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医療企業分析アカデミー

第41講 利益率を分解する――粗利益率・営業利益率・純利益率から「どこで稼ぐ会社か」を見抜く

JMEI 医療企業分析アカデミー 第41講 粗利益率・営業利益率・純利益率から「どこで稼ぐ会社か」を見抜く

第40講では、PSR、EV/Salesについて学びました。そして、「売上高が同じでも、売上の価値は同じではない」という重要な考え方を確認しました。例えば、売上高100億円、A社の粗利益80億円、B社の粗利益20億円。売上高だけを見れば、どちらも同じ100億円です。しかし、その100億円から企業に残る利益は大きく違います。つまり企業分析では、「いくら売ったか」だけでなく、「売った結果、いくら残ったか」を見る必要があります。そこで今回学ぶのが、利益率です。決算書を見ると、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、純利益と、いくつもの「利益」が登場します。初心者の方は、「利益は一つではないの?」と思うかもしれません。しかし、この複数の利益こそ、企業のどこが強く、どこに問題があるのかを教えてくれます。例えば、粗利益率は高いのに営業利益率が低い企業、営業利益率は高いのに純利益率が低い企業、売上高は急増しているのに営業利益率が低下している企業。それぞれ理由が違います。製薬企業なら研究開発費、医療機器企業なら製造原価や販売網、医療DX企業ならソフトウェア開発費や顧客獲得費用、医療サービス企業なら人件費などが利益率を左右します。今回の目的は、利益率の数字を暗記することではありません。損益計算書を上から下へ読みながら、「この会社はどこで稼ぎ、どこでお金を使っているのか」を見抜けるようになることです。

損益計算書という「川」と、粗利益率

企業には最初に、売上高が入ってきます。そこから、商品の原価、人件費、研究開発費、営業費用、利息、税金などが引かれていきます。最後に残るのが、純利益です。イメージすると、売上高から売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、純利益という流れです。各段階で、売上高に対してどれくらい利益が残っているかを見ることで、企業の収益構造が分かります。

最初は売上総利益です。売上総利益は、売上高-売上原価です。一般には「粗利益」とも呼ばれます。例えば、医療機器企業の売上高1,000億円、売上原価600億円なら、売上総利益は1,000-600=400億円。粗利益率=売上総利益÷売上高で計算すると、400÷1,000=40%。100円売ったとき、売上原価を引いた後に40円残るというイメージです。では粗利益率が高い企業は良い会社でしょうか。必ずしもそうとは限りません。しかし、製品やサービスそのものの収益性を見る重要な指標になります。

2つの医療機器企業を比較してみましょう。A Medical Deviceは、売上高1,000億円、売上原価700億円。B Medical Deviceは、売上高1,000億円、売上原価400億円。粗利益はA社300億円、B社600億円。粗利益率はA社30%、B社60%。売上高は同じですが、製品を売った後に残る利益は大きく違います。なぜ違うのでしょうか。いくつもの可能性があります。高付加価値製品、特許、ブランド、独自技術、製造効率、価格決定力、消耗品ビジネスなどです。価格決定力、Pricing Powerとは、競争相手より高い価格でも顧客が購入してくれる力です。医療では価格だけでは決まりません。カテーテル、検査装置、手術機器、診断薬。医師や病院は、単純に一番安い製品だけを選ぶとは限りません。重要なのは、安全性、性能、使いやすさ、医師の慣れ、エビデンス、供給安定性、サポートです。これらが価格決定力につながる可能性があります。高い価格決定力から高い粗利益率、高い収益性につながることがあります。

製薬企業ではどうでしょうか。新薬には、研究開発、臨床試験、承認という大きなハードルがあります。一度上市すると、製造そのものの原価に比べ、販売価格が大きい製品もあります。そのため製薬企業では高い粗利益率が見られる場合があります。しかし注意が必要です。高粗利益率=高営業利益率とは限りません。なぜなら、研究開発費、営業費、管理費が大きいからです。

営業利益率と、費用の中身を見る

次に営業利益です。営業利益は、本業からどれだけ利益を生み出したかを見る代表的な利益です。簡単にすると、営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費です。販売費及び一般管理費は、販管費と呼ばれます。例えば、営業人件費、広告宣伝費、本社費用、研究開発費、物流関連費などが含まれる場合があります。営業利益率=営業利益÷売上高です。例えば、売上高1,000億円、売上総利益600億円、販管費400億円なら、営業利益は200億円、営業利益率は20%。100円売った結果、本業として20円の営業利益が残るというイメージです。

粗利益率は同じでも違う会社のケーススタディを見てみましょう。A Pharmaは、売上高1,000億円、粗利益700億円、販管費等400億円。B Pharmaは、売上高1,000億円、粗利益700億円、販管費等600億円。粗利益率は両社とも70%。しかし営業利益はA社300億円、B社100億円。営業利益率はA社30%、B社10%。なぜ差が出たのでしょうか。売上原価ではありません、粗利益率は同じだからです。差は販管費です。つまり、粗利益を作った後、どれだけ費用を使っているかに違いがあります。ではB社は経営効率が悪いのでしょうか。ここでも、すぐには判断しません。B社の費用の中身を見ると、研究開発費300億円、A社は100億円。B社は将来へ投資している可能性があります。現在利益と将来利益のバランスは、医療企業分析では非常に重要です。研究開発費を減らせば短期的な営業利益率は上がります。しかし、新薬候補、新製品、新技術が減るかもしれません。したがって、営業利益率が高い会社=必ず優れた会社ではありません。重要なのは「なぜその利益率なのか」、これがJMEIの基本姿勢です。

研究開発型製薬企業のケーススタディを見てみましょう。A Pharmaは、売上高5,000億円、粗利益率75%、営業利益率25%、研究開発費率12%。B Pharmaは、売上高5,000億円、粗利益率75%、営業利益率12%、研究開発費率25%。現在の営業利益率はA社が高い。しかし5年後は?B社に、複数の有望な第3相試験、新規モダリティ、大型市場候補があるなら、評価は変わる可能性があります。利益率は「現在」と「未来」を分けて考えることが大切です。

経常利益・税引前利益・純利益、そして負債の影響

次に経常利益です。日本企業の決算でよく登場します。経常利益とは、営業利益に、営業外収益、営業外費用を加減した利益です。代表例は、受取利息、支払利息、持分法投資損益、為替関連損益などです。例えば、営業利益200億円、支払利息30億円、その他営業外収支プラス10億円なら、経常利益180億円。営業利益との差を見ると、本業は儲かっているのに、借金の利息負担が重い、ということも分かります。

同じ営業利益の2社のケーススタディを見てみましょう。A Healthcareは、営業利益100億円、有利子負債ほぼゼロ。B Healthcareは、営業利益100億円、有利子負債1,500億円。営業利益だけなら同じですが、B社には大きな支払利息が発生する可能性があります。最終的に株主へ残る利益は違ってきます。第39講につながります。EV/EBITDAで、負債を見る重要性を学びました。利益率分析でも負債は重要です。営業利益率だけでは、財務負担までは分かりません。

次に税引前利益です。経常利益などから、特別利益、特別損失などを反映します。例えば、工場売却益、子会社売却益、減損損失、訴訟関連損失。こうした一時的要因が含まれることがあります。純利益急増のケーススタディを見てみましょう。ある医療企業の前年純利益100億円、今年250億円。素晴らしい成長でしょうか。まず中身を確認します。本業の営業利益は前年180億円、今年185億円でほぼ横ばいです。今年、子会社売却益200億円。純利益急増の理由は本業成長ではありません。ここが利益率分析の重要なところです。最終利益だけを見ると、企業の本当の変化を見誤ることがあります。

次に純利益です。税金などを差し引いた後、最終的に残る利益です。純利益率=純利益÷売上高です。例えば、売上高1,000億円、純利益100億円なら、純利益率10%。売上100円から最終的に10円残ったというイメージです。ここまでを一本につなぐと、売上高1,000億円、売上原価400億円、売上総利益600億円、販管費400億円、営業利益200億円、営業外収支マイナス20億円、経常利益180億円、特別損失30億円、税引前利益150億円、税金50億円、純利益100億円。利益率は、粗利益率60%、営業利益率20%、純利益率10%。これだけで企業の構造が見えてきます。100円売る、60円の粗利益、20円の営業利益、10円の純利益。どこで利益が減っているでしょうか。粗利益から営業利益まで、40円減っています。何に使っているのでしょうか。研究開発、営業、人件費、管理費などです。営業利益から純利益まで、さらに10円減っています。何が原因でしょうか。利息、一時損失、税金などです。損益計算書は企業の「利益の地図」と考えると分かりやすいでしょう。

業種による構造の違いと、3つの比較軸

医療企業では業種によって構造が違います。ここが重要です。製薬企業は、比較的高い粗利益率、大きな研究開発費、特許切れリスクがあります。医療機器企業は、製造原価、研究開発費、販売網、消耗品比率があります。診断企業は、装置販売、試薬、消耗品、保守があります。医療DXは、高粗利益率になりやすい一方、開発費、営業費、顧客獲得費があります。介護・医療サービスは、人件費負担が大きい。同じ利益率を業種横断で単純比較しないことが重要です。

製薬と介護のケーススタディを見てみましょう。A Pharmaは営業利益率25%、B Careは営業利益率8%。A社が圧倒的に優秀でしょうか。そうとは限りません。ビジネスモデルが違います。製薬は知的財産型、介護は労働集約型。利益率の構造が違います。したがって、同業他社との比較が基本です。

利益率を見る3つの比較があります。第一に過去との比較です。例えば、営業利益率が3年前10%、2年前12%、前年15%、今年18%なら改善傾向があります。第二に同業比較です。自社18%、競合A12%、競合B14%。なぜ高いのか、価格決定力、製品構成、コスト構造などを調べます。第三に将来予想です。現在18%、3年後会社目標25%。どうやって改善するのか、ここが企業分析です。利益率改善の方法には、値上げ、高利益製品増加、製造効率化、研究開発生産性向上、営業効率改善、規模拡大、事業再編があります。

利益率改善企業のケーススタディを見てみましょう。JMEI Deviceは、売上高1,000億円、営業利益率8%。経営改革として、低採算製品撤退、高利益消耗品拡大、工場自動化、海外直販強化を行いました。3年後、売上高1,300億円、営業利益率15%。営業利益は以前80億円、3年後195億円。売上は30%増、しかし営業利益は80億円から195億円、約2.4倍です。なぜでしょうか。売上成長+利益率改善が同時に起きたからです。これを「営業レバレッジ」と考えることができます。売上が増える以上の速度で、利益が増える構造です。

医療DXでは特に重要です。ソフトウェア開発費、本社費など固定費が大きい。初期、売上50億円、固定費70億円、赤字。売上拡大、売上200億円、固定費100億円。売上は4倍、固定費は4倍にならない。利益率が急改善する可能性があります。医療SaaSのケーススタディを見てみましょう。1年目、売上50億円、営業利益マイナス20億円。3年目、売上150億円、営業利益10億円。5年目、売上300億円、営業利益60億円。営業利益率は1年目赤字、3年目約7%、5年目20%。これがスケールです。売上拡大によって、固定費負担が相対的に低下しています。しかし逆もあります。売上が増えるたび、人員も同じ割合で増やす必要がある事業、例えば一部の医療サービスでは、利用者増加、スタッフ増員、売上増加、人件費増加で利益率がなかなか上がらない場合があります。これがビジネスモデルの違いです。売上成長率だけでは見えません。

製品ミックスと、利益率が見せる警報

粗利益率の変化は重要な警報になります。例えば、前年60%、今年52%。なぜ低下したのでしょうか。値下げ、原材料高、製品ミックス悪化、競争激化、仕入価格上昇。原因を調べます。利益率変化には、企業の競争環境が表れることがあります。医療機器企業の異変のケーススタディを見てみましょう。売上成長率+15%、一見好調です。しかし粗利益率は前年55%、今年45%。営業利益率は前年20%、今年12%。何が起きているのでしょうか。売上は増えている、しかし収益性は悪化しています。調べると、競合参入、値下げ、低利益製品増加。売上だけ見れば好決算、利益率まで見ると、競争力低下の可能性が見えてきます。

反対のケースもあります。売上成長率+5%、地味に見えます。しかし、粗利益率50%から58%、営業利益率10%から18%。高利益製品へシフトしているかもしれません。売上成長率だけで企業を判断しない、利益率変化を見ることが重要です。

次に「製品ミックス」です。企業分析でよく出る言葉です。Product Mixとは、売れている製品の組み合わせです。例えば、低利益製品粗利益率20%、高利益製品粗利益率80%。販売台数は同じ、しかし高利益製品の割合が増えた。すると会社全体の粗利益率が上昇します。医療企業ではよくあります。装置本体は利益率低め、専用消耗品は利益率高め。装置を先に普及させ、その後消耗品販売が増える。時間とともに利益率改善する可能性があります。これは診断企業などを見る重要な視点です。

装置と試薬のケーススタディを見てみましょう。A Diagnosticsは、売上500億円、内訳は装置300億円、試薬200億円。翌年、売上550億円、装置250億円、試薬300億円。売上成長10%。しかし高利益試薬比率が上昇、粗利益率が45%から55%へ。営業利益は売上以上に伸びる可能性があります。利益率を見るとビジネスモデルが見える、これが今回の核心です。

利益率が高い会社・低い会社を見るときの注意

利益率が高い会社を見るときの注意として、高利益率だから安心でもありません。なぜ高いのでしょうか。研究開発費を削っている、広告費を削っている、設備保守を先送り、人員不足。短期的に利益率が上がっているだけかもしれません。持続可能性を見る必要があります。逆に利益率低下は必ず悪いとも限りません。将来成長のため、研究開発増加、海外進出、新工場、営業人員増加。戦略的投資かもしれません。利益率は「結果」、その原因を見るのが企業分析です。

JMEI式利益率分析は、売上成長率を見る、粗利益率を見る、粗利益率の変化を見る、営業利益率を見る、販管費の中身を見る、研究開発費を見る、営業利益率の変化を見る、営業利益と経常利益の差を見る、一時損益を見る、純利益率を見る、FCFにつながっているかを見るという流れです。

医療企業の利益率を見るときには、次の15項目を確認しましょう。売上高はいくらか。売上成長率は何%か。粗利益率は何%か。粗利益率は上昇しているか。営業利益率は何%か。営業利益率は上昇しているか。粗利益率と営業利益率の差はなぜ生じているか。研究開発費率は何%か。販管費率は改善しているか。営業利益と経常利益に大きな差はあるか。一時利益・一時損失はないか。純利益率は何%か。同業他社より利益率が高い理由・低い理由は何か。将来利益率は改善する可能性があるか。利益はFCFへ転換されているか。最後に、「この会社は、売上100円から、どのようにして最終的な利益を残しているのか?」と考えます。

練習問題

問題1 売上総利益とは何でしょうか。

【答え】売上高から売上原価を差し引いた利益です。

問題2 売上高1,000億円、売上原価600億円。粗利益率はいくらでしょうか。

【答え】売上総利益は400億円。粗利益率は40%です。

問題3 売上高1,000億円、営業利益150億円。営業利益率はいくらでしょうか。

【答え】15%です。

問題4 粗利益率70%、営業利益率10%の企業では、どこを確認すべきでしょうか。

【答え】販管費や研究開発費など、粗利益から営業利益までの間に発生している費用の中身を確認します。

問題5 営業利益率が高い会社は必ず優れた会社でしょうか。

【答え】いいえ。研究開発費など将来成長に必要な投資を削減して、一時的に利益率を高めている可能性もあります。

問題6 売上が15%増えているのに粗利益率が55%から45%へ低下しました。何を疑うべきでしょうか。

【答え】値下げ、競争激化、原材料価格上昇、低利益製品の比率上昇、製品ミックス悪化などです。

問題7 純利益が前年の2倍になりました。すぐに本業が成長したと判断してよいでしょうか。

【答え】いいえ。営業利益を確認し、資産売却益など一時的利益が含まれていないかを見る必要があります。

問題8 医療DX企業で売上増加以上に営業利益が増えることがあるのはなぜでしょうか。

【答え】固定費が売上と同じ割合では増えない場合があり、売上拡大によって固定費負担率が低下するためです。

問題9 同じ売上高でも製薬企業と介護企業の営業利益率を単純比較しにくいのはなぜでしょうか。

【答え】知的財産型と労働集約型など、ビジネスモデルやコスト構造が大きく異なるためです。

問題10 利益率分析で最も重要な問いは何でしょうか。

【答え】「なぜこの利益率になっているのか」です。数字そのものではなく、利益率を生み出している事業構造を理解することが重要です。

総合ケーススタディ――どちらの医療企業が強いのか?

A Medicalは、売上高1,000億円、売上成長率+15%、粗利益率45%、営業利益率10%。B Medicalは、売上高800億円、売上成長率+8%、粗利益率70%、営業利益率25%。売上規模と成長率はA社が上です。利益率はB社が上です。どちらが優れているでしょうか。まだ分かりません。A社の中身を見ると、新製品投入、海外展開、営業人員増加、研究開発費増加。3年後会社計画では、営業利益率10%から20%。B社は、主力製品が成熟、特許満了接近、研究開発パイプライン弱い。現在だけならB社ですが、将来を見るとA社の利益率改善余地があるかもしれません。反対もあります。A社の利益率改善計画が実現しない、新製品が売れない、海外進出失敗。その場合、現在の低利益率が続きます。だから分析します。現在の利益率、過去の利益率、同業比較、将来利益率、そして改善する根拠まで確認します。

JMEIでは、利益率を単なる企業ランキングには使いません。営業利益率30%だから優良企業、営業利益率5%だから悪い企業という見方はしません。重要なのは、「なぜ30%なのか」「なぜ5%なのか」です。高い利益率の背景に、特許、技術、ブランド、価格決定力、高利益消耗品、強い販売網、スケールメリットがあるなら、持続的な競争優位かもしれません。一方、研究開発削減、人員削減、設備投資先送りによる高利益率なら、将来利益を犠牲にしている可能性があります。低い利益率でも、新薬開発、海外進出、新製品投入、顧客基盤拡大への先行投資なら、将来の高利益率につながる可能性があります。JMEIでは、利益率、利益率の原因、競争優位、将来利益率、ROIC、FCFという流れで考えます。利益率とは、企業の結果表です。企業分析とは、その結果を生み出した原因を探す作業なのです。

JMEI Medical Insight

医療企業で利益率を見るときに特に重要なのは、「医療価値が、経済価値へ変換されているか」です。素晴らしい医療技術を持っている、それだけでは高利益率にはなりません。例えば、画期的な医療機器、しかし製造コストが非常に高い、営業に大量の人員が必要、病院への導入教育に時間がかかる、保守費用が高い。すると、医療的には優れていても、企業として高い利益率を実現できない可能性があります。反対に、装置を一度導入すると、専用試薬、消耗品、保守契約、ソフトウェア利用料が継続する。このモデルでは、医療価値が、継続的な経済価値へ変換されます。製薬企業なら、薬効、安全性、特許、市場規模、研究開発効率。医療DXなら、医師の時間削減、病院業務効率化、継続課金、低解約率。介護・福祉企業なら、人員配置、稼働率、加算取得、職員定着率。それぞれ利益率を決める要因が違います。だからJMEIでは、「営業利益率20%」という数字だけでは評価しません。その20%を生み出している、医療現場の構造まで見ます。良い利益率とは、単に高い利益率ではありません。医療価値を損なわず、将来成長への投資を続けながら、持続的に生み出せる利益率なのです。

今回のポイント

第41講で最も覚えてほしいのは、「利益率を見ると、企業がどこで稼ぎ、どこでお金を使っているかが分かる」ということです。粗利益率は、製品・サービスそのものの収益性。営業利益率は、本業全体の収益性。純利益率は、最終的に株主へ帰属する利益の収益性を見る代表的な指標です。しかし、高い=良い、低い=悪いではありません。見る順番は、売上成長率、粗利益率、粗利益率の変化、営業利益率、研究開発費、販管費、営業利益と経常利益の差、一時損益、純利益率、FCFです。そして、過去、同業他社、将来の3方向から比較します。最も重要なのは、「なぜこの利益率なのか」を考えることです。利益率は、企業の競争力、価格決定力、製品構成、研究開発戦略、コスト構造、ビジネスモデルを映す鏡なのです。

次回予告

第42講 営業レバレッジとは何か?――「売上10%増」で利益が30%増える会社の仕組み

第41講では、粗利益率、営業利益率、純利益率を使って、企業の収益構造を読み解きました。その中で、売上が30%増えただけなのに、営業利益が2倍以上になるケースが登場しました。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。鍵になるのが、固定費と変動費です。売上が増えるたびに費用も同じ割合で増える会社、売上が増えても費用があまり増えない会社。この違いによって、利益の伸び方は大きく変わります。医療DX、医療AI、診断機器、医療機器、製薬、医療サービス、それぞれ営業レバレッジの構造が違います。次回は、固定費とは何か、変動費とは何か、損益分岐点とは何か、営業レバレッジとは何か、売上増加以上に利益が伸びる理由、逆に売上減少で利益が急減する危険、医療DX企業が黒字化すると利益が急増する理由、製薬企業の新薬上市で利益構造が変わる理由、そして「成長する会社」と「成長すると急激に儲かる会社」は何が違うのかを、利益成長の仕組みへ、もう一段深く学んでいきます。

本講座に関するご注意

本講座は、企業分析の考え方を学ぶための教育コンテンツです。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業には該当せず、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。講座内で企業を題材として扱う場合も、あくまで分析手法を説明するための例示です。

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