となります。
つまり、年間800個では、外注の方が800万円安くなります。
次に、年間生産量を1,200個と仮定します。
内製の場合、4,000万円+5万円×1,200個=1億円です。
外注の場合、9万円×1,200個=1億800万円となります。
この場合、内製の方が800万円安くなります。
比較してみましょう。
年間800個では、内製費用が8,000万円、外注費用が7,200万円で、外注が費用面で有利です。1,000個では、どちらも9,000万円で同額です。1,200個では、内製が1億円、外注が1億800万円で、内製が有利です。1,600個では、内製が1億2,000万円、外注が1億4,400万円で、内製が有利です。
この表から、重要なことが分かります。生産量が少ない場合には、外注が有利です。一方、生産量が増加すると、内製が有利になります。
そして、年間1,000個では、両者の費用が同じになります。
この1,000個が、今回の条件における内製と外注の損益分岐点です。
損益分岐点の計算式
内製と外注の損益分岐点は、次の式で計算できます。
損益分岐数量=内製の固定費÷(外注単価-内製の変動費単価)
今回の条件では、固定費は4,000万円、外注単価は9万円、内製の変動費単価は5万円です。
したがって、4,000万円÷(9万円-5万円)=1,000個となります。
この計算式は、医療企業の経営分析でも役立ちます。
例えば、医療機器メーカーが新しい製造ラインを導入する場合、年間何個以上を製造すれば内製の方が有利になるのかを計算できます。
また、医療DX企業がソフトウェア開発を内製化する場合にも、開発体制の固定費と外部委託費用を比較する考え方を応用できます。
ただし、実際には、単純な数量だけでは判断できません。
製品品質、設備投資、供給リスク、技術蓄積なども考慮する必要があります。
また、外注単価が内製の変動費単価以下であれば、この単純なモデルでは生産量を増やしても内製の費用優位は生まれません。
ケーススタディ1 医療機器メーカーの内製化判断
ここからは、より実践的なケーススタディを考えてみましょう。
架空の医療機器メーカー「メディカルデバイスA社」を設定します。
A社は、医療機関向けの検査装置を製造・販売しています。
現在、検査装置に使用する重要部品を外部企業から購入しています。
しかし、販売台数が増加してきたため、部品の内製化を検討しています。
A社の経営陣は、「今後も販売台数が増えるのであれば、自社で製造した方が安くなるのではないか」と考えています。
一方、財務部門は慎重で、「内製化には多額の設備投資が必要になる。費用が安くなるだけで判断してよいのだろうか」と考えています。
このような場面で、Make or Buy分析が必要になります。
A社の条件は、先ほどの計算と同じとします。
内製の年間固定費は4,000万円、内製の変動費は1個当たり5万円、外注単価は1個当たり9万円です。
さらに、内製化には1億5,000万円の初期設備投資が必要になるとします。
ここで、固定費4,000万円の内訳を、設備の年間減価償却費が3,000万円、固定的な人件費や維持費などが1,000万円と仮定します。設備の耐用期間は5年とし、残存価額は0円とします。
この設定では、初期設備投資1億5,000万円を5年間で減価償却します。
したがって、設備投資額を初年度の費用として一度に計上するのではなく、減価償却費として各年度の損益へ反映させます。
この違いは、後ほどROICを考える際にも重要になります。
A社の生産量が1,200個の場合
A社の年間生産量が1,200個とします。
内製費用は、4,000万円+5万円×1,200個=1億円です。
外注費用は、9万円×1,200個=1億800万円となります。
したがって、内製化によって年間800万円の費用削減が期待できます。
この結果だけを見ると、内製化が有利に思えるかもしれません。
しかし、ここで考えたいことがあります。
A社は、年間800万円の費用を削減するために、1億5,000万円の設備投資を行う必要があります。
この投資は、本当に合理的なのでしょうか。
ここで重要になるのが、資本効率です。
Make or BuyとROICの関係
ROICは、企業が投下資本に対して、どれくらいの税引後営業利益を生み出しているかを示す指標です。
計算式は、ROIC=税引後営業利益(NOPAT)÷投下資本×100です。
今回のケースでは、内製化によって年間800万円の営業利益改善が見込まれます。
税率を30%と仮定すると、税引後の増益額は、800万円×70%=560万円となります。
内製化に必要な初期投資額は1億5,000万円です。
ここでは、追加運転資本を考慮せず、初期投資額を分母とする簡易的な増分投下資本利益率を計算します。
計算すると、560万円÷1億5,000万円×100=約3.7%となります。
つまり、年間1,200個の生産量では、内製化による追加投資に対する税引後利益の比率は約3.7%です。
ここで、仮にA社の資本コストを7%とします。
この場合、約3.7%という利益率は、資本コストの7%を下回ります。
したがって、年間1,200個の生産量では、内製化によって会計上の利益が増加しても、投下資本に見合う十分な利益を生み出せない可能性があります。
ただし、今回の3.7%は、初期投資額を分母にした簡易的な指標であり、厳密な企業全体のROICではありません。
実際の投資判断では、設備の簿価の変化、追加運転資本、将来のキャッシュフロー、設備の残存価値などを考慮する必要があります。
このケースから学んでほしいのは、「費用削減が実現する投資」と「企業価値を高める投資」は、必ずしも同じではないということです。
生産量が1,600個になった場合
次に、A社の年間生産量が1,600個へ増加した場合を考えましょう。
内製費用は、4,000万円+5万円×1,600個=1億2,000万円です。
外注費用は、9万円×1,600個=1億4,400万円となります。
したがって、内製化による年間費用削減額は、1億4,400万円-1億2,000万円=2,400万円です。
税率30%を仮定すると、税引後の増益額は、2,400万円×70%=1,680万円となります。
先ほどと同じ簡易計算を行うと、1,680万円÷1億5,000万円×100=11.2%です。
この場合、追加投資に対する税引後利益の比率は11.2%となり、仮定した資本コスト7%を上回ります。
年間1,200個では約3.7%でした。
年間1,600個では11.2%です。
つまり、生産量が増加することで、内製化の経済的な魅力が高まっています。
ただし、年間1,600個を製造できるだけの設備能力が必要です。
また、生産量の増加によって追加の人員や設備が必要になる場合には、費用構造が変化します。
このように、Make or Buyの判断では、生産量の見通しと必要な投資額を一緒に考えることが重要です。
投資判断ではNPVも確認する
ここまで、内製化による年間費用削減額とROICに関連する指標を確認してきました。
しかし、設備投資を伴うMake or Buyの判断では、もう一つ重要な方法があります。
それが、NPV(正味現在価値)です。
NPVとは、将来得られるキャッシュフローを現在価値へ割り引き、初期投資額と比較する方法です。
例えば、A社が1億5,000万円の設備投資を行い、今後5年間にわたって費用削減効果を得るとします。
この場合、毎年の費用削減額だけでなく、税金、減価償却による税効果、設備維持費、追加運転資本などを考慮して、将来のキャッシュフローを見積もります。
そして、それらを資本コストに応じた割引率で現在価値へ換算します。
NPVがプラスであれば、その前提条件の下では投資によって経済的価値が生まれると判断できます。
一方、NPVがマイナスであれば、投資によって十分な経済的価値を生み出せない可能性があります。
ここで重要なのは、ROICとNPVの役割の違いです。
ROICは、投下資本に対する利益の効率を評価する指標です。
NPVは、投資によって将来生み出されるキャッシュフローの現在価値を評価する方法です。
したがって、設備投資を伴うMake or Buyの判断では、利益率やROICだけでなく、NPVも確認することが望まれます。
ケーススタディ2 製薬企業の製造委託
次に、製薬企業のMake or Buyを考えてみましょう。
架空の製薬企業「ファーマB社」を設定します。
B社は、新しい医薬品の研究開発を行っています。
研究開発能力には強みがありますが、自社の製造設備は十分ではありません。
新薬候補の開発が進み、将来の商業生産を見据えた製造体制の検討が必要になりました。
B社には、2つの選択肢があります。第一に、自社で製造設備を整備する方法です。第二に、外部の医薬品製造受託企業へ委託する方法です。
医薬品の開発・製造では、CDMOという企業形態が重要な役割を果たしています。
CDMOとは、Contract Development and Manufacturing Organizationの略称です。
医薬品の開発や製造に関する業務を受託する企業を意味します。
また、製造を中心に受託する企業は、CMOと呼ばれる場合があります。
B社がCDMOを利用する場合、自社で大規模な製造設備を持たずに、外部企業の専門技術や設備を活用できる可能性があります。
一方、製造委託には注意すべき点もあります。
例えば、製造委託先の生産能力が不足すれば、医薬品の供給に影響する可能性があります。
また、品質問題が発生した場合には、原因調査や改善に時間が必要になることがあります。
さらに、製造工程に関する重要な情報やノウハウを、どのように管理するかも重要です。
医薬品では、外部へ製造を委託したからといって、製造販売業者などが負う法令上の責任まで外部へ移転できるわけではありません。
具体的な責任分担は、対象製品、事業者の許可区分、適用法令、契約内容などによって確認する必要があります。
したがって、製薬企業のMake or Buyでは、単純な製造費用の比較だけでなく、品質管理、供給安定性、技術管理、規制対応などを考慮する必要があります。
ケーススタディ3 医療DX企業の開発内製化
次に、医療DX企業を考えてみましょう。
架空の企業「デジタルヘルスC社」を設定します。
C社は、病院向けの業務支援システムを開発しています。
現在、ソフトウェア開発の一部を外部企業へ委託しています。
しかし、事業が拡大するにつれて、外部委託費用が増加してきました。
そこで、C社は開発部門の内製化を検討しています。ここで、次の条件を仮定します。外部委託費用は年間6,000万円です。
一方、自社で開発チームを構築する場合、エンジニアの人件費や開発環境の維持費などで、年間5,000万円が必要になるとします。
単純な年間費用比較では、内製化によって1,000万円の費用削減が期待できます。
しかし、これだけで判断してよいのでしょうか。
まず、開発人材を確保できるかを考える必要があります。
必要な技術を持つエンジニアを採用できなければ、開発体制を構築することはできません。
また、採用費用や教育費用も必要になる場合があります。
次に、開発するシステムの重要性を考えます。
例えば、C社の競争優位が独自の医療データ解析技術にある場合、その中核技術を自社で保有することには戦略的な意味があります。
一方、一般的なウェブサイトの制作や、競争優位と直接関係しない補助的なシステム開発であれば、外部委託が合理的な場合があります。
さらに、医療DXでは、個人情報や医療情報の管理、サイバーセキュリティなども重要です。
外部委託する場合には、委託先の情報管理体制や契約条件などを確認する必要があります。
つまり、医療DX企業のMake or Buyでは、費用だけでなく、技術の重要性、人材確保、情報管理、開発速度などを総合的に評価する必要があります。
Make or Buyで最も重要な「コア業務」の考え方
ここまで、医療機器メーカー、製薬企業、医療DX企業の例を見てきました。
ここで重要になるのが、コア業務という考え方です。
コア業務とは、企業の競争優位を形成するうえで、特に重要な活動を意味します。
例えば、独自の創薬技術に強みを持つ製薬企業では、研究開発がコア業務となる可能性があります。
高度な加工技術に強みを持つ医療機器メーカーでは、製造技術がコア業務となる場合があります。
また、医療現場の業務を深く理解し、独自のシステムを開発する医療DX企業では、医療業務の分析やソフトウェア設計がコア業務となる可能性があります。
ここで、競争優位の源泉となる活動は、自社で能力を維持・蓄積することが重要であるという考え方ができます。一方、競争優位と直接関係しない活動については、外部企業の専門能力を活用する方が合理的な場合があります。
ただし、コア業務だから必ず内製すべきというわけではありません。
例えば、企業の競争優位にとって重要な活動であっても、自社だけでは必要な技術や設備を確保できない場合があります。
その場合、外部企業との戦略的な提携によって競争優位を形成することも考えられます。
したがって、重要なのは、単純に内製と外注を分けることではありません。「どの能力を自社に蓄積し、どの能力を外部企業との関係によって確保するのか」という視点です。
外注のリスクをどう評価するか
外注には多くの利点がありますが、同時にリスクもあります。
代表的なリスクを整理してみましょう。
品質リスクは委託先の品質問題で、医療機器部品の不良が例です。供給リスクは委託先の生産停止で、医薬品原材料の供給停止が例です。技術流出リスクは技術やノウハウの流出で、独自製造技術の流出が例です。価格上昇リスクは委託費用の増加で、原材料価格の上昇が例です。契約リスクは契約条件による制約で、最低発注数量の設定が例です。情報管理リスクは機密情報の漏えいで、医療情報の不適切な管理が例です。依存リスクは特定企業への依存で、単一委託先への集中が例です。
これらのリスクは、企業の収益性や事業継続に影響する可能性があります。
例えば、ある医療機器メーカーが、重要部品を1社だけから調達しているとします。
その企業で生産停止が発生すれば、医療機器メーカーも製品を製造できなくなる可能性があります。
この場合、部品の購入価格が安くても、供給リスクが高いと評価される場合があります。
したがって、Make or Buyでは、費用だけでなく、供給の安定性も考慮する必要があります。
内製にもリスクがある
一方、内製にもリスクがあります。
例えば、自社工場を建設した場合、設備投資によって多額の資金が必要になります。
また、需要が減少しても、設備の減価償却費や固定的な人件費などが残る場合があります。
さらに、製造技術の変化によって設備が陳腐化する可能性もあります。
医療企業では、新しい技術や製品の登場によって、既存の製造設備が競争力を失う場合があります。
また、自社で製造を行う場合には、品質管理体制や必要な人材を維持する必要があります。
つまり、内製は企業の管理能力を高める一方で、固定費や設備投資の負担を増加させる可能性があります。
ここで重要なのは、内製と外注のどちらにもリスクがあるということです。
Make or Buyでは、それぞれのリスクを比較し、企業の事業戦略に適した方法を選択する必要があります。
Make or Buyの判断に必要な5つの視点
ここまでの内容を整理すると、Make or Buyでは、次の5つの視点が重要になります。
費用
内製と外注では、どちらの総費用が低いでしょうか。
固定費、変動費、設備投資、品質管理費用などを比較します。
品質
内製と外注では、どちらが必要な品質を安定して確保できるでしょうか。
医療企業では、安全性や品質管理が重要です。
供給安定性
必要な製品や部品を、安定して確保できるでしょうか。
特定の企業や工場への依存が高くなっていないかを確認します。
競争優位
その活動は、企業の競争優位の源泉になっているでしょうか。
重要な技術やノウハウを、自社に蓄積する必要があるかを考えます。
資本効率
内製化に必要な投資は、十分な利益やキャッシュフローを生み出すでしょうか。
ROICやNPVなどを使って評価します。
この5つを組み合わせることで、Make or Buyをより総合的に判断できます。
JMEI式Make or Buy分析シート
実際の医療企業分析では、次の項目を整理すると便利です。
シートは、基本情報と、費用分析、品質分析、供給リスク分析、競争優位分析、財務分析、総合評価の七つの部分で構成します。基本情報では、企業名、対象事業、対象製品・業務、現在の実施方法、検討している選択肢、分析対象期間を記入します。
費用分析では、内製の年間固定費、内製の変動費単価、外注単価、外注管理費用、必要な設備投資、年間生産量・業務量、内製と外注の損益分岐点を整理します。品質分析では、必要な品質基準、内製の品質管理能力、外注先の品質管理能力、品質問題が発生した場合の影響、品質管理に必要な追加費用を整理します。供給リスク分析では、主要な調達先・委託先、代替先の有無、供給停止時の影響、在庫の必要量、供給体制の強化策を整理します。
競争優位分析では、対象活動がコア業務か、独自技術との関係、技術流出リスク、自社に蓄積すべき能力、外部企業から獲得できる能力を整理します。財務分析では、内製化による年間費用削減額、追加設備投資額、税引後営業利益への影響、追加運転資本、ROICへの影響、NPV、投資回収期間を記入します。総合評価では、内製の利点とリスク、外注の利点とリスク、推奨される選択肢、判断に必要な追加情報を整理します。
この分析シートを使うことで、Make or Buyを単なる費用比較ではなく、経営戦略と財務分析の両面から評価できます。
練習問題
問題1
Make or Buyとは、どのような経営判断でしょうか。
【答え】企業が必要とする製品、部品、サービス、業務などを、自社で生産・実施するか、外部企業から購入・調達するかを判断することです。
問題2
企業が外注を選択する主な理由を3つ挙げてください。
【答え】設備投資を抑えられること、外部企業の専門技術を活用できること、事業開始までの時間を短縮できることなどがあります。
問題3
企業が内製を選択する主な理由を3つ挙げてください。
【答え】品質を直接管理しやすいこと、重要技術を社内に蓄積できること、一定の生産量を超えると費用面で有利になる場合があることなどがあります。
問題4
ある医療機器メーカーの内製費用は、年間固定費3,000万円、1個当たり変動費4万円です。外注単価は1個当たり7万円です。内製と外注の損益分岐数量はいくつでしょうか。
【答え】1,000個です。計算すると、3,000万円÷(7万円-4万円)=1,000個。
問題5
問題4の企業が年間800個を必要とする場合、内製と外注ではどちらが費用面で有利でしょうか。
【答え】外注が有利です。内製費用は、3,000万円+4万円×800個=6,200万円。外注費用は、7万円×800個=5,600万円。したがって、外注の方が600万円安くなります。
問題6
問題4の企業が年間1,500個を必要とする場合、内製と外注ではどちらが費用面で有利でしょうか。
【答え】内製が有利です。内製費用は、3,000万円+4万円×1,500個=9,000万円。外注費用は、7万円×1,500個=1億500万円。したがって、内製の方が1,500万円安くなります。
問題7
ある医療企業が、内製化によって年間2,000万円の営業利益改善を見込んでいます。税率を30%と仮定した場合、税引後の増益額はいくらでしょうか。
【答え】1,400万円です。計算すると、2,000万円×70%=1,400万円。
問題8
問題7の内製化に必要な追加投資額が2億円の場合、初期投資額に対する税引後増益額の比率はいくらでしょうか。
【答え】7%です。計算すると、1,400万円÷2億円×100=7%。ただし、これは初期投資額を分母にした簡易的な指標であり、厳密なROICやNPVとは異なります。
問題9
ある製薬企業は、研究開発能力に強みを持っていますが、製造設備を持っていません。製造を外部へ委託する場合、どのような点を確認する必要があるでしょうか。
【答え】委託先の製造能力、品質管理体制、供給安定性、製造費用、技術管理、規制対応、契約条件などを確認する必要があります。
問題10
ある医療DX企業は、独自の医療データ解析技術を持っています。その中核技術の開発を外部へ委託する場合、どのようなリスクが考えられるでしょうか。
【答え】技術やノウハウの流出、外部企業への依存、開発能力の社内蓄積不足、情報管理上の問題などが考えられます。
問題11
内製化によって営業利益が増加すれば、必ず企業価値も増加するでしょうか。
【答え】必ずしも増加するとは限りません。内製化に多額の設備投資が必要な場合、利益が増加しても、資本コストに見合う十分な利益やキャッシュフローを生み出せない可能性があります。
問題12
Make or Buyの判断で、ROICやNPVを確認する必要があるのはなぜでしょうか。
【答え】内製化に必要な投資が、十分な経済的成果を生み出すかを評価するためです。ROICは投下資本に対する利益の効率を評価し、NPVは将来のキャッシュフローの現在価値を評価します。
JMEIの視点
JMEIでは、Make or Buyを、医療企業の競争優位と資本効率を理解するための重要な経営判断として位置づけています。
企業がどの活動を自社で行い、どの活動を外部へ委ねるかによって、利益構造や資本効率は変化します。
例えば、製造を外部へ委託すれば、自社の設備投資を抑えられる可能性があります。
一方、製造を内製化すれば、一定の生産量を超えた場合に費用面で有利になることがあります。
しかし、JMEIでは、費用の比較だけでMake or Buyを判断するべきではないと考えます。
特に重要なのは、次の5つの視点です。
第一の視点は、「競争優位の源泉はどこにあるか」です。企業の競争優位が研究開発にあるのか、製造技術にあるのか、販売網にあるのかを確認します。競争優位の源泉となる活動については、自社で能力を維持・蓄積する必要性を慎重に検討します。
第二の視点は、「固定費構造はどう変化するか」です。内製化によって、設備投資や固定費が増加する場合があります。一方、外注によって固定費を抑えられる場合があります。この違いは、需要が増加した場合だけでなく、需要が減少した場合の収益性にも影響します。
第三の視点は、「品質と供給の安定性は確保できるか」です。医療企業では、品質や供給の安定性が重要です。費用が安いという理由だけで外注先を選択すると、品質問題や供給停止によって、結果的に大きな損失が発生する可能性があります。
第四の視点は、「資本効率は改善するか」です。内製化によって利益が増加しても、多額の設備投資が必要であれば、ROICが低下する可能性があります。したがって、利益額だけでなく、投下資本に対する利益の効率を確認します。
第五の視点は、「長期的な競争優位につながるか」です。Make or Buyは、短期的な費用削減だけで判断するものではありません。例えば、外注によって短期的な費用を削減できても、重要な技術が社内に蓄積されなくなれば、長期的な競争力へ影響する可能性があります。一方、内製化によって技術を蓄積できても、需要が減少して設備が余れば、収益性が悪化する可能性があります。
したがって、JMEIでは、Make or Buyを長期的な経営戦略の一部として分析します。
JMEI Medical Insight
内製化は利益率を高めても、企業価値を高めるとは限らない
医療企業の経営分析では、利益率の改善が重要なテーマになります。
例えば、ある医療機器メーカーが製造費用の削減を目指しているとします。
現在は外部企業へ製造を委託していますが、自社で製造すれば、製品1個当たりの費用を削減できるとします。
この場合、経営陣は内製化を検討するかもしれません。
しかし、ここで重要な問いがあります。「製造費用を削減するために、多額の設備投資を行うことは、本当に合理的なのでしょうか」という問いです。
例えば、ある医療機器メーカーが、内製化によって年間3,000万円の営業利益改善を見込んでいるとします。
一方、内製化には5億円の設備投資が必要になるとします。
税率を30%と仮定すると、税引後の増益額は2,100万円です。
初期投資額に対する税引後増益額の比率は、2,100万円÷5億円×100=4.2%となります。
ここで、企業の資本コストを8%と仮定します。
この場合、4.2%という利益率は資本コストを下回ります。
したがって、内製化によって営業利益が増加しても、その投資が十分な経済的価値を生み出しているとは限りません。
もちろん、実際の投資判断では、将来のキャッシュフローや設備の耐用期間、残存価値、追加運転資本などを考慮する必要があります。
しかし、この例から重要なことが分かります。
利益率の改善だけでは、投資の合理性を判断できないということです。
ここで、もう一つ考えてみましょう。
ある医療機器メーカーが、外注によって製造設備を保有せずに事業を運営しているとします。
この企業は、製品1個当たりの製造費用が高いため、営業利益率はそれほど高くないかもしれません。
しかし、設備投資が少ないため、投下資本も小さくなっています。
その結果、ROICが高くなる場合があります。
一方、別の医療機器メーカーは、自社工場を保有しています。
製造費用が低いため、営業利益率は高いかもしれません。
しかし、多額の設備投資が必要であるため、投下資本も大きくなっています。
その結果、ROICは必ずしも高くならない場合があります。
この違いを、架空の2社で比較してみましょう。
A社(内製中心)は、売上高100億円、営業利益15億円、営業利益率15%、税引後営業利益10.5億円、投下資本100億円で、ROICは10.5%です。B社(外注中心)は、売上高100億円、営業利益12億円、営業利益率12%、税引後営業利益8.4億円、投下資本50億円で、ROICは16.8%です。
税率は30%と仮定しています。この例では、A社の営業利益率は15%です。一方、B社の営業利益率は12%です。
営業利益率だけを見ると、A社の方が優れているように見えます。
しかし、ROICを比較すると、A社は10.5%、B社は16.8%です。
つまり、B社の方が少ない投下資本で効率的に利益を生み出しています。
ここで重要なのは、営業利益率とROICでは、評価している内容が異なるということです。
営業利益率は、売上高に対してどれくらいの営業利益を生み出しているかを示します。
一方、ROICは、投下資本に対してどれくらいの税引後営業利益を生み出しているかを示します。
したがって、Make or Buyの判断では、営業利益率だけでなく、ROICも確認する必要があります。
ただし、ROICが高い企業が、必ずしも企業価値の面で優れているとは限りません。
将来の成長性、資本コスト、事業リスク、キャッシュフローなども考慮する必要があります。
ここで、さらに重要な視点があります。
それは、企業がどの活動に資本を投入しているかということです。
例えば、ある医療機器メーカーが、研究開発と製造の両方へ多額の資金を投入しているとします。
一方、別の医療機器メーカーは、研究開発へ資金を集中し、製造を外部へ委託しているとします。
この場合、両社の資本構造は異なります。
研究開発へ資金を集中している企業では、独自技術の開発が競争優位の源泉となる可能性があります。
一方、製造技術に強みを持つ企業では、自社工場が競争優位の源泉となる場合があります。
つまり、企業がどの活動を内製し、どの活動を外注しているかを確認することで、その企業が何を競争優位の源泉と考えているのかを理解できる場合があります。
これは、企業分析において重要な視点です。
さらに、Make or Buyは、企業の成長戦略にも影響します。
例えば、ある医療機器メーカーが急速に成長しているとします。
需要が増加するたびに自社工場を拡張する必要があれば、多額の設備投資が必要になります。
一方、外部企業の製造能力を活用できれば、自社の設備投資を抑えながら事業を拡大できる可能性があります。
ただし、外注先の生産能力が不足すれば、成長機会を逃す可能性もあります。
したがって、外注による成長には、委託先の能力や供給体制が重要になります。
ここで、もう一つ考えたいことがあります。
それは、Make or Buyの選択が、企業のリスク構造を変化させるということです。
内製中心の企業では、固定費が大きくなる場合があります。
固定費が大きい企業では、売上高が減少したときに利益が大きく減少する可能性があります。
一方、外注中心の企業では、生産量に応じて費用を調整できる場合があります。
この場合、需要が減少したときの固定費負担を抑えられる可能性があります。
ただし、外注契約に最低発注数量や長期契約の条件がある場合には、費用を柔軟に調整できないこともあります。
つまり、内製と外注の違いは、利益率だけでなく、需要変動に対する企業の耐久力にも影響するのです。
ここで、JMEIが重視する考え方があります。「企業が何を自社で行っているかを見ることで、その企業の競争優位と資本配分の考え方が見えてくる」ということです。
例えば、製薬企業が研究開発へ経営資源を集中し、製造を外部へ委託している場合、その企業は研究開発能力を競争優位の中心と考えている可能性があります。
一方、医療機器メーカーが重要部品の製造を内製化している場合、その製造技術が競争優位の源泉となっている可能性があります。
また、医療DX企業がソフトウェア開発を内製化している場合、開発能力や技術蓄積を重視している可能性があります。
もちろん、実際の企業では、資金制約や過去の経営判断によって内製・外注の構造が形成されている場合もあります。
そのため、現在の事業構造だけで経営戦略を断定することはできません。
しかし、Make or Buyの分析は、企業の競争優位と資本配分を理解するための重要な手がかりになります。
JMEIでは、今後の医療企業分析において、次の3つを重視します。第一に、どの活動が競争優位の源泉となっているか。第二に、その活動を内製することが経済的に合理的か。第三に、内製と外注の選択が、ROICやキャッシュフローへどのように影響しているか。
この3つを組み合わせることで、医療企業の事業構造をより深く理解できるようになります。
今回のポイント
第73講で最も覚えてほしいのは、「内製と外注の選択は、費用削減だけでなく、競争優位と資本効率を左右する経営判断である」ということです。
Make or Buyとは、企業が必要とする製品や業務を、自社で生産・実施するか、外部企業へ委ねるかを判断することです。
内製には、品質管理や技術蓄積、製造工程の改善などの利点があります。
一方、外注には、設備投資の抑制、専門技術の活用、需要変動への対応などの利点があります。
しかし、どちらにもリスクがあります。
内製では、設備投資や固定費の負担が大きくなる場合があります。
外注では、品質問題や供給停止、外部企業への依存などのリスクがあります。
また、Make or Buyでは、固定費と変動費の違いが重要です。
一定の生産量までは外注が有利でも、生産量が増加すると内製が有利になる場合があります。
その損益分岐点は、次の式で計算できます。
損益分岐数量=内製の固定費÷(外注単価-内製の変動費単価)
ただし、費用面で内製が有利になったとしても、必ずしも内製化が合理的とは限りません。
設備投資に必要な資金や、投資によって生み出される利益、キャッシュフローなどを確認する必要があります。
そのため、ROICやNPVなどを活用した分析が重要になります。
JMEIでは、Make or Buyを分析する際に、次の5つの問いを重視します。「この活動は、企業の競争優位の源泉となっているのか」「内製と外注では、どちらが経済的に合理的なのか」「品質と供給の安定性を確保できるのか」「内製化に必要な投資は、十分な利益やキャッシュフローを生み出すのか」「その選択は、長期的な競争優位の形成につながるのか」
この5つを考えることで、医療企業の内製・外注戦略を、経営戦略と財務分析の両面から評価できるようになります。
次回予告
第74講|垂直統合とは何か?――医療企業はどこまで事業を自社で保有するべきなのか
今回は、Make or Buyについて学びました。
企業が必要とする製品や業務を、自社で行うか、外部企業へ委ねるかによって、費用構造や競争優位、資本効率が変化することを確認しました。
また、医療機器メーカーのケーススタディを通じて、内製と外注の損益分岐点を計算しました。
さらに、内製化によって営業利益が増加しても、多額の設備投資が必要であれば、必ずしも企業価値が高まるとは限らないことを学びました。
ここで、新しい疑問が生まれます。「企業は、研究開発から製造、販売、保守サービスまで、どこまで自社で保有するべきなのでしょうか」という問いです。
例えば、ある製薬企業が、研究開発から製造、販売までをすべて自社で行っているとします。
一方、別の製薬企業は、研究開発を中心に行い、製造や販売の一部を外部企業へ委ねているとします。
この2社では、事業構造や必要な投下資本が異なります。
また、医療機器メーカーでは、重要部品の製造から最終製品の販売までを自社で行う企業もあれば、製造を外部へ委託し、製品開発や販売へ経営資源を集中する企業もあります。
このように、企業が事業活動のどこまでを自社で保有するかという考え方を、垂直統合と呼びます。
次回は、垂直統合の基本を学びます。
特に、垂直統合の基本構造、川上統合と川下統合の違い、垂直統合による競争優位の形成、垂直統合が固定費と投下資本へ与える影響、垂直統合とROIC、企業価値の関係の5つの視点から分析します。
そして、製薬企業、医療機器メーカー、医療DX企業を例に、どこまでの事業活動を自社で保有することが合理的なのかを考えます。
次回の目標は、「この医療企業は、どこまで事業活動を自社で保有するべきなのか。そして、その事業構造は競争優位と資本効率へどのような影響を与えるのか」という問いに答えられるようになることです。
第74講では、医療企業の事業構造を、垂直統合という視点から読み解いていきます。
JMEI|日本医療企業研究所 医療を変える企業と技術を読み解く。
本講座に関するご注意
本講座は、企業分析の考え方を学ぶための教育コンテンツです。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業には該当せず、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。講座内で企業を題材として扱う場合も、あくまで分析手法を説明するための例示です。
講座に関するご注意
本講座は、企業分析の考え方を学ぶための教育コンテンツです。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業には該当せず、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記事中で企業名に言及する場合も、分析手法を説明するための例示であり、投資を勧めるものではありません。
受講による学習成果、および受講者の投資成果を保証するものではありません。投資その他の意思決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。