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医療企業分析アカデミー

第48講 投資キャッシュフローとは何か?――「お金を使う会社」と「未来へ投資する会社」の違いを見抜く

JMEI 医療企業分析アカデミー 第48講 「お金を使う会社」と「未来へ投資する会社」の違いを見抜く

第47講では、フリーキャッシュフローについて学びました。基本的な考え方は、営業キャッシュフロー-設備投資=フリーキャッシュフローでした。ここで重要だったのは、設備投資には、維持投資と、成長投資があるということです。同じ100億円の投資でも、老朽化した設備を維持するための100億円と、将来の売上を2倍にする新工場への100億円では、意味がまったく違います。では、企業が実際に、「何へお金を使っているのか」は、どこを見れば分かるのでしょうか。そこで登場するのが、投資キャッシュフローです。Cash Flow from Investing Activities、投資活動によるキャッシュフロー。企業が、工場を建てる、製造設備を購入する、研究施設を作る、土地や建物を取得する、他社を買収する、逆に、設備や子会社を売却する。こうした、企業の将来に関係する現金の動きが、投資キャッシュフローに表れます。初心者が最初につまずきやすいのが、「マイナスだから悪い」という見方です。営業キャッシュフローなら、基本的にはプラスの方が安心です。ところが、投資キャッシュフローでは、マイナスが必ずしも悪いわけではありません。むしろ、将来の成長へ積極的に投資している企業ほど、大きなマイナスになることがあります。反対に、投資キャッシュフローが大幅なプラス。一見すると良さそうですが、工場や子会社を次々と売却して現金を作っているだけかもしれません。今回は、投資キャッシュフローとは何か、なぜマイナスになるのか、CAPEXとの違い、設備投資、資産売却、M&A、製薬企業の研究施設、医療機器メーカーの新工場、病院の大型医療機器、医療DX企業の投資、そして、「未来を作るためにお金を使っている会社」と、「苦しくなって資産を売っている会社」を、どう見分けるのか、企業の「お金の使い方」を読んでいきます。

投資CFの基本と、プラス・マイナスの意味

投資キャッシュフローとは、企業が将来のために行う投資や、保有資産の売却などによる、現金の出入りを示すものです。キャッシュフロー計算書には大きく3つの区分があります。営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローです。営業キャッシュフローは本業から生み出した現金。投資キャッシュフローは設備や事業などへの投資に使った現金。財務キャッシュフローは借入や返済、配当など、資金調達や資本政策に関係する現金。今回は2番目の、投資キャッシュフローを見ます。

投資キャッシュフローがマイナスとは何でしょうか。例えば、新しい工場を100億円で建設した。会社から現金100億円が出ていきます。投資キャッシュフローではマイナス100億円。では、会社が100億円損したのでしょうか。違います。現金100億円が、工場という資産へ変わったのです。その工場が、今後10年間、毎年大きな利益を生み出すかもしれません。つまり、投資キャッシュフローのマイナスは、「損失」ではありません。未来へ現金を振り向けたという意味の場合があります。ここが、営業キャッシュフローとの大きな違いです。マイナス100億円のケーススタディを見てみましょう。A Medical Deviceは、営業CF300億円、投資CFマイナス100億円。内容、新工場建設80億円、研究施設20億円。B Medicalは、営業CF300億円、投資CFマイナス100億円。内容、採算の悪い企業を100億円で買収。同じ、マイナス100億円。しかし、意味は違います。A社は、生産能力拡大と研究開発基盤強化。B社は、買収先が利益を生まなければ、100億円の投資が企業価値を損なう可能性があります。つまり、投資CFは、プラスかマイナスかだけでは評価できません。最も重要なのは、「何に使ったのか」です。

投資CFの主な項目は、代表的には、有形固定資産の取得。工場、建物、土地、製造設備、医療機器、研究設備。無形資産への投資。子会社や事業の取得。有価証券の取得。貸付。反対に、固定資産の売却、子会社の売却、有価証券の売却、貸付金の回収などがあります。お金を使えば、投資CFはマイナス方向。資産を売れば、投資CFはプラス方向。ここで注意。投資CFプラス=良い、ではありません。プラス100億円のケーススタディを見てみましょう。A社は、投資CFプラス100億円。なぜでしょうか。遊休不動産を150億円で売却、新規設備投資50億円、差し引き、プラス100億円。B社は、投資CFマイナス100億円。新工場100億円。数字だけなら、A社の方が良く見えます。しかし、5年後はどうでしょうか。A社は、売れる資産を売って現金を作っただけ。B社は、新工場から毎年50億円の営業CFを生み出すようになった。なら、B社の方が将来価値を作っている可能性があります。投資CFは、「今年いくら現金が増減したか」ではなく、「未来のために何をしたか」を見る数字です。

CAPEXと投資CFは同じでしょうか。ここも重要です。CAPEX、Capital Expenditure、設備投資。工場や機械設備など、固定資産への投資を指します。一方、投資キャッシュフローには、CAPEX以外も含まれます。例えば、企業買収、子会社取得、有価証券取得、資産売却。つまり、CAPEXは、投資キャッシュフローの一部分と考えると分かりやすいでしょう。CAPEXとM&Aのケーススタディを見てみましょう。Medical Aは、投資CFマイナス500億円。内訳、工場設備100億円、企業買収400億円。つまり、CAPEXは100億円。しかし、投資CFはマイナス500億円。投資CFだけを見て、「設備投資が500億円」と考えてはいけません。必ず、内訳を見る。ここが重要です。

投資後を見ることと、製薬・医療機器・診断の投資CF

では、良い投資とは何でしょうか。基本的には、投資した金額以上の価値を、将来生み出す投資です。例えば新工場へ100億円投資、その工場から、毎年30億円の利益。別の工場、100億円投資、毎年3億円の利益。同じ100億円でも、投資効率は違います。ここで、以前学んだROICとつながります。企業分析では、投資CF、投下資本、利益、ROIC、営業CF、FCF、この流れを見る必要があります。投資後を見るケーススタディを見てみましょう。Medical Device X社は、2023年、新工場へ200億円投資。2024年、売上1,000億円から1,100億円。2025年、売上1,300億円。2026年、売上1,600億円。営業利益、100億円から130億円、180億円、250億円。営業CFも増加。この場合、2023年の大きな投資CFマイナスは、将来成長のための投資だった可能性があります。逆に、200億円投資、3年後も売上横ばい、利益低下、工場稼働率50%、なら、投資判断を検証する必要があります。投資は、した瞬間ではなく、その後を見る。これは非常に重要です。

製薬企業の投資CFでは、工場、研究施設、製造設備、企業買収、ライセンス取得などが重要です。特に近年の製薬企業では、自社研究だけでなく、外部の技術やパイプラインを取り込む戦略も重要です。例えば、大手製薬会社が、有望な新薬候補を持つバイオ企業を買収、買収額3,000億円、投資CF、大幅マイナス。悪いでしょうか。まだ分かりません。その新薬が成功、年間売上5,000億円、なら、非常に価値の高い投資だった可能性があります。反対に、臨床試験失敗、開発中止、減損、なら、大きな損失につながります。製薬M&Aでは、投資CFの金額だけでなく、パイプライン、作用機序、臨床段階、市場規模、特許、競合を見る必要があります。製薬会社の2つの買収のケーススタディを見てみましょう。A Pharmaは、2,000億円で、Phase IIIの新薬候補を持つ企業を買収。B Pharmaは、2,000億円で、既存事業と関連性の低い企業を買収。同じ2,000億円。しかし、戦略的意味は違います。A社は、既存の販売網を使える、研究開発ノウハウも共通。B社は、シナジーが不明。この場合、A社の方が、投資回収の道筋を説明しやすいかもしれません。重要なのは、買収金額ではなく、買収後に、どれだけキャッシュを生み出すかです。

次に医療機器企業です。医療機器企業では、設備投資が重要です。特に、カテーテル、注射器、検査機器、人工関節、手術支援機器などでは、製造能力が成長を制約する場合があります。注文はある、しかし、作れない。この場合、新工場投資は、売上成長のために必要です。例えば現在生産能力、年間100万本。需要、年間150万本。新工場建設、生産能力、年間200万本。この投資が、売上成長につながる可能性があります。ここで見るべきは、需要が本当にあるか、工場完成後、稼働率は上がるか、利益率は改善するか、営業CFは増えるか、です。「設備投資が多い」だけでは、良いとも悪いとも言えません。

次に診断企業です。診断企業では、研究開発設備、試薬工場、診断装置製造設備などがあります。さらに、装置を顧客へ設置することで、将来の試薬売上を作るモデルがあります。この場合、短期的には現金が出ていく、しかし、Installed Baseが増える、その後、試薬売上が積み上がる。つまり、投資、装置設置、Installed Base増加、試薬売上増加、営業CF増加という流れです。このような企業では、「今の投資CF」と、「数年後の継続収益」をつなげて考える必要があります。

医療DX・病院・介護での投資CFと、会計上の投資と経済的な投資

次に医療DX企業です。医療DX企業では、工場投資は少ないかもしれません。しかし、M&A、サーバー、データセンター、ソフトウェア関連資産などへの投資があります。さらに注意したいのが、会計上の投資CFだけでは、企業の成長投資すべてが見えないことです。例えば、AIエンジニア100人を採用、年間人件費20億円。これは、経済的には将来への投資です。しかし、多くの場合、工場建設のような投資CFには現れません。営業費用として処理されます。同じことは、製薬企業の研究開発費にも言えます。つまり、企業分析では、投資CF=企業の未来投資すべてではありません。ここは非常に重要です。会計上の投資と、経済的な投資を分けて考える必要があります。見えない投資のケーススタディを見てみましょう。Medical AI社は、投資CFマイナス10億円、非常に少ない。しかし、研究開発費100億円、AI人材採用50億円、データ整備30億円。この会社は、「投資していない会社」でしょうか。違います。会計上、投資CFに現れない形で、大量の未来投資をしています。だから、投資CFだけで、企業の投資姿勢を判断してはいけません。

次に病院です。病院では、投資CFの分析が非常に重要です。CT、MRI、PET、手術支援ロボット、内視鏡、電子カルテ、建物。病院は、設備産業でもあります。しかし、高額医療機器を購入すれば良いわけではありません。例えば、3億円の医療機器を導入、年間利用件数想定3,000件、実績800件。設備が十分に使われていない。これは、資本効率の低下につながります。投資する前に、需要、利用率、人員配置、保守費用、収益性を見る必要があります。医療価値が高くても、持続可能な経営でなければ、医療提供を続けられません。一方で、採算だけで設備投資を判断してはいけない場合もあります。救急医療、地域医療、災害医療。採算性が低くても、社会的に必要な設備があります。ここが、一般企業と医療の大きな違いです。

次に介護・福祉企業です。新施設開設、建物改修、送迎車両、ICT設備、介護ロボットなどがあります。例えば、新しい生活介護事業所へ5,000万円投資、定員20人。しかし、2年後も利用者10人。投資回収は難しくなります。反対に、地域需要を調査、開設前から利用希望者を確保、半年で定員近くまで稼働、営業CFもプラス化。同じ5,000万円でも、投資の質が違います。施設を作ることが投資ではありません。利用され、サービスを生み、キャッシュを生み、社会的価値を生む。そこまで行って、投資の意味が生まれます。

資産売却とM&A、投資CFと営業CFの組み合わせ

次に、資産売却を見ます。投資CFがプラスになる代表例です。例えば、土地売却、工場売却、子会社売却、有価証券売却。ここでも、理由が重要です。同じ資産売却でも違うケーススタディを見てみましょう。A社は、非中核事業を売却、売却額300億円、その資金を、成長事業へ再投資。これは、事業ポートフォリオ再編です。B社は、営業CFが赤字、借入返済が迫る、主力工場を売却、300億円確保。同じ300億円の資産売却。しかし、意味はまったく違います。A社、戦略的売却。B社、資金繰りのための売却。投資CFプラスだけを見てはいけません。なぜ売ったのか、売った後、何に使うのか、ここまで見る必要があります。

次に、M&Aをもう少し深く見ます。医療業界では、M&Aが企業成長の重要な手段です。自社で10年かけて技術開発する、あるいは、すでに技術を持つ会社を買う、時間を買うとも言えます。しかし、M&Aには大きなリスクがあります。高値づかみ、統合失敗、人材流出、期待した売上が出ない、減損。そこで、買収後を追います。買収額、売上増加、営業利益増加、営業CF増加、ROIC、のれん、減損。ここまで見て、初めてM&Aを評価できます。買収後5年のケーススタディを見てみましょう。医療企業Aは、1,000億円で企業買収、買収時売上300億円、5年後売上800億円、営業利益30億円から150億円、営業CFも大幅増、統合も順調。一方、医療企業Bは、1,000億円で企業買収、買収時売上300億円、5年後売上250億円、赤字、のれん減損500億円。同じ1,000億円。結果は大きく違います。投資CFを見るときは、過去の投資の答え合わせをすることが重要です。

では、企業の投資CFは何年見るでしょうか。最低でも3年、できれば5年から10年。なぜでしょうか。投資にはサイクルがあるからです。1年目、新工場、投資CF大幅マイナス。2年目、設備導入、まだマイナス。3年目、工場稼働、売上増加。4年目、営業CF増加。5年目、FCF増加。この流れを見ます。投資した年だけを見てはいけません。投資前、投資時、投資後を一本の線で見る。これが企業分析です。

次に、営業CFと投資CFを組み合わせます。パターン①営業CFプラス、投資CFマイナス。これは、成熟企業や成長企業でよく見られる形です。本業で現金を稼ぐ、その現金を未来へ投資。健全な循環の可能性があります。パターン②営業CFプラス、投資CFプラス。本業で現金を稼ぐ、さらに資産も売却。なぜでしょうか。事業再編かもしれません。あるいは、投資機会が少ないのかもしれません。理由を確認します。パターン③営業CFマイナス、投資CFマイナス。本業でも現金流出、さらに投資。スタートアップならあり得ます。しかし、成熟企業なら注意。資金はどこから出ている?借入、増資、現金取り崩しを確認します。パターン④営業CFマイナス、投資CFプラス。本業で現金が出ている、資産売却で現金を作っている。これは、特に注意が必要な組み合わせです。もちろん、大規模な事業再編なら例外もあります。しかし、本業赤字を資産売却で補っているなら、持続可能ではありません。4社比較のケーススタディを見てみましょう。A社は、営業CF+300億円、投資CF-150億円。B社は、営業CF+300億円、投資CF+100億円。C社は、営業CF-100億円、投資CF-200億円。D社は、営業CF-100億円、投資CF+200億円。最も注意したいのは?一般的には、D社です。本業で現金を失い、資産売却などで現金を確保している可能性があります。ただし、必ず内訳を確認します。A社は、本業で生み出した現金を、未来へ投資。理想的な循環の可能性があります。しかし、投資内容が悪ければ、将来価値は生まれません。結局、キャッシュフロー分析でも、数字の符号だけでは判断できないということです。

JMEI式投資キャッシュフロー分析

JMEI式投資キャッシュフロー分析は、営業CFを見る、投資CFを見る、投資CFの内訳を見る、CAPEXを見る、維持投資か成長投資か考える、M&Aを見る、資産売却を見る、投資目的を確認する、投資後の売上を見る、投資後の利益を見る、投資後の営業CFを見る、ROICを見る、FCFを見る、5年間の推移を見る、将来の医療価値につながるか考えるという流れです。

JMEI式「投資CFを見る15の質問」として、①投資CFはプラスかマイナスか?②その理由は何か?③CAPEXはいくらか?④CAPEXは維持投資か成長投資か?⑤新工場は何のためか?⑥生産能力増強に需要はあるか?⑦M&Aはいくらか?⑧何を買収したのか?⑨買収後に売上は増えたか?⑩買収後に営業CFは増えたか?⑪資産売却はあるか?⑫なぜ資産を売ったのか?⑬投資後のROICは改善しているか?⑭投資は将来のFCF増加につながっているか?⑮その投資は医療価値の向上につながっているか?最後に、「この会社は、今日の現金を、明日の価値へ変えられているか?」と考えます。

練習問題

問題1 投資キャッシュフローとは何でしょうか。

【答え】設備や事業の取得、資産売却など、企業の投資活動に伴う現金の出入りを示すものです。

問題2 投資CFがマイナスなら悪い会社でしょうか。

【答え】必ずしもそうではありません。将来成長のために新工場や設備へ積極投資している場合もあります。

問題3 投資CFがプラスなら良い会社でしょうか。

【答え】必ずしもそうではありません。工場や子会社などの資産売却によって現金を作っている可能性があります。

問題4 CAPEXと投資CFは同じでしょうか。

【答え】同じではありません。CAPEXは主に固定資産への設備投資を指しますが、投資CFにはM&Aや資産売却、有価証券取引なども含まれます。

問題5 新工場へ100億円投資した会社を見るとき、その後に何を確認しますか。

【答え】生産能力、稼働率、売上、利益、営業CF、ROICなどが改善しているかを確認します。

問題6 製薬企業のM&Aでは何を見るべきでしょうか。

【答え】買収価格だけでなく、取得したパイプライン、臨床段階、市場規模、特許、競合、買収後の売上・利益・キャッシュフローなどを見ます。

問題7 投資CFが少ない医療DX企業は、未来への投資も少ないと言えるでしょうか。

【答え】言えません。AI人材、研究開発、ソフトウェア開発など、営業費用として処理される成長投資があるからです。

問題8 営業CFがマイナス、投資CFがプラスの場合、何に注意しますか。

【答え】本業の現金流出を資産売却で補っていないかを確認します。

問題9 投資CFは何年間見るべきでしょうか。

【答え】最低3年、できれば5年から10年程度の推移を見ると、投資サイクルを理解しやすくなります。

問題10 投資CF分析で最も重要な問いは何でしょうか。

【答え】「この会社は、今日使った現金を、将来より大きな価値へ変えられるのか」です。

総合ケーススタディ――3つの医療企業の「投資」を読む

A Medical Deviceは、営業CF500億円、投資CFマイナス300億円。内訳、新工場250億円、研究設備50億円。受注増加、現在の工場稼働率95%。B Pharmaは、営業CF500億円、投資CFマイナス800億円。内訳、バイオ企業買収700億円、設備投資100億円。買収企業は、Phase III候補を保有。C Hospital Groupは、営業CFマイナス50億円、投資CFプラス300億円。内訳、病院不動産売却350億円、設備投資50億円。どの会社が良いでしょうか。まだ決められません。A社、需要がある中で、生産能力増強。比較的、投資目的が分かりやすい。しかし、工場完成後の稼働率を見る必要があります。B社、大規模M&A。新薬が成功すれば、大きな価値。失敗すれば、大きな損失。臨床試験と買収価格を追う必要があります。C社、投資CFはプラス。しかし、営業CFはマイナス。不動産売却で現金を確保。資産効率改善のための戦略的売却なのか、資金繰り悪化による売却なのか、ここを調べます。つまり、投資CFの分析とは、数字を評価することではありません。企業が、どこへ向かおうとしているのかを読むことです。

JMEI Medical Insight

医療企業の投資には、一般企業にはない特徴があります。それは、投資成果を、利益だけでは測れない場合があることです。例えば、製薬企業が、希少疾患治療薬へ投資する。患者数は少ない。市場規模も大きくない。しかし、治療法がなかった患者に、新しい選択肢を提供する。病院が、採算性の低い救急設備へ投資する。財務リターンは高くない。しかし、地域医療には必要。介護施設が、利益を直接生まない見守りシステムへ投資する。しかし、転倒を減らす、職員負担を減らす、利用者の安全を高める。つまり、医療投資には、Financial Return、財務的リターンだけでなく、Medical Return、医療的リターン、Social Return、社会的リターンがあります。JMEIでは、投資を、①財務価値②医療価値③社会価値の3方向から見ることが重要だと考えます。ただし、社会的に価値があるから、財務を無視してよいという意味ではありません。赤字が続き、現金がなくなれば、医療サービスそのものを継続できなくなります。だから、医療企業に求められるのは、利益最大化でも、社会価値最大化だけでもありません。医療価値を生みながら、事業として持続できる投資です。JMEIが投資キャッシュフローを見るとき、最終的に問うのは、「この投資は、5年後、10年後の医療を良くするのか。そして、その医療を持続可能にするのか」ということです。

今回のポイント

第48講で最も覚えてほしいのは、「投資キャッシュフローは、マイナスだから悪いわけではない」ということです。投資CFがマイナス。新工場、設備、研究施設、M&Aなどへ現金を使っている可能性があります。投資CFがプラス。資産売却、子会社売却、有価証券売却などで現金が入っている可能性があります。だから、符号だけでは判断しません。必ず、内訳を見る、目的を見る、投資後を見ることが重要です。さらに、CAPEXと投資CFは同じではありません。投資CFには、M&Aや資産売却なども含まれます。そして、会計上の投資CFだけでは、企業の未来投資すべては見えません。研究開発、AI人材、教育、ソフトウェア開発など、営業費用として処理される投資もあります。企業分析では、営業CF、投資CF、CAPEX、M&A、資産売却、投資後の売上、投資後の利益、営業CF、ROIC、FCFまでつなげて見ます。そして最後に、「この会社は、今日の現金を、明日の価値へ変えられているか?」と考えます。投資キャッシュフローには、企業の未来戦略が表れているのです。

次回予告

第49講 財務キャッシュフローとは何か?――企業は「誰のお金」で成長しているのか

第48講では、投資キャッシュフローを学びました。企業は、営業活動で現金を生み出す。その現金を、工場、研究、設備、M&Aなどへ投資する。では、営業キャッシュフローだけでは、投資資金が足りない場合、どうするのでしょうか。銀行から借りる、社債を発行する、株式を発行する。逆に、借金を返す、配当を支払う、自社株を買う。こうした、「お金を集める」「お金を返す」動きが表れるのが、財務キャッシュフローです。営業CFプラス、投資CFマイナス、財務CFマイナスという会社。営業CFマイナス、投資CFマイナス、財務CF大幅プラスという会社。同じ成長企業でも、資金構造はまったく違います。次回は、財務キャッシュフローとは何か、借入、借入返済、社債、増資、配当、自社株買い、そして、営業CF・投資CF・財務CFの3つを組み合わせて、「企業が誰のお金で成長しているのか」を読み解きます。

本講座に関するご注意

本講座は、企業分析の考え方を学ぶための教育コンテンツです。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業には該当せず、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。講座内で企業を題材として扱う場合も、あくまで分析手法を説明するための例示です。

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受講による学習成果、および受講者の投資成果を保証するものではありません。投資その他の意思決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

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