01JMEI Daily 02JMEIについて 03MEDIX50 04Global 10 05アカデミー 06研究・発信 07評価方法 08お知らせ お問い合わせ

医療企業分析アカデミー

第52講 利益成長率とは何か?――売上が伸びる会社より「利益が速く伸びる会社」が強い理由

JMEI 医療企業分析アカデミー 第52講 売上が伸びる会社より「利益が速く伸びる会社」が強い理由

はじめに

前回の第51講では、売上高成長率について学びました。売上が10%増えた、というだけでは企業の本当の成長力は分かりません。数量が増えたのか、価格が上がったのか、新製品が売れたのか、M&Aによって売上が加わったのか、為替によって円換算の売上が増えたのか。売上高成長率は、「なぜ伸びたのか」まで分解する必要がありました。

今回は、その一歩先へ進みます。テーマは利益成長率です。

例えば、2つの医療企業があったとします。A社は、売上高が1,000億円から1,100億円へと10%増え、営業利益は100億円から130億円へと30%増えました。B社は、売上高が1,000億円から1,200億円へと20%増えた一方で、営業利益は100億円から90億円へと10%減りました。

売上だけを見ると、20%成長しているB社の方が成長しているように見えます。しかし利益を見るとどうでしょうか。A社は売上10%増に対して営業利益30%増、B社は売上20%増なのに営業利益は減少しています。企業分析では、ここに大きな違いがあります。売上を増やしても、それ以上にコストが増えてしまえば、企業価値の向上にはつながらない可能性があります。一方、売上が10%増え、利益は30%増え、さらに営業キャッシュフローも増えている企業には、「売上の増加が、より大きな利益へ変わる仕組み」が存在する可能性があります。

今回は、利益成長率とは何か、売上成長率との違いは何か、そして粗利益、営業利益、固定費、変動費、営業レバレッジ、製品ミックスといった要素を押さえたうえで、医療企業特有の利益成長構造まで学びます。

利益成長率とは何か

利益成長率とは、前期と比べて企業の利益がどれくらい増えたか、あるいは減ったかを示す指標です。基本式は、利益成長率=(当期利益-前期利益)÷前期利益×100です。

簡単な例で確認しましょう。前年の営業利益が100億円、今年の営業利益が120億円であれば、増加額は20億円です。20億円÷100億円×100で、営業利益成長率は20%になります。

利益にはいくつか種類がある

「利益成長率」と言っても、どの利益を見るかによって意味が変わります。売上総利益、営業利益、税引前利益、純利益、EPS(1株当たり利益)などがあり、企業分析ではそれぞれを使い分けます。

初心者がまず見るなら、営業利益が分かりやすいでしょう。営業利益は、企業の本業から得られる利益を見るための代表的な指標です。したがって、売上高成長率と営業利益成長率を比較すると、売上の増加が本業の利益へどの程度つながっているかが見えてきます。

売上と利益を並べて見る

たとえば、A社は売上高成長率10%に対して営業利益成長率30%。B社は売上高成長率20%に対して営業利益成長率5%。C社は売上高成長率15%に対して営業利益成長率がマイナス10%だったとします。同じ「成長企業」でも、中身はまったく違います。

なぜ売上以上に利益が増えるのか

ここが今回の核心です。企業には固定費があります。本社費、工場の減価償却費、システム費、一定部分の人件費、研究施設費などです。売上が増えても、これらが同じ割合で増えるとは限りません。

数字で確認しましょう。売上高100億円、変動費60億円、固定費30億円で、営業利益は10億円とします。翌年、売上高が20%増えて120億円になり、変動費も売上と同じ20%増えて72億円になりました。固定費は30億円のままです。このとき営業利益は、120億円-72億円-30億円で18億円になります。

売上は100億円から120億円へと20%増えました。しかし営業利益は、10億円から18億円へと80%増えています。なぜでしょうか。固定費が大きく増えなかったからです。

これが営業レバレッジ

売上の増加以上に利益が大きく増える現象を理解するときに重要なのが、営業レバレッジです。固定費の比率が高い事業では、ある程度の売上規模を超えると、追加売上の多くが利益へ落ちることがあります。

逆方向にも働く

営業レバレッジは、良い方向だけに働くわけではありません。先ほどの会社で、売上高が100億円から80億円へ減少したとします。変動費は60億円から48億円へ減り、固定費は30億円のままなので、営業利益は80億円-48億円-30億円で2億円になります。売上は20%減っただけなのに、営業利益は10億円から2億円へと80%減りました。つまり営業レバレッジは、売上減少時には利益を大きく悪化させることがあります。

ケーススタディ① 医療機器メーカー

Medical Device Aは、前年の売上高が1,000億円、営業利益が100億円でした。今年は売上高が1,100億円、営業利益が140億円です。売上成長率は10%、営業利益成長率は40%です。

なぜこうなったのでしょうか。たとえば、新工場がすでに完成していて生産能力に余裕があり、販売数量が増えても固定費が大きく増えなかった場合、増えた売上の一部が効率よく利益へ転換されている可能性があります。

営業利益率も確認する

前年の営業利益率は、100億円÷1,000億円で10%でした。今年は140億円÷1,100億円で約12.7%です。営業利益率も上昇しています。つまり、売上が増えただけでなく、稼ぐ効率も改善しているということです。

利益成長は「率」と「額」の両方を見る

営業利益が1億円から2億円になれば100%増です。一方、営業利益が1,000億円から1,200億円になれば20%増です。成長率だけを見れば前者の方が大きいのですが、利益の増加額は前者が1億円、後者が200億円で、企業規模がまったく違います。だから利益成長率だけでなく、利益額も見ます。

小さい利益からの急成長に注意

前年の利益が1億円、今年の利益が10億円であれば、成長率は900%という非常に高い数字になります。しかし、翌年も900%成長できるでしょうか。ほぼ不可能です。低い基準からの反動で成長率が極端に高く見えることがあり、これをベース効果として考えることがあります。

赤字から黒字の場合はどうするか

前年の営業利益がマイナス20億円、今年がプラス10億円だった場合、通常の利益成長率を計算してもあまり意味がありません。重要なのは、赤字から黒字へ転換したという事実です。これを黒字転換と呼びます。

黒字転換では、その理由を見ることが大切です。たとえば医療DX企業で、前年の営業利益がマイナス30億円、今年がプラス5億円になったとします。顧客数が増えたのか、単価が上がったのか、解約率が下がったのか、開発費の伸びが鈍化したのか、営業効率が改善したのか。こうした構造変化を見る必要があります。

売上総利益を見る

利益成長を理解するには、売上総利益(Gross Profit)も重要です。売上高から売上原価を差し引いたもので、売上総利益率は売上総利益÷売上高で計算します。

ケーススタディ② 製品ミックス改善

Medical Bは、前年の売上高が1,000億円、売上総利益が400億円で、粗利益率は40%でした。今年は売上高が1,100億円、売上総利益が500億円で、粗利益率は約45.5%です。売上は10%増でしたが、売上総利益は25%増えています。

なぜでしょうか。高付加価値製品の販売比率が増えた可能性があります。

医療機器では製品ミックスが重要

医療機器には、低価格の標準製品もあれば、高価格のプレミアム製品、高機能カテーテル、ロボット支援機器、AI搭載機器などもあります。高付加価値製品の比率が高まると、売上以上に粗利益が伸びることがあります。

製薬企業の利益成長

製薬企業では、新薬の売上拡大によって利益が大きく伸びる場合があります。薬が承認されるまでには、研究、前臨床、臨床試験、承認申請などの段階があり、巨額の費用がかかります。しかし承認後に売上が拡大すると、追加販売による利益貢献が大きくなる場合があります。

ケーススタディ③ 新薬の成長

Pharma Cは、前年の売上高が5,000億円、営業利益が800億円でした。今年は売上高が5,500億円、営業利益が1,100億円です。売上は10%増、営業利益は37.5%増です。新薬の売上が急増し、粗利益率が高く、既存の販売網を活用できているなら、新薬の成長が利益成長を加速させている可能性があります。

研究開発費を削れば利益は増える、という落とし穴

ここで注意が必要です。製薬企業が研究開発費を1,000億円から700億円へ削減し、営業利益が300億円増えたとします。利益成長だ、素晴らしい、と考えてよいでしょうか。必ずしもそうではありません。将来の新薬候補が減る可能性があります。短期利益を増やすために、未来を削っていないか。医療企業では特に重要な視点です。

「良い利益成長」と「注意が必要な利益成長」

良い利益成長の例としては、売上の増加、数量の増加、高付加価値製品の増加、生産効率の改善、規模の経済、デジタル化、調達効率の改善などがあります。一方で、悪いと断定はできないものの注意が必要な利益成長には、研究開発費の削減、必要な人員の削減、設備保守の延期、広告・営業活動の過度な削減、一時的なコスト削減などがあります。利益が増えた理由まで確認します。

ケーススタディ④ 2つの30%利益成長

A社の営業利益は100億円から130億円へ、30%増えました。理由は、売上が15%増え、高利益率製品が拡大し、生産効率が改善したことです。B社の営業利益も100億円から130億円へ、同じく30%増えました。しかし理由は、売上が横ばいのまま、研究開発費を30億円削減したことでした。数字だけなら同じ30%成長ですが、将来性は大きく異なる可能性があります。

診断企業の利益成長

診断企業には、利益成長を考えるうえで興味深いビジネスモデルがあります。検査装置を販売・設置すると、Installed Base(設置台数)が増えます。すると検査件数が増え、試薬や消耗品が売れます。試薬の利益率が高い場合、試薬売上の拡大によって、売上以上に利益が増えることがあります。

ケーススタディ⑤ 診断企業

Diagnostics Dは、前年の装置売上が300億円、試薬売上が500億円、営業利益が120億円でした。今年は装置売上が330億円、試薬売上が650億円、営業利益が180億円です。売上高は800億円から980億円へ22.5%増え、営業利益は120億円から180億円へ50%増えました。継続収益である試薬の構成比が高まったことが、利益成長を押し上げている可能性があります。

医療DXと利益成長

医療DXやSaaS型企業では、営業レバレッジが強く働く可能性があります。システム開発には最初に大きな費用がかかりますが、1,000施設が使うシステムを1,100施設が使うようになっても、開発費が10%増えるとは限りません。

ケーススタディ⑥ 医療SaaS

Medical SaaS Eは、前年の売上が20億円、営業利益が1億円でした。今年は売上が30億円、営業利益が5億円です。売上は50%増、営業利益は400%増です。顧客数が増え、開発基盤は共通で、追加顧客に対する限界コストが比較的小さい。こうした場合、規模拡大によって利益率が上昇する可能性があります。

ただしSaaSでも安心できない

売上を増やすために営業人員を大量に採用する、広告費が急増する、顧客獲得コストが上昇する、解約率が上昇する。そうなれば利益は増えません。したがって、売上成長率、粗利益率、営業利益率、顧客獲得コスト、解約率などを一緒に見ます。

病院では利益成長が難しいことがある

病院では、患者数が増えれば、そのまま大幅な利益増になるとは限りません。患者数が増えれば、看護師の増員、医師の増員、医療材料や光熱費の増加が起こり、場合によっては病床増設や設備投資も必要になります。つまり、売上が増えるとともに、コストも増えやすいのです。

ケーススタディ⑦ 病院

Hospital Fは、医業収益が100億円から110億円へ10%増えました。しかし医業利益は5億円から5.2億円へ、4%の増加にとどまりました。なぜ利益があまり増えないのでしょうか。人件費、医療材料費、委託費、光熱費などが増えた可能性があります。病院では、売上成長だけでなく、費用構造を見ることが重要です。

介護・福祉も同じ

介護・福祉は、人がサービスを提供する労働集約型事業です。利用者が増えれば売上は増えますが、職員も増やす必要があります。夜勤体制、支援員、看護師、サービス管理責任者などです。そのため、売上以上に利益が伸びにくい場合があります。

ただし「空床を埋める」場合は違う

定員20名のところに利用者が14名おり、職員配置はすでに20名対応が可能だったとします。ここから利用者が18名になり、職員数はほぼ同じ。この場合、追加売上の多くが利益へつながる可能性があります。これも営業レバレッジです。

ケーススタディ⑧ グループホーム

あるグループホームでは、前年の利用者が14名、売上が5,000万円、営業利益が200万円でした。今年は利用者が18名、売上が6,300万円、営業利益が700万円です。売上は26%増、営業利益は250%増です。職員配置や家賃などの固定費が大きく変わらなければ、利用率の改善によって利益が大きく伸びる場合があります。

利益成長率と利益率は違う

ここは混同しやすいところです。利益成長率は、利益が前年から何%増えたかを示します。利益率は、売上のうち何%が利益として残ったかを示します。例えば、売上が1,000億円、営業利益が100億円なら、営業利益率は10%です。翌年、売上が1,100億円、営業利益が132億円になれば、営業利益成長率は32%、営業利益率は12%となります。

理想的な形の一つ

売上が増え、粗利益率が改善し、営業利益率も改善し、営業利益は売上以上に増え、営業CFも増える。このような企業では、成長と収益性改善が同時に進んでいる可能性があります。

しかし利益成長だけでも足りない

営業利益が30%増えているのに、営業CFが20%減っているとしたら、なぜでしょうか。売掛金が急増した、在庫が急増した、一時的な会計利益だった、などが考えられます。だから、利益成長だけでなく、営業CFまで確認します。

EPS成長も重要

株主の視点では、1株当たり利益であるEPSも重要です。純利益が20%増えても、株式数が50%増えたら、1株当たり利益は増えない可能性があります。

ケーススタディ⑨ 増資とEPS

前年の純利益が100億円、株式数が1億株であれば、EPSは100円です。今年は純利益が120億円と20%増えました。しかし増資によって株式数が1.5億株になったため、EPSは80円です。会社全体の利益は増えましたが、1株当たり利益は減っています。

利益成長を3段階で見る

JMEIでは、利益成長を、企業全体、キャッシュ、1株当たりの3段階で見ることを重視します。営業利益は増えたか、営業CFは増えたか、EPSは増えたか。この3つがそろっているかを確認します。

CAGRでも見る

利益も、1年だけでなく、3年、5年で見ます。例えば、営業利益が5年前の500億円から現在の800億円になったとします。5年間で60%増であり、この場合のCAGR(年平均成長率)はおよそ9.9%です。単年度ではなく、継続的な利益成長力を確認できます。

利益成長と市場シェア

売上が市場より速く伸び、さらに利益は売上以上に伸びる。これは強い組み合わせです。市場シェアの拡大、規模の経済、高付加価値製品、価格決定力などが同時に働いている可能性があります。

ケーススタディ⑩ 成長の質

市場成長率が5%だとします。A社は、売上成長率12%、営業利益成長率20%、営業CF成長率18%でした。B社は、売上成長率15%、営業利益成長率3%、営業CFはマイナス10%でした。表面的には、B社の方が売上成長率は高く見えます。しかし、A社の方が成長の質が高い可能性があります。

利益成長を見るときの順番

まず売上高成長率、次に売上総利益成長率、次に営業利益成長率、次に営業利益率、次に営業CF成長率、次にEPS成長率、そして3年・5年CAGRを見ます。この順番で見ると、売上が利益、キャッシュ、1株当たり価値へ変わっているかを追いやすくなります。

JMEI式「利益成長の階段」

売上が増え、粗利益が増え、営業利益が増え、営業利益率が上がり、営業CFが増え、FCFが増え、EPSが増え、再投資余力が増え、さらに成長する。優れた企業では、この循環が作られていることがあります。

利益成長の落とし穴

利益が増えたら、次の5つを確認します。売上増によるものか、利益率改善によるものか、一時的な利益か、コスト削減によるものか、会計上の特殊要因か、です。特に、土地売却、子会社売却、補助金、一時的な評価益などによる純利益の増加は、本業の利益成長とは分けて考えます。

医療企業では研究開発費を必ず見る

医療企業では、利益成長と同時に研究開発費を見ることが重要です。営業利益が30%増え、研究開発費が40%減っているなら、利益成長の質を確認します。一方、営業利益が20%増え、研究開発費も15%増えているなら、現在の利益を増やしながら未来への投資も増やしている可能性があります。

研究開発効率を見る

研究開発費を増やせば必ず良い、というわけでもありません。重要なのは、その研究開発が、新薬、新しい医療機器、新しい診断技術、新しい医療DXサービスへつながっているかどうかです。利益成長と、未来への再投資。その両方を見る必要があります。

JMEI式「利益成長を見る15の質問」

JMEIでは、利益成長を見るときに次の15の質問を投げかけます。売上高は何%成長したか。営業利益は何%成長したか。利益成長率は売上成長率を上回っているか。粗利益率は上がっているか。営業利益率は上がっているか。数量増加による成長か。価格や製品ミックス改善による成長か。固定費効率は改善しているか。営業レバレッジは働いているか。コスト削減だけによる利益成長ではないか。研究開発費を過度に削っていないか。営業CFも増えているか。EPSも増えているか。3年・5年CAGRはどうか。そして最後に、この利益成長は5年後も続けられるか。

練習問題

問題1 前年営業利益100億円、今年130億円の場合、営業利益成長率はいくらでしょうか。

【答え】30%です。

問題2 売上高が10%増え、営業利益が30%増えた場合、何が考えられますか。

【答え】固定費効率の改善、営業レバレッジ、高付加価値製品の増加、粗利益率改善などにより、売上以上に利益が伸びている可能性があります。

問題3 営業レバレッジとは何でしょうか。

【答え】固定費の存在などにより、売上の変化以上に営業利益が大きく変化する性質です。売上増加時には利益を大きく押し上げる一方、売上減少時には利益が大きく減ることもあります。

問題4 利益成長率だけでなく、利益率を見る理由は何でしょうか。

【答え】売上に対してどれだけ効率よく利益を残せるようになったかを確認するためです。

問題5 製薬企業の利益が増えたとき、特に確認したい費用は何でしょうか。

【答え】研究開発費です。研究開発費削減によって短期利益だけが増えていないかを確認します。

問題6 診断企業で売上以上に利益が伸びる要因として何が考えられますか。

【答え】Installed Baseの拡大によって、高利益率の試薬や消耗品などの継続収益が増えている可能性があります。

問題7 医療DX企業で営業レバレッジが働く理由は何でしょうか。

【答え】共通システムや開発基盤を多くの顧客が利用でき、顧客増加に対してコストが同じ割合では増えない場合があるためです。

問題8 前年が赤字、今年が黒字の場合、通常の利益成長率を計算すればよいでしょうか。

【答え】通常の成長率では意味を捉えにくいため、黒字転換として評価し、何が収益構造を変えたのかを確認します。

問題9 営業利益が増えているのに営業CFが減っている場合、何を確認しますか。

【答え】売掛金、在庫、運転資本、一時的な会計要因などを確認します。

問題10 利益成長分析で最後に考えることは何でしょうか。

【答え】「この利益成長は、将来への投資を続けながら、3年後、5年後にも再現できるのか」です。

総合ケーススタディ――どの企業の利益成長が強いか

3社を比べます。A Pharmaは、売上成長率が+10%、営業利益成長率が+30%、研究開発費が+15%、営業CFが+25%です。B Medical Deviceは、売上成長率が+15%、営業利益成長率が+20%、粗利益率は上昇、営業CFは+18%です。C Medicalは、売上成長率が0%、営業利益成長率が+40%、研究開発費が-50%、営業CFが+5%です。

数字だけを見ると、C社の利益成長率40%が最も高く見えます。しかし、中身を見る必要があります。

A社は、売上も利益も増え、研究開発も増やし、営業CFも増えています。現在と未来の両方へ資金を回しています。B社は、売上が15%増え、利益が20%増え、粗利益率が改善し、営業CFも増えています。事業効率が改善している可能性があります。C社は、利益が40%増えましたが、売上は横ばいで、研究開発費を半減しています。短期利益は増えましたが、未来の製品開発力が低下する可能性があります。

どの会社が一番良いかは、これだけでは決められません。しかし、利益成長率40%という数字だけで、C社が最も優れているとは言えません。これが、利益成長の「質」を見るということです。

JMEIの視点

JMEIでは、利益成長率を単なる前年比の数字として見ません。重要なのは、「利益がなぜ増えたのか」です。売上が増えた、高付加価値製品が増えた、粗利益率が改善した、固定費効率が改善した、生産性が上がった。これらによって利益が増え、増えた利益から研究開発、設備投資、人材、M&A、デジタル化へ再投資する。その投資が、次の売上を作り、次の利益を作り、次のキャッシュを作る。この循環を持つ企業を、JMEIでは重視します。

利益とは、企業活動の終着点ではありません。次の成長を作るための原資です。だから、利益成長を見るときは、「いくら増えたか」だけではなく、「増えた利益を何へ使うのか」まで見る。これが、企業分析です。

JMEI Medical Insight

医療企業において、利益最大化だけを目標にすることには注意が必要です。製薬企業が研究開発を止めれば、短期的には利益が増えるかもしれません。病院が必要な職員配置を極端に削れば、短期的には利益が増えるかもしれません。介護施設が研修や設備更新を削れば、短期的には利益が増えるかもしれません。しかし、医療安全、サービス品質、職員定着、研究開発力、患者価値が低下すれば、長期的な企業価値は失われます。

だからJMEIでは、医療企業の利益成長を、Profit Growthだけではなく、Sustainable Profit Growth(持続可能な利益成長)として考えます。売上が増え、利益が増え、キャッシュが増える。そのキャッシュを、研究、技術、人材、設備、患者サービスへ再投資する。その結果、医療価値が高まり、さらに売上と利益が増える。この循環こそ、医療企業における理想的な利益成長です。

医療価値を削って利益を作る企業ではなく、医療価値を高めることで利益が増える企業。JMEIが探したいのは、そのような企業です。

今回のポイント

第52講で最も覚えてほしいのは、「売上成長率と利益成長率を必ず並べて見る」ということです。売上が10%増えて利益が30%増えたなら、なぜか。固定費効率、製品ミックス、価格、規模の経済、営業レバレッジが考えられます。売上が20%増えて利益が5%しか増えなかったなら、なぜか。原価上昇、人件費増加、販売費増加、研究開発費増加、低利益率製品の増加が考えられます。数字の裏側を考えます。

さらに、利益率、営業CF、FCF、EPS、研究開発費、3年・5年CAGRまで確認します。そして最後に、「この利益成長は、未来への投資を削らずに続けられるのか?」と考えます。利益成長とは、単に今年の利益が増えることではありません。未来の利益を生み出す力まで、同時に強くなっていること。それが、質の高い利益成長なのです。

次回予告

第53講 営業レバレッジを理解する――売上10%増で利益が30%増える会社の仕組み

今回は、利益成長率を学びました。その中で、何度も登場した言葉があります。営業レバレッジです。売上が10%増えたのに営業利益は30%増えた。なぜでしょうか。反対に、売上が10%減っただけなのに、営業利益が50%減る。なぜでしょうか。その答えの一つが、固定費と変動費です。

次回は、固定費、変動費、限界利益、損益分岐点、営業レバレッジを一つにつなげます。医療機器メーカー、製薬企業、診断企業、医療DX、病院、介護・福祉。同じ医療産業でも、固定費構造はまったく違います。なぜSaaS企業は、一定規模を超えると利益が急増することがあるのか。なぜ病院や介護では、売上が増えても利益が急増しにくい場合があるのか。なぜ大型工場を持つ医療機器企業では、売上減少時に利益が急減することがあるのか。第53講では、企業の「利益の増え方」を決める構造、営業レバレッジを、初心者にも分かるように数字を使って解説します。

本講座に関するご注意

本講座は、企業分析の考え方を学ぶための教育コンテンツです。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業には該当せず、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。講座内で企業を題材として扱う場合も、あくまで分析手法を説明するための例示です。

講座に関するご注意

本講座は、企業分析の考え方を学ぶための教育コンテンツです。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業には該当せず、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記事中で企業名に言及する場合も、分析手法を説明するための例示であり、投資を勧めるものではありません。

受講による学習成果、および受講者の投資成果を保証するものではありません。投資その他の意思決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

一覧へ戻る

免責事項

当サイトに掲載する分析・レポート・指標・講座等の内容は、医療企業および医療産業に対する理解を深めることを目的とした調査・研究および教育目的の情報提供です。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業その他の登録業務には該当せず、特定の有価証券の取得・売却を勧誘・推奨するものではありません。投資その他の意思決定は、利用者ご自身の判断と責任において行ってください。

掲載内容は作成時点で入手可能な公開情報等に基づいて作成していますが、その正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。また、掲載内容は予告なく変更・削除される場合があります。当サイトの情報の利用により生じたいかなる損害についても、当研究所は責任を負いかねます。

当サイトで言及する企業名・製品名・サービス名は、各社の商標または登録商標です。当研究所は、分析対象企業からの依頼に基づく評価の作成・掲載は行いません。