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医療企業分析アカデミー

第67講 PEST分析とは何か?――政策・経済・社会・技術の変化から医療企業の未来を読み解く

JMEI 医療企業分析アカデミー 第67講 政策・経済・社会・技術の変化から医療企業の未来を読み解く

はじめに

こんにちは。日本医療企業研究所(JMEI)です。

前回の第66講では、ファイブフォース分析を完成させました。

ファイブフォース分析は、企業が属する業界の競争構造を理解するための方法です。

既存企業間の競争、新規参入の脅威、代替品の脅威、買い手の交渉力、供給者の交渉力という5つの要因から、企業の収益性を考えました。

しかし、企業の経営環境を変える要因は、業界内部だけに存在するわけではありません。

例えば、医療機器メーカーを考えてみましょう。

現在、売上高が順調に成長していても、医療制度の変更によって病院の設備投資が抑制されれば、製品の需要が減少する可能性があります。

一方、高齢化によって特定の医療サービスの需要が増加すれば、関連する医療機器の市場が拡大するかもしれません。

さらに、AI技術が進歩することで、これまで存在しなかった新しい医療サービスが生まれる可能性もあります。

このように、企業の外部環境には、企業自身では直接コントロールすることが難しい変化が存在します。

今回学ぶのは、こうした外部環境を体系的に分析する方法です。

それが、PEST分析(PEST Analysis)です。

PEST分析では、政治・制度、経済、社会、技術という4つの視点から、企業を取り巻く環境を整理します。

今回の講義では、PEST分析の基本を学び、医療機器、製薬、医療DXを例に、外部環境の変化が売上高、利益率、ROIC、企業価値へどのようにつながるのかを考えていきます。

今回の目標は、ニュースを読んだときに、「この出来事は、どの医療企業に、どのような経路で影響するのだろうか」

と考えられるようになることです。

PEST分析とは何か

PEST分析とは、企業を取り巻くマクロ環境を4つの要因に分類して分析する方法です。

マクロ環境とは、個別企業が直接コントロールすることが難しい、社会や経済全体の環境を意味します。

PESTは、次の4つの英単語の頭文字です。

Pは Political で、政治・政策・法律・規制を分析します。Eは Economic で、経済成長・金利・為替・物価を分析します。Sは Social で、人口構造・社会意識・生活習慣を分析します。Tは Technological で、技術革新・研究開発・新技術を分析します。

例えば、ある医療AI企業について考えます。

政府が医療DXを推進する政策を実施すれば、その企業にとって事業機会が広がる可能性があります。

これはPoliticalの要因です。

金利が上昇すれば、資金調達費用が増加する可能性があります。

これはEconomicの要因です。

医療従事者不足が進めば、業務効率化システムへの需要が増える可能性があります。

これはSocialの要因です。

AI技術の進歩によって、新しい診断支援システムが開発される可能性があります。

これはTechnologicalの要因です。

このように、PEST分析を利用することで、企業の外部環境を整理できます。

ただし、PEST分析は単に社会の変化を一覧表にすることではありません。

重要なのは、外部環境の変化が企業の経営にどのような影響を与えるのかを考えることです。

PEST分析とファイブフォース分析の違い

前回学んだファイブフォース分析と、今回のPEST分析は何が違うのでしょうか。

簡単に整理しましょう。

ファイブフォース分析は、業界内部の競争構造を分析します。

一方、PEST分析は、業界を取り巻く社会全体の環境を分析します。

例えば、医療機器メーカーを考えます。

競合メーカーが新製品を発売した。

これはファイブフォース分析で扱う競争環境の変化です。

一方、政府が医療機器に関する規制を変更した。これはPEST分析で扱う外部環境の変化です。ただし、両者は独立しているわけではありません。

例えば、規制が緩和されれば、新しい企業が市場へ参入しやすくなる可能性があります。

その結果、既存企業間の競争が激しくなるかもしれません。

つまり、PEST分析で把握した外部環境の変化が、ファイブフォースで分析する競争構造を変えることがあるということです。

JMEIでは、両者を組み合わせて医療企業の将来を分析します。

Political:政治・政策・制度を分析する

最初は、Politicalです。

医療産業では、政治・政策・制度の影響が非常に重要です。

なぜなら、医療サービスの多くは、公的医療保険制度や法律、規制と密接に関係しているからです。

例えば、日本の医療産業では、次のような要因が企業経営に影響する可能性があります。

例えば、診療報酬制度、薬価制度、医療機器に関する規制、医療情報の安全管理に関する制度、医療DX政策、研究開発支援政策、医療提供体制に関する政策などです。

これらの変化は、医療企業の売上高や利益率に影響する場合があります。

ただし、制度変更がすべての医療企業に同じ影響を与えるわけではありません。

例えば、診療報酬制度の変更によって、ある医療行為の経済的な評価が変わったとします。

その結果、医療機関の設備投資判断が変化する可能性があります。

しかし、関連する医療機器メーカーの売上高が必ず増減するとは限りません。

実際には、医療機関の経営状況、装置の必要性、競合製品の存在などによって影響が異なります。

したがって、政策の内容を確認した後には、企業への影響経路を考える必要があります。

ケーススタディ1 診療報酬の変更は医療機器メーカーにどう影響するか

架空の医療機器メーカー、Medical Device A社を考えます。

A社は、病院向けの検査装置を販売しています。年間売上高は100億円です。営業利益は20億円です。営業利益率は20%です。

ここで、ある検査に関する診療報酬の評価が変更され、病院が関連設備への投資を慎重に検討するようになったと仮定します。

その結果、A社の販売数量が10%減少したとします。

販売価格は変わらないと仮定します。

売上高は、100億円×90%=90億円となります。

次に、費用構造を考えましょう。

当初の変動費は50億円です。

販売数量の減少に比例して変動費も10%減少すると仮定すると、50億円×90%=45億円となります。

固定費は30億円のままとします。

この場合、営業利益は、90億円-45億円-30億円=15億円です。

営業利益率は、15億円÷90億円×100=約16.7%となります。

比較してみましょう。

制度変更前は、売上高が100億円、変動費が50億円、固定費が30億円、営業利益が20億円、営業利益率が20%です。制度変更後は、売上高が90億円、変動費が45億円、固定費が30億円、営業利益が15億円、営業利益率が約16.7%になります。

売上高は10%減少しました。

しかし、営業利益は25%減少しています。

ここで重要なのは、制度変更によって売上高が変化すると、利益がそれ以上の割合で変化する場合があることです。

もちろん、これは説明のための架空のシナリオです。

実際の診療報酬改定が、医療機器の販売数量に必ずこのような影響を与えるわけではありません。

JMEIでは、制度変更のニュースを分析するとき、制度変更から医療機関の行動変化、医療機器の需要変化、売上高の変化、利益率の変化へと、影響が伝わる経路を考えます。

このように、影響が伝わる経路を明確にすることが重要です。

Economic:経済環境を分析する

次に、Economicです。

Economicでは、経済全体の変化が企業へどのような影響を与えるのかを分析します。

代表的な要因には、経済成長率、金利、為替レート、物価上昇率、賃金上昇率、エネルギー価格、資金調達環境などがあります。医療企業も、こうした経済環境の影響を受けます。

例えば、医療機器メーカーが海外から部品を輸入している場合です。

円安が進むと、円換算した輸入部品の調達費用が増加する可能性があります。

一方、海外で製品を販売している企業では、外貨建て売上高の円換算額が増加する場合があります。

つまり、同じ円安でも、企業の事業構造によって影響は異なります。

また、金利が上昇した場合、借入金の多い企業では支払利息が増加する可能性があります。

一方、現預金を多く保有している企業では、受取利息が増加する場合もあります。

したがって、経済環境の変化を分析するときには、企業の財務構造を確認する必要があります。

ケーススタディ2 円安は医療企業にとって有利なのか

架空の医療機器メーカーB社を考えます。B社は海外から部品を輸入しています。年間の部品購入額は1,000万ドルです。

為替レートが1ドル140円の場合、円換算した購入額は、1,000万ドル×140円=14億円です。

ここで、為替レートが1ドル150円になったとします。

購入額は、1,000万ドル×150円=15億円となります。

円換算した調達費用は1億円増加しました。一方、B社は海外にも製品を販売しています。年間の海外売上高は2,000万ドルです。

1ドル140円の場合、2,000万ドル×140円=28億円です。

1ドル150円の場合、2,000万ドル×150円=30億円となります。

円換算した海外売上高は2億円増加しました。

整理してみましょう。

1ドル140円のときは、海外売上高が28億円、輸入部品費用が14億円で、差額は14億円です。1ドル150円のときは、海外売上高が30億円、輸入部品費用が15億円で、差額は15億円です。

この単純化したケースでは、海外売上高の増加額が輸入部品費用の増加額を上回っています。

しかし、これだけで円安がB社にとって有利だと断定することはできません。

実際には、海外の人件費、現地での製造費用、為替予約、販売数量、価格改定なども影響するからです。

ここで覚えてほしいのは、為替の影響は、海外売上高だけでなく、海外費用や調達構造を含めて考える必要があるということです。

金利上昇と医療DX企業

次に、金利について考えましょう。

医療DX企業には、成長のために外部資金を必要とする企業があります。

例えば、クラウド型医療情報システムを開発する企業です。

新しいサービスを開発するためには、エンジニアの人件費や研究開発費などが必要になります。

しかし、サービスの利用者が十分に増えるまで、利益を確保できない場合があります。

このような企業では、資金調達環境が重要です。

金利が上昇すると、借入金の調達費用が増加する可能性があります。

また、将来の利益を現在価値へ割り引く際に用いる割引率が上昇すれば、他の条件が同じ場合、将来キャッシュフローの現在価値は低下します。

ただし、金利上昇がすべての医療DX企業に同じ影響を与えるわけではありません。

十分な現預金を保有し、安定したキャッシュフローを生み出している企業では、影響が限定的な場合があります。

JMEIでは、金利環境を分析するとき、企業の成長率だけでなく、資金調達への依存度も確認します。

Social:社会環境を分析する

次に、Socialです。

Socialでは、人口構造や生活習慣、社会意識などの変化を分析します。

医療産業では、特に重要な要因です。例えば、高齢化、人口減少、医療従事者不足、在宅医療の需要、慢性疾患への対応、予防医療への関心、患者の医療サービスに対する期待といった社会環境の変化が考えられます。これらの変化は、医療企業の事業機会に影響します。

ただし、高齢化が進めば、すべての医療企業の売上高が増加するわけではありません。

高齢者人口の増加によって需要が拡大する製品もあれば、人口減少によって市場が縮小する製品もあります。

また、医療需要が増加しても、医療機関の人員や財源が不足すれば、必要なサービスを十分に提供できない場合があります。

したがって、社会環境の変化を分析するときには、需要の増加だけでなく、サービスを提供する側の制約も考える必要があります。

高齢化は医療企業にとって成長機会なのか

例えば、在宅医療に関連する医療機器メーカーを考えます。

高齢化によって在宅医療の需要が増加すれば、関連機器の市場が拡大する可能性があります。

しかし、実際には次のような問題もあります。在宅医療を担う医療従事者が十分に確保できるか。医療機器の導入費用を誰が負担するのか。保守サービスを提供できるか。患者や家族が機器を安全に使用できるか。医療制度上、継続的な運用が可能か。これらの条件によって、市場の成長率は変化します。

つまり、社会的な必要性が高いことと、企業の売上高が増加することは同じではありません。

JMEIでは、社会環境の変化を分析するとき、社会的な必要性、実際の需要、支払い能力・制度、企業の売上高の順に考えます。

ケーススタディ3 医療従事者不足と医療DX

架空の医療DX企業、Medical Cloud C社を考えます。

C社は、医療機関向けの業務支援システムを提供しています。

ある病院では、事務作業に年間10,000時間を費やしているとします。

C社のシステムを導入することで、その作業時間を20%削減できると仮定します。

削減時間は、10,000時間×20%=2,000時間です。

ここで、事務作業にかかる人件費を1時間当たり2,500円と仮定します。

削減時間を金額換算すると、2,000時間×2,500円=500万円となります。

一方、C社のシステム利用料は年間300万円です。

単純に比較すると、500万円-300万円=200万円となります。

このケースでは、年間200万円の経済的な余地が生まれる計算です。

ただし、注意が必要です。

作業時間が削減されても、人件費が必ず500万円減少するわけではありません。

削減された時間を別の業務へ振り向ける場合もあります。

また、システム導入時の教育費用や運用費用なども必要です。

したがって、実際のROIを評価するときには、削減時間と実際の費用削減額を区別する必要があります。

それでも、このケースから重要なことが分かります。

医療従事者不足という社会環境の変化が、医療DX企業にとって新しい事業機会になる可能性があるということです。

Technological:技術環境を分析する

最後は、Technologicalです。

Technologicalでは、技術革新が企業の事業環境へどのような影響を与えるのかを分析します。

医療産業では、技術革新が市場構造を大きく変える場合があります。

例えば、人工知能、医療ロボット、遺伝子治療、RNA関連技術、再生医療、デジタルヘルス、画像診断技術、遠隔モニタリングなどの技術領域があります。

これらの技術は、新しい製品やサービスを生み出す可能性があります。

一方、既存製品の競争優位を弱める場合もあります。

例えば、新しい診断技術が開発されれば、従来の検査装置への需要が減少する可能性があります。

また、AIによって医療情報の処理が効率化されれば、従来の業務支援システムの一部が代替されるかもしれません。

つまり、技術革新は企業にとって成長機会であると同時に、リスクでもあります。

技術革新は必ず企業価値を高めるのか

ここで重要な問いがあります。

新しい技術を開発した企業は、必ず企業価値が高まるのでしょうか。

必ずしもそうではありません。

例えば、ある医療AI企業が新しい診断支援技術を開発したとします。

技術的には優れているかもしれません。

しかし、その技術を医療機関が導入するためには、さまざまな条件が必要です。

たとえば、臨床的な有用性、安全性、必要な規制上の手続き、既存システムとの連携、導入費用、運用体制、医療従事者への教育などです。

こうした条件が満たされなければ、技術が優れていても事業として普及しない可能性があります。

さらに、売上高が増加しても、研究開発費や販売費用が大きければ、十分な利益を確保できない場合があります。

したがって、JMEIでは、技術革新を分析するとき、技術そのものの優位性と事業としての収益性を分けて考えます。

ケーススタディ4 新技術による市場の変化

架空の医療機器メーカーD社を考えます。D社は、ある検査装置を販売しています。現在の市場規模は500億円です。D社の市場シェアは20%です。

したがって、D社の売上高は、500億円×20%=100億円です。

ここで、新しい検査技術が登場したとします。

その結果、従来型検査装置の市場が5年間で30%縮小すると仮定します。

市場規模は、500億円×70%=350億円となります。

D社が市場シェア20%を維持した場合、売上高は、350億円×20%=70億円です。

つまり、D社の売上高は100億円から70億円へ減少します。

しかし、ここで別の可能性も考えられます。

D社自身が新しい検査技術を開発し、新市場へ参入する場合です。

この場合、従来型製品の売上高が減少しても、新しい製品の売上高によって補える可能性があります。

したがって、技術革新の影響を分析するときには、既存市場の縮小だけでなく、企業が新技術へ対応できるかどうかを考える必要があります。

PEST分析では4つの要因が相互に影響する

ここまで、PESTの4つの要因を個別に学びました。

しかし、実際の社会では、それぞれの要因が独立して変化するわけではありません。

例えば、医療従事者不足を考えます。

医療従事者不足は、Socialの要因です。

しかし、その問題に対応するために政府が医療DX政策を推進すれば、Politicalの要因が関係します。

さらに、AI技術が進歩すれば、Technologicalの要因が関係します。

一方、医療機関の経営環境が厳しければ、システム導入が進まない可能性があります。

これはEconomicの要因です。

つまり、一つの社会課題に対して、PESTの4つの要因が同時に関係する場合があります。

JMEIでは、PEST分析を行うとき、4つの要因を別々に整理した後、それらの関係を考えます。

PEST分析を売上高予測へつなげる

ここからは、PEST分析を財務分析へつなげる方法を学びます。

例えば、ある医療DX市場の現在の市場規模が1,000億円だったとします。

今後、医療従事者不足や技術革新によって市場が成長すると考えます。

ただし、将来の成長率は確実ではありません。

そこで、3つのシナリオを作成します。

楽観シナリオ、基本シナリオ、悲観シナリオの3つを作り、それぞれの年間成長率を次のように仮定します。

年間市場成長率は、楽観シナリオが15%、基本シナリオが10%、悲観シナリオが5%です。

5年後の市場規模を計算してみましょう。

計算式は、将来の市場規模=現在の市場規模×(1+成長率)^年数です。

楽観シナリオでは、1,000億円×1.15⁵=約2,011億円。

基本シナリオでは、1,000億円×1.10⁵=約1,611億円。

悲観シナリオでは、1,000億円×1.05⁵=約1,276億円となります。

比較してみましょう。

5年後の市場規模は、現在の1,000億円に対して、楽観シナリオで約2,011億円、基本シナリオで約1,611億円、悲観シナリオで約1,276億円となります。

同じ市場でも、成長率の仮定によって5年後の市場規模は大きく変わります。

ここで重要なのは、PEST分析によって将来を正確に予言することではありません。

外部環境の変化によって、どのようなシナリオが考えられるのかを整理することです。

市場成長率と企業成長率は同じではない

ここで注意が必要です。

市場全体が年間10%成長していても、すべての企業が10%成長するわけではありません。

例えば、ある医療DX市場が年間10%成長しているとします。

しかし、A社の市場シェアが低下すれば、売上高成長率は市場全体を下回る可能性があります。

一方、A社が競合企業から顧客を獲得すれば、市場全体を上回る成長を実現できる場合があります。

つまり、企業の売上高成長率は、市場成長率と市場シェアの変化によって左右されます。

簡単な例を考えましょう。現在の市場規模は1,000億円です。A社の市場シェアは10%です。A社の売上高は100億円です。

翌年、市場が10%成長して1,100億円になったとします。

A社の市場シェアが10%のままであれば、1,100億円×10%=110億円です。

売上高成長率は10%になります。

しかし、A社の市場シェアが12%へ上昇した場合、1,100億円×12%=132億円となります。

売上高成長率は32%です。

このように、企業の成長率を分析するときには、PEST分析による市場成長の見通しと、競争分析による市場シェアの変化を組み合わせる必要があります。

PEST分析を営業利益率へつなげる

PEST分析では、売上高だけでなく、費用への影響も考える必要があります。

例えば、医療機器メーカーを考えます。

物価上昇によって原材料価格が上昇する可能性があります。

賃金上昇によって人件費が増加する場合もあります。

一方、技術革新によって製造効率が改善すれば、製造原価が低下する可能性があります。

つまり、外部環境の変化は、売上高と費用の両方に影響します。

例えば、ある企業の売上高が100億円、営業利益が20億円だったとします。

外部環境の変化によって売上高が110億円へ増加しました。

しかし、費用も80億円から90億円へ増加したとします。

この場合、営業利益は、110億円-90億円=20億円です。

売上高は10%増加しました。

しかし、営業利益は増加していません。

営業利益率は、20億円÷110億円×100=約18.2%となります。

当初の営業利益率20%から低下しました。

つまり、売上高が成長していても、費用の増加によって利益率が低下する場合があります。

PEST分析では、外部環境の変化が売上高と費用のどちらへ影響するのかを区別する必要があります。

PEST分析とROIC

次に、ROICとの関係を考えましょう。

ROICは、投下資本に対してどれくらいの税引後営業利益を生み出しているかを示す指標です。

基本的な計算式は、ROIC=税引後営業利益(NOPAT)÷投下資本×100です。

例えば、ある医療機器メーカーが新しい市場へ参入するとします。

高齢化によって市場が成長すると予想しています。

しかし、新しい製造設備や販売網を構築するために、多額の投資が必要です。

売上高が増加しても、投下資本がそれ以上の割合で増加すれば、ROICが低下する可能性があります。

一方、既存の設備や販売網を活用して売上高を増やせる場合、追加投資を比較的少なく抑えられる可能性があります。

したがって、PEST分析によって成長市場を発見した後には、その成長を実現するためにどれくらいの資本が必要なのかを考える必要があります。

JMEIでは、外部環境の変化を分析するとき、市場成長率、売上高成長率、利益率、必要投資額、ROICの順に考えます。

PEST分析で重要なのは変化の方向と速度

PEST分析では、外部環境の変化が企業にとって有利か不利かを考えます。

しかし、それだけでは十分ではありません。

変化の速度も重要です。

例えば、高齢化が進むことによって、ある医療機器の需要が増加するとします。

しかし、その需要が10年間かけてゆっくり増加するのか、3年間で急速に増加するのかによって、企業の対応は異なります。

急速な需要増加に対応するためには、設備投資や人員確保が必要になる場合があります。

一方、需要がゆっくり増加する場合には、既存設備を活用しながら段階的に対応できる可能性があります。

また、技術革新の速度が速い場合、現在の製品が短期間で陳腐化するリスクがあります。

したがって、PEST分析では、変化の方向だけでなく、変化の速度も確認する必要があります。

JMEI式PEST分析シート

ここまでの内容を、実際の企業分析に利用できる形へ整理しましょう。

シートは、基本情報、Political、Economic、Social、Technological、財務への影響、将来シナリオの七つの部分で構成します。

基本情報では、企業名、対象事業、対象製品・サービス、対象市場、対象地域、分析時点、分析対象期間を記入します。

Politicalでは、関連する医療制度、関連する法律・規制、今後想定される制度変更を整理し、企業への影響、売上高への影響、利益率への影響、重要度(高・中・低)を記入します。Economicでは、金利、為替、物価上昇、人件費上昇の影響と資金調達環境を整理し、売上高と利益率への影響、重要度を記入します。Socialでは、人口構造の変化、高齢化の影響、医療従事者不足の影響、患者ニーズの変化、医療提供体制の変化を整理し、市場成長率への影響と重要度を記入します。Technologicalでは、関連する新技術、既存技術の競争優位、代替技術の可能性、研究開発の必要性、新市場の可能性を整理し、既存事業への影響と重要度を記入します。

財務への影響では、売上高成長率、営業利益率、研究開発費、設備投資、ROIC、フリーキャッシュフローを記入します。将来シナリオでは、楽観、基本、悲観の各シナリオと、最も重要な外部環境の変化、最も大きな成長機会、最も大きなリスクを記入します。

この分析シートを利用することで、PEST分析を単なる環境分析ではなく、財務分析へつなげることができます。

PEST分析を実際の企業分析に活用する5つの手順

JMEIでは、PEST分析を次の5つの手順で行うことを推奨します。

1つ目の手順は、「分析対象の企業と事業を決める」です。最初に、どの企業のどの事業を分析するのかを明確にします。複数の事業を持つ企業では、事業ごとに外部環境の影響が異なる場合があります。

2つ目の手順は、「PESTの4つの要因を整理する」です。政治・制度、経済、社会、技術という4つの視点から、関連する外部環境を確認します。

3つ目の手順は、「重要な要因を選ぶ」です。すべての外部環境の変化が、企業へ大きな影響を与えるわけではありません。その企業にとって重要な要因を選ぶ必要があります。

4つ目の手順は、「財務への影響を考える」です。外部環境の変化が、売上高、利益率、投資額、ROICなどへどのような影響を与えるのかを考えます。

5つ目の手順は、「将来シナリオを作成する」です。将来の変化には不確実性があります。そのため、一つの予測だけでなく、複数のシナリオを作成します。

この5つの手順によって、PEST分析を実践的な企業分析へつなげることができます。

PEST分析で注意すべき3つの問題

PEST分析には、注意すべき点もあります。

第一に、ニュースを集めるだけで終わらないことです。

例えば、政府が医療DXを推進しているという情報を集めただけでは、企業分析として十分ではありません。

その政策によって、どの企業のどの事業に、どのような影響が生じるのかを考える必要があります。

第二に、社会的な必要性と企業の収益性を区別することです。

高齢化によって医療需要が増加しても、企業が十分な利益を確保できるとは限りません。

需要が増加する一方で、価格や費用、制度上の制約が存在する場合があります。

第三に、将来予測を事実として扱わないことです。

PEST分析では、将来の制度変更や技術革新を予想する場合があります。

しかし、将来の変化は確実ではありません。

そのため、確認できた事実と、分析上の仮定を区別する必要があります。

JMEIでは、PEST分析を行うとき、次の3つを明確にします。

確認できた事実、その事実から考えられる影響、将来についての仮定の3つです。

この区別が、分析の信頼性を高めます。

練習問題

問題1

PEST分析の4つの要因を挙げてください。

【答え】Political:政治・政策・制度。Economic:経済。Social:社会。Technological:技術。

問題2

診療報酬制度の変更は、PEST分析のどの要因に分類されるでしょうか。

【答え】Politicalです。医療制度や政策の変更に関係するためです。

問題3

為替レートの変化は、PEST分析のどの要因に分類されるでしょうか。

【答え】Economicです。為替は経済環境の要因です。

問題4

高齢化は、PEST分析のどの要因に分類されるでしょうか。

【答え】Socialです。人口構造の変化に関係するためです。

問題5

AI技術の進歩は、PEST分析のどの要因に分類されるでしょうか。

【答え】Technologicalです。技術革新に関係するためです。

問題6

ある医療機器メーカーが、年間1,000万ドルの部品を輸入しています。

為替レートが1ドル140円から150円になった場合、円換算した調達費用はいくら増加するでしょうか。

【答え】1億円です。1ドル140円の場合は14億円です。1ドル150円の場合は15億円です。したがって、1億円増加します。

問題7

ある医療DX市場の現在の市場規模は1,000億円です。

年間10%で成長すると仮定した場合、5年後の市場規模はいくらでしょうか。

【答え】約1,611億円です。1,000億円×1.10⁵=約1,611億円。

問題8

ある医療DX市場の市場規模は1,000億円です。A社の市場シェアは10%です。A社の売上高はいくらでしょうか。

【答え】100億円です。1,000億円×10%=100億円。

問題9

問題8の市場が10%成長し、A社の市場シェアが12%になった場合、A社の売上高はいくらでしょうか。

【答え】132億円です。市場規模は1,100億円です。1,100億円×12%=132億円。

問題10

PEST分析とファイブフォース分析の違いを説明してください。

【答え】PEST分析は、政治・制度、経済、社会、技術という企業を取り巻くマクロ環境を分析する方法です。ファイブフォース分析は、業界内部の競争構造を分析する方法です。

問題11

高齢化が進めば、すべての医療企業の売上高が増加するのでしょうか。

【答え】必ずしもそうではありません。高齢化によって需要が増加する製品もありますが、人口減少や医療制度、費用負担などによって需要が減少する製品もあるためです。

問題12

PEST分析を企業価値の評価へつなげるためには、どのような分析が必要でしょうか。

【答え】外部環境の変化が、市場成長率、売上高、利益率、設備投資、ROIC、将来のキャッシュフローへどのような影響を与えるのかを分析する必要があります。

JMEIの視点

JMEIでは、PEST分析を医療企業の長期的な成長可能性を理解するための重要な分析方法として位置づけています。

しかし、PEST分析を単なるニュースの整理として利用することは推奨しません。

例えば、ある企業について「高齢化によって市場が成長する」と分析したとします。

それだけでは、企業の成長性を十分に説明できません。

高齢化によって、どのような医療需要が増加するのか。

その需要に対して、どのような製品やサービスが必要になるのか。

その製品やサービスを、誰が購入するのか。価格はどのように決まるのか。企業はどれくらいの利益を確保できるのか。成長のために、どれくらいの投資が必要なのか。こうした問題を考える必要があります。

つまり、PEST分析で重要なのは、外部環境の変化そのものではありません。

外部環境の変化が、企業の経済的な成果へどのようにつながるのかを理解することです。

JMEIでは、PEST分析を次の4つの視点から活用します。

第一の視点:外部環境の変化を発見する

政策、経済、社会、技術の変化を確認します。

第二の視点:市場への影響を考える

外部環境の変化によって、市場規模や成長率がどのように変化するのかを分析します。

第三の視点:個別企業への影響を考える

市場全体の変化が、個別企業の売上高や競争優位へどのような影響を与えるのかを考えます。

第四の視点:財務への影響を分析する

営業利益率、ROIC、設備投資、キャッシュフローへの影響を確認します。

この4つを組み合わせることで、PEST分析を企業価値の分析へつなげることができます。

さらに、JMEIでは、外部環境の変化を成長機会とリスクの両面から考えます。

例えば、AI技術の進歩は、医療DX企業にとって成長機会になる可能性があります。

一方、既存のソフトウェア企業にとっては、現在の製品が代替されるリスクになる場合があります。

つまり、同じ技術革新でも、企業によって影響は異なります。

したがって、PEST分析では、社会全体の変化を理解した後に、個別企業の事業構造を確認することが重要です。

JMEI Medical Insight

医療企業の未来を予測するのではなく、未来の変化に対応できる企業を見つける

医療企業を分析するとき、私たちは将来の成長市場に注目します。

たとえば、高齢化、医療DX、人工知能、遺伝子治療、医療ロボット、在宅医療などです。

これらは、医療産業の将来を考えるうえで重要なテーマです。

しかし、ここで一つの問題があります。

「成長市場に存在する企業は、必ず成長するのか」という問題です。

答えは、必ずしもそうではありません。

例えば、ある医療DX市場が今後10年間で大きく成長するとします。

市場全体の売上高は増加するかもしれません。

しかし、その市場へ多数の企業が参入すれば、競争が激しくなる可能性があります。

また、価格競争によって利益率が低下する場合もあります。

さらに、技術革新によって、現在の製品が短期間で陳腐化する可能性もあります。

つまり、市場の成長と企業の成長は、同じではありません。

ここで重要になるのが、PEST分析とファイブフォース分析の組み合わせです。

PEST分析によって、外部環境の変化を理解します。

ファイブフォース分析によって、その変化が業界の競争構造へどのような影響を与えるのかを考えます。

そして、個別企業の競争優位を分析します。

この3つを組み合わせることで、成長市場の中で、どのような企業が持続的な利益を生み出せる可能性があるのかを考えることができます。

ここで、JMEIが重視する重要な考え方があります。

それは、「成長市場を見つけることと、優れた企業を見つけることは別の問題である」ということです。

例えば、ある医療AI市場が年間20%成長しているとします。

非常に魅力的な市場に見えるかもしれません。

しかし、その市場で事業を行う企業が、毎年多額の研究開発費を必要としている場合はどうでしょうか。

売上高は増加していても、利益を確保できない可能性があります。

また、競合企業が次々と参入すれば、販売価格が低下するかもしれません。

その結果、市場全体は成長していても、個別企業のROICが低下する可能性があります。

一方、成熟市場に存在する企業でも、安定した顧客基盤や優れた費用構造によって、高いキャッシュフローを生み出している場合があります。

したがって、企業分析では、市場成長率だけでなく、利益率や資本効率を考える必要があります。

ここで、PEST分析の本当の価値が見えてきます。

PEST分析は、将来を正確に予測するための方法ではありません。

将来の変化に対して、企業がどのような機会とリスクを持っているのかを整理するための方法です。

例えば、医療制度が変更された場合です。

ある企業にとっては、新しい市場が生まれる可能性があります。

一方、別の企業にとっては、既存事業の収益性が低下する可能性があります。

また、AI技術が進歩した場合です。

新しいサービスを開発できる企業にとっては、成長機会になるかもしれません。

一方、既存製品が代替される企業にとっては、競争上のリスクになる場合があります。

つまり、重要なのは外部環境の変化そのものではなく、その変化に対する企業の対応能力です。

ここで、JMEIが重視する4つの問いがあります。

第一に、その企業は外部環境の変化を正しく認識しているか。

例えば、技術革新によって市場構造が変化しているにもかかわらず、企業が従来の製品に依存し続けていれば、競争優位を失う可能性があります。

第二に、その企業は変化に対応するための技術や経営資源を持っているか。

新しい市場へ参入するためには、研究開発能力、人材、資金などが必要になる場合があります。

第三に、その企業は変化に対応するための投資を適切に行っているか。

成長市場へ参入しても、投資額に見合う利益を生み出せなければ、資本効率が低下する可能性があります。

第四に、その企業は変化の中でも持続的なキャッシュフローを生み出せるか。

これは、長期的な企業価値を考えるうえで重要な問題です。

例えば、ある医療機器メーカーが現在高い利益率を維持しているとします。

しかし、新しい技術によって市場が変化する可能性があります。

この場合、企業が現在の利益率を維持できるかどうかだけでなく、新しい技術へ対応できるかどうかを考える必要があります。

また、新技術へ対応するために多額の研究開発費が必要になる場合、その投資が将来のキャッシュフローへどのようにつながるのかを分析する必要があります。

ここで、企業の経営能力が重要になります。

外部環境の変化を早期に認識し、適切な投資を行い、新しい事業機会を獲得できる企業は、長期的な競争優位を維持できる可能性があります。

一方、外部環境の変化に対応できない企業では、現在の市場シェアや利益率が高くても、将来の収益性が低下する場合があります。

つまり、PEST分析によって理解すべきなのは、単に将来の市場規模ではありません。

企業が変化に対応できる能力を持っているかどうかです。

さらに、JMEIでは、外部環境の変化を分析するとき、経営者の資本配分能力にも注目します。

例えば、ある企業が成長市場へ参入するために、多額の設備投資を行うとします。

その投資によって売上高が増加しても、十分な利益を生み出せなければ、企業価値の増加につながらない可能性があります。

一方、既存事業のキャッシュフローを活用しながら、新しい技術へ段階的に投資できる企業では、財務リスクを抑えながら成長できる可能性があります。

したがって、PEST分析によって成長機会を発見した後には、その機会を獲得するために必要な資本を考える必要があります。

ここで、PEST分析とROIC分析がつながります。

PEST分析は、外部環境の変化を理解する方法です。

ROIC分析は、企業が投下資本に対してどれくらいの利益を生み出しているかを確認する方法です。

この2つを組み合わせることで、外部環境の変化が企業の資本効率へどのような影響を与えるのかを考えることができます。

さらに、ファイブフォース分析を組み合わせることで、成長市場の競争構造も理解できます。

つまり、PEST分析、ファイブフォース分析、競争優位分析、ROIC分析、キャッシュフロー分析という順につながる流れが形成されます。

この流れによって、社会や技術の変化を、企業の長期的な収益力の分析へつなげることができます。

ここで、医療産業特有の問題も考えておきましょう。

医療産業では、社会的な必要性が高いことと、企業の収益性が高いことは必ずしも一致しません。

例えば、高齢化によって在宅医療の必要性が高まったとします。

しかし、医療機関の経営環境が厳しければ、新しい医療機器の導入が進まない可能性があります。

また、医療DXによって業務効率化が期待されても、導入費用や運用負担が大きければ、医療機関が採用を見送る場合があります。

したがって、医療企業の成長性を分析するときには、社会的な必要性だけでなく、実際の支払い能力や制度上の条件を確認する必要があります。

JMEIでは、これを次のように整理します。社会的な必要性がある。実際の需要が存在する。顧客が支払える。企業が利益を確保できる。その利益を持続できる。この5つは、同じではありません。

社会的な必要性が高くても、事業として持続できない場合があります。

反対に、現在の市場規模が小さくても、技術革新や制度変更によって、将来大きな市場へ成長する可能性があります。

したがって、PEST分析では、社会的な必要性から企業の持続的な収益性までを、一つずつ確認することが重要です。

ここで、今回の講義の結論を整理しましょう。

PEST分析の本当の価値は、未来を正確に予測することではありません。外部環境の変化によって生まれる機会とリスクを理解し、その変化に対応できる企業を見つけることにあります。

JMEIでは、医療企業の長期的な競争力を評価するとき、現在の売上高や利益率だけでなく、将来の変化への対応能力を重視します。

そして、その対応能力が、持続的なROICとキャッシュフローにつながっているかを確認します。

これが、JMEIのPEST分析の基本的な考え方です。

今回のポイント

第67講で最も覚えてほしいのは、「PEST分析は、企業を取り巻く外部環境の変化を整理し、その変化が企業の将来の成長性と収益性へどのような影響を与えるのかを考える方法である」ということです。

PEST分析では、4つの要因を確認します。Political:政治・政策・制度。Economic:経済。Social:社会。Technological:技術。

医療企業では、特に医療制度、人口構造、医療従事者不足、技術革新などが重要になる場合があります。

ただし、外部環境の変化が、すべての医療企業に同じ影響を与えるわけではありません。

例えば、高齢化によって医療需要が増加しても、すべての医療企業の売上高が増加するとは限りません。

また、AI技術が進歩しても、すべての医療DX企業が高い利益を確保できるわけではありません。

重要なのは、外部環境の変化が個別企業へどのような経路で影響するのかを考えることです。

JMEIでは、外部環境の変化から市場構造の変化、企業の競争優位、売上高・利益率、ROIC・キャッシュフローへとつながる流れを重視します。

この流れによって、PEST分析を企業価値の分析へつなげることができます。

また、将来の変化には不確実性があります。

そのため、楽観、基本、悲観という複数のシナリオを作成することが重要です。

最後に、次の4つの問いを覚えておきましょう。

「この医療企業に最も大きな影響を与える外部環境の変化は何か」

「その変化は、企業にとって成長機会なのか、それともリスクなのか」

「その企業は、変化に対応するための経営資源を持っているか」

「その変化は、将来のROICとキャッシュフローへどのようにつながるのか」

この4つの問いによって、社会や経済のニュースを、医療企業の長期的な競争力の分析へつなげることができます。

次回予告

第68講|SWOT分析とは何か?――医療企業の強み・弱み・機会・脅威を整理する

今回は、PEST分析について学びました。

政治・制度、経済、社会、技術という4つの視点から、企業を取り巻く外部環境を分析する方法を理解しました。

また、PEST分析をファイブフォース分析やROIC分析と組み合わせることで、外部環境の変化を企業の長期的な収益力の分析へつなげる方法を学びました。

しかし、ここで一つの問題があります。

外部環境の変化によって、ある市場に新しい成長機会が生まれたとします。

その成長機会を、すべての企業が同じように獲得できるのでしょうか。

必ずしもそうではありません。

例えば、医療AI市場が成長するとします。

高度なAI技術を持つ企業にとっては、大きな成長機会になるかもしれません。

一方、研究開発能力や資金が不足している企業では、その成長機会を十分に活用できない可能性があります。

つまり、外部環境の変化だけでなく、企業自身の強みや弱みを理解する必要があります。

そこで次回は、SWOT分析(SWOT Analysis)

について学びます。

SWOT分析では、企業の内部環境と外部環境を4つの要因から整理します。

Strengths:強み。Weaknesses:弱み。Opportunities:機会。Threats:脅威。

次回は、医療機器メーカー、製薬企業、医療DX企業を例に、SWOT分析の基本を学びます。

さらに、PEST分析とSWOT分析の違い、ファイブフォース分析との関係、企業の強みを成長機会へ結びつける方法について考えます。

また、架空の医療企業を用いたケーススタディを通して、SWOT分析から経営戦略を考える方法を学びます。

そして、JMEIの企業分析で利用できる「医療企業SWOT分析シート」を作成します。

第68講では、「この医療企業は、どのような強みを持ち、どのような弱みを抱えているのか。そして、外部環境の変化をどのように成長機会へ変えることができるのか」という問いから、医療企業の競争優位と経営戦略を読み解いていきます。

JMEI|日本医療企業研究所 医療を変える企業と技術を読み解く。

本講座に関するご注意

本講座は、企業分析の考え方を学ぶための教育コンテンツです。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業には該当せず、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。講座内で企業を題材として扱う場合も、あくまで分析手法を説明するための例示です。

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