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医療企業分析アカデミー

第51講 売上高成長率とは何か?――「伸びている会社」の中身を見抜く

JMEI 医療企業分析アカデミー 第51講 「伸びている会社」の中身を見抜く

前回の第50講では、キャッシュフロー計算書を一枚で読み、企業が創業・開発期、成長期、成熟期、転換期、衰退期のどこにいるのかを考えました。今回からは、企業分析の重要なテーマである「成長」に入ります。企業の成長を考えるとき、最初に見る数字の一つが売上高です。例えば、前年売上高1,000億円、今年売上高1,100億円なら、売上高は100億円増えています。成長率は10%です。ここまでは簡単です。しかし、企業分析では、「売上高が10%増えた」だけでは不十分です。なぜ増えたのでしょうか。販売数量が増えた、価格を上げた、新製品が売れた、海外市場へ進出した、他社を買収した、為替が円安になった。これらはすべて、売上高を増やす可能性があります。しかも、同じ10%成長でも、中身によって企業の将来性はまったく違います。製薬企業なら、新薬が売れたのか、既存薬の価格が上がったのか、M&Aで売上が加わったのか。医療機器企業なら、販売台数が増えたのか、新製品が成長したのか、海外売上が為替で膨らんだのか。診断企業なら、検査装置が増えたのか、装置設置後の試薬売上が増えたのか。医療DX企業なら、契約施設数が増えたのか、顧客単価が上がったのか。介護・福祉企業なら、新しい施設を開設したのか、既存施設の利用率が上がったのか。企業分析で重要なのは、売上高成長率そのものではありません。「なぜ成長したのか」を分解することです。今回は、売上高成長率とは何か、どう計算するのか、数量成長、価格成長、新製品成長、M&A成長、為替影響、オーガニック成長、そして、「一時的に伸びた会社」と、「長期的に成長できる会社」をどう見分けるのかを、医療企業の実例をイメージしながら学んでいきます。

売上高成長率の基本と、「成長=良い会社」ではない理由

売上高成長率とは、前の期間と比べて、売上高がどれくらい増えたか、あるいは減ったかを示す指標です。基本式は、売上高成長率=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100です。簡単な例を見てみましょう。前年売上高1,000億円、今年売上高1,100億円。増加額は100億円。したがって、100億円÷1,000億円×100=10%。売上高成長率は10%です。売上が減った場合も同じです。前年1,000億円、今年900億円。差額はマイナス100億円。したがって、-100億円÷1,000億円×100=-10%。売上高成長率はマイナス10%です。なぜ売上高を見るのでしょうか。企業の利益は、基本的に売上から始まります。商品やサービスを販売する、売上が生まれる、そこから、原価、人件費、研究開発費、販売費、管理費などを差し引く、そして、利益が残ります。つまり、売上高は企業活動の入口です。

しかし、「売上成長=良い会社」ではありません。ここが最初の重要ポイントです。売上高が毎年20%増えている。素晴らしい会社に見えます。しかし、売上を増やすために、販売費を50%増やしている、利益は減っている、営業CFもマイナス、なら、成長の質を確認する必要があります。同じ20%成長のケーススタディを見てみましょう。A Medicalは、前年売上1,000億円、今年売上1,200億円、20%成長。営業利益は100億円から180億円、営業CFも増加。B Medicalは、前年売上1,000億円、今年売上1,200億円、20%成長。営業利益は100億円から50億円、営業CFはマイナス。同じ20%成長でも、意味は違います。A社は、売上成長が利益とキャッシュにつながっています。B社は、売上を増やすためのコストが大きすぎる可能性があります。だから、売上高成長率だけで企業を評価してはいけません。

売上成長を分解する――数量・価格・製品ミックス

売上成長の主な要因は、大きく分けると、数量、価格、製品構成、新製品、M&A、為替などです。企業によっては、市場拡大、新規顧客、海外進出、適応拡大なども加わります。最も基本的なのは「数量×価格」です。非常に単純化すると、売上高=販売数量×販売価格です。例えば、医療機器を1台100万円で1,000台販売、売上高10億円。翌年、販売台数1,100台、価格100万円、売上高11億円。10%成長です。これは数量成長です。価格成長の場合、販売数量1,000台、価格が100万円から110万円、売上高10億円から11億円。これも10%成長です。しかし、数量は増えていません。価格上昇による成長です。

数量成長と価格成長はどちらが良いでしょうか。一概には言えません。数量が増えるということは、患者数、医療機関数、市場シェア、利用件数などが増えている可能性があります。価格上昇は、ブランド力、製品価値、価格決定力などを示すことがあります。しかし医療では、価格を自由に上げられない分野があります。薬価、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス報酬などです。そのため、医療企業の売上分析では、制度も理解する必要があります。

製品ミックスによる成長もあります。企業が、100万円の商品と、300万円の商品を販売しているとします。販売数量が変わらなくても、300万円の商品が多く売れるようになれば、売上高は増えます。これを、製品ミックスの改善と考えることができます。医療機器企業では、高付加価値製品への移行が、売上高だけでなく、利益率改善につながる場合があります。医療機器メーカーのケーススタディを見てみましょう。Medical Device Aは、前年、標準製品10万本、高機能製品2万本。今年、標準製品10万本、高機能製品4万本。総販売数量は増えていますが、特に高価格・高付加価値製品が伸びています。この場合、単なる数量成長ではなく、製品ミックス改善も成長要因です。ここから、売上総利益率、営業利益率も改善しているかを確認します。

新製品・新薬・適応拡大と特許満了

医療企業では、新製品が売上成長を大きく変えることがあります。特に、製薬、医療機器、診断では重要です。例えば、既存製品売上1,000億円、新製品売上200億円、合計1,200億円。売上高20%成長。この場合、成長の中心は新製品です。ここで見るべきことは、新製品の売上が、一時的なのか継続的なのか、市場規模は大きいか、競合はいるか、特許はあるか、参入障壁はあるか、新製品だけでなく既存製品も成長しているかです。

製薬企業では、新薬上市によって、売上成長率が大きく変わります。例えば、既存薬売上3,000億円、新薬500億円、合計3,500億円。約16.7%成長。しかし、新薬が翌年1,000億円、さらに翌年2,000億円となれば、企業全体の成長エンジンになる可能性があります。適応拡大も売上成長になります。ある薬が、最初は一つの疾患だけで承認されていた、その後、別の疾患にも使用可能になった、対象患者が増える、売上が増える。これが、適応拡大による成長です。製薬企業を見るときは、新薬だけでなく、既存薬の適応拡大も確認します。一方で特許満了があります。新薬が成長する一方で、主力薬の特許が切れる、後発医薬品やバイオシミラーが参入、売上が減る。製薬企業では、成長製品と、減少製品を分けて見る必要があります。製薬企業のケーススタディを見てみましょう。Pharma Bは、前年売上5,000億円、今年売上5,500億円、10%成長。一見、順調です。しかし内訳を見ると、主力既存薬は3,000億円から2,500億円、新薬は500億円から1,500億円、その他は1,500億円。つまり、既存の主力薬は減少、新薬がそれ以上に伸びて、全体を押し上げています。この会社の将来を見るには、新薬がどこまで成長できるかが重要です。

M&A成長・オーガニック成長・為替

企業を買収すると、買収した会社の売上が、連結売上に加わる場合があります。例えば、A社売上1,000億円、200億円の売上を持つ企業を買収、翌年売上1,200億円、売上高20%成長。しかし、既存事業はまったく成長していない可能性があります。ここで重要な言葉が、オーガニック成長です。Organic Growth。一般に、M&Aや大きな事業売却などの影響を除き、既存事業がどれだけ自力で成長したかを見る考え方です。企業によっては、為替影響も除いて説明します。20%成長の正体のケーススタディを見てみましょう。Medical Cは、売上高1,000億円から1,200億円、20%成長。内訳は、M&A効果+150億円、為替効果+50億円、既存事業成長0億円。表面上は20%成長。しかし、オーガニック成長はほぼ0%。この場合、既存事業の競争力を確認する必要があります。反対のケースもあります。Medical Dは、売上高1,000億円から1,150億円、15%成長、M&Aなし、為替影響ほぼなし。既存事業だけで150億円増加、オーガニック成長15%。表面上の成長率はC社より低い。しかし、事業そのものの成長力は、D社の方が強い可能性があります。

M&A成長が悪いわけではありません。ここも誤解してはいけません。M&Aによる成長=悪い成長ではありません。優れた企業は、自社成長とM&Aを組み合わせます。重要なのは、買収後に、売上だけでなく、利益、営業CF、ROICが増えているかです。為替による成長もあります。海外売上が多い企業では、為替の影響があります。例えば、海外で10億ドル売上、1ドル100円なら1,000億円、1ドル150円なら1,500億円。現地での販売量がまったく増えていなくても、円換算売上は増えます。為替で伸びた会社のケーススタディを見てみましょう。Medical Device Eは、前年売上2,000億円、今年売上2,300億円、15%成長。しかし、為替影響+250億円、実質的な事業成長+50億円。この場合、表面上15%成長ですが、事業そのものの成長は、約2.5%程度と考えることができます。だから「恒常為替」を見ます。グローバル企業では、Constant Currency、恒常為替ベースの成長率を開示する場合があります。為替変動を除いて、実際の事業がどれくらい成長したかを見るためです。海外売上比率が高い医療企業では、非常に重要です。

診断・医療DX・病院・介護の売上成長

診断企業では、装置本体だけを見てはいけません。例えば、検査装置を病院へ設置、装置売上が発生。しかし本当の魅力は、その後です。検査をするたびに、試薬、消耗品が使われる。つまり、装置設置、Installed Base増加、検査件数増加、試薬売上増加という流れがあります。診断企業のケーススタディを見てみましょう。Diagnostics Fは、装置売上が300億円から330億円、10%増。試薬売上が500億円から650億円、30%増。全体売上も大きく成長。この場合、特に注目したいのは、試薬売上です。Installed Baseが積み上がり、継続収益が増えている可能性があります。これは、質の高い売上成長になり得ます。

医療DX企業では、売上をさらに分解できます。例えば、売上=顧客数×顧客単価。顧客数が増える、売上増。顧客単価が上がる、売上増。両方増えれば、さらに大きく成長します。医療SaaSのケーススタディを見てみましょう。Medical SaaS Gは、前年、契約医療機関1,000施設、年間平均単価100万円、売上10億円。今年、契約医療機関1,200施設、年間平均単価110万円、売上13.2億円。売上成長率32%。なぜ32%成長したのでしょうか。顧客数20%増、さらに、単価10%増。両方が成長しています。ここで解約率を見ます。新規契約が増えていても、既存顧客が大量に解約しているなら、持続的成長は難しくなります。だから、医療SaaSでは、新規顧客、解約率、顧客単価、ARR、NRRなども見ます。

病院では、売上に相当する医業収益を、患者数、単価、病床稼働率、外来患者数、手術件数などに分解できます。例えば、病床数は同じ、病床稼働率が70%から85%、医業収益増加。これは、既存設備の稼働率改善による成長です。介護・福祉でも同じです。例えば、グループホーム、定員20人、利用者14人から19人、売上増加。これは、既存施設の稼働率改善。一方、新しい施設を5施設開設、売上増加。これは、拠点数増加による成長。同じ売上成長でも、中身が違います。

既存店成長・規模・複利とCAGR

既存店成長という考え方も重要です。介護、病院、薬局、クリニック、小売型ヘルスケアなどでは、既存拠点の成長を見ることが重要です。新しい施設を増やせば、売上は増えます。しかし、既存施設の利用者が減っているなら、本当の競争力は弱くなっている可能性があります。介護企業のケーススタディを見てみましょう。Care Hは、前年50施設、売上100億円。今年60施設、売上115億円。15%成長。一見好調。しかし、新規10施設が20億円売上、既存50施設は、100億円から95億円へ減少。つまり、既存施設売上は、5%減。新規出店で全体成長を維持している状態です。この場合、既存施設の利用率低下を調べる必要があります。

高成長率には「小さい会社効果」があります。売上10億円の企業が、売上5億円増える、15億円、成長率50%。売上1兆円の企業が、売上500億円増える、1兆500億円、成長率5%。増加額は、後者の方が100倍大きい。しかし、成長率は低い。つまり、成長率を見るときは、企業規模も考える必要があります。小型バイオ企業が50%成長、大手医療企業が8%成長。50%の方が必ず優れているわけではありません。売上規模、市場規模、利益、キャッシュを一緒に見ます。成長率は1年だけで見ません。前年+30%、今年-10%、翌年+25%。このように、成長率が激しく変動する企業もあります。一方、毎年、+8%、+9%、+8%、+10%という企業。派手ではありません。しかし、長期間続けば、大きな差になります。

複利で考えます。売上1,000億円、毎年10%成長。1年後1,100億円、2年後1,210億円、3年後1,331億円。5年後には約1,611億円、10年後には約2,594億円。毎年10%でも、長期間続けば、企業規模は大きく変わります。そこで使われるのが、CAGRです。Compound Annual Growth Rate、年平均成長率。複数年間の成長を、平均して年何%成長したかを見る指標です。5年前、売上1,000億円、現在1,500億円。単純に、50%÷5年=10%とはしません。複利で計算します。この場合のCAGRは、およそ8.4%です。なぜCAGRが便利なのでしょうか。1年だけ大きく成長、翌年減少という企業より、5年間継続して成長している企業の方が、事業の再現性が高い可能性があります。だから、1年成長率だけでなく、3年CAGR、5年CAGRを見ることが重要です。

市場成長・利益・営業CFと結びつける

売上成長と市場成長を比較します。企業が売上5%成長。良いでしょうか。市場全体が10%成長しているなら、市場シェアを失っている可能性があります。逆に、市場成長率2%、企業成長率8%なら、シェアを獲得している可能性があります。市場との比較のケーススタディを見てみましょう。医療機器市場の年間成長率が5%。A社の売上成長率は12%、B社は3%。A社は、市場以上に成長、シェア拡大の可能性。B社は、売上自体は増えています。しかし、市場より成長が遅い、シェア低下の可能性があります。

売上成長率だけでなく利益を見ます。売上+20%、営業利益+30%。これは、利益が売上以上に伸びています。良い可能性があります。売上+20%、営業利益-10%。なぜでしょうか。原価上昇、販売費増加、研究開発費増加、値引き、低利益率製品の増加などを確認します。さらに営業CFを見ます。売上+20%、利益+20%、営業CF-30%。なぜでしょうか。売掛金増加、在庫増加などが考えられます。だから、売上、利益、営業CFまでつなげます。

JMEI式売上成長分解

JMEI式売上成長分解は、売上高成長率を見る、数量を見る、価格を見る、製品ミックスを見る、新製品を見る、既存製品を見る、M&Aを見る、為替を見る、オーガニック成長を見る、市場成長率と比較する、利益成長を見る、営業CFを見る、3年・5年CAGRを見るという流れです。最後に、「この成長は、来年も続くのか?」と考えます。

JMEI式「売上高成長を見る15の質問」として、①売上高は何%成長したか?②何年間成長しているか?③数量は増えているか?④価格は上がっているか?⑤製品ミックスは改善しているか?⑥新製品はどれくらい貢献したか?⑦既存製品も成長しているか?⑧M&Aによる成長はどれくらいか?⑨為替影響はどれくらいか?⑩オーガニック成長率はいくらか?⑪市場成長率より高いか?⑫市場シェアは増えているか?⑬利益も増えているか?⑭営業CFも増えているか?⑮この成長は5年後も続けられるか?を確認します。

練習問題

問題1 前年売上高1,000億円、今年1,200億円の場合、売上高成長率はいくらでしょうか。

【答え】20%です。

問題2 売上高が20%増えていれば、必ず良い成長でしょうか。

【答え】いいえ。M&A、為替、値上げなどによる成長の場合もあり、利益や営業CFが増えていない可能性もあります。

問題3 オーガニック成長とは何でしょうか。

【答え】一般に、M&Aなどの影響を除き、既存事業が自力でどれだけ成長したかを見る考え方です。企業によっては為替影響なども除いて示します。

問題4 海外売上の多い医療企業で確認したいものは何でしょうか。

【答え】為替影響と、恒常為替ベースの成長率です。

問題5 診断企業で装置売上以外に重要なものは何でしょうか。

【答え】Installed Base、検査件数、試薬・消耗品などの継続収益です。

問題6 医療DX企業の売上はどのように分解できますか。

【答え】顧客数×顧客単価などに分解できます。さらに解約率やARRなども確認します。

問題7 売上成長率が市場成長率より低い場合、何が考えられますか。

【答え】市場シェアを失っている可能性があります。

問題8 1年間の売上成長率だけでなく、何を見るとよいでしょうか。

【答え】3年や5年のCAGRを見ることで、中長期的な成長力を確認できます。

問題9 売上高が増えているのに営業CFが減っている場合、何を確認しますか。

【答え】売掛金や在庫の増加など、運転資本の変化を確認します。

問題10 売上高成長分析で最後に考えるべきことは何でしょうか。

【答え】「この成長は、来年、3年後、5年後にも続けられるのか」です。

総合ケーススタディ――3社の「10%成長」

A Pharmaは、売上5,000億円から5,500億円、10%成長。新薬+800億円、既存薬-300億円。B Medical Deviceは、売上5,000億円から5,500億円、10%成長。数量+7%、価格・製品ミックス+3%、M&Aなし。C Medicalは、売上5,000億円から5,500億円、10%成長。M&A+400億円、為替+100億円、既存事業0%。3社とも、10%成長です。しかし、成長の中身はまったく違います。A社は、新薬が旧製品の減少を補っています。重要なのは、新薬の成長余地。B社は、既存事業そのものが成長しています。数量も増え、製品ミックスも改善。比較的質の高いオーガニック成長と考えられます。C社は、M&Aと為替だけで成長。既存事業は横ばい。この場合、買収後のシナジーや既存事業の競争力を確認します。企業分析では、「10%成長」という数字で終わらせません。その10%を、分解する。これが重要です。

JMEIでは、売上高成長率を、企業の「成長力そのもの」とは考えません。売上高成長率は、成長分析の入口です。重要なのは、成長の源泉です。製薬企業なら、新薬、適応拡大、海外展開。医療機器企業なら、販売数量、新製品、市場シェア。診断企業なら、Installed Base、検査件数、試薬。医療DXなら、顧客数、単価、継続率。病院なら、患者数、手術件数、病床稼働率。介護・福祉なら、利用者数、稼働率、拠点数。企業ごとに、売上を動かす「エンジン」が違います。だからJMEIでは、売上高成長率を見たら、必ず、「何が増えたから、売上が増えたのか」まで分解します。そして、その成長エンジンが、来年も動くのか、3年後も動くのか、5年後も動くのかを考えます。売上成長率を見る目的は、過去の成長を確認することではありません。未来の成長を考えることなのです。

JMEI Medical Insight

医療企業の売上成長には、一般企業にはない重要な特徴があります。それは、「医療需要が増えること」と、「企業価値が高まること」が、必ずしも同じではないということです。高齢化によって、患者数が増える、慢性疾患が増える、医療需要が増える、介護需要が増える。だから、医療企業はすべて成長する、とは限りません。需要が増えても、薬価が下がるかもしれません。診療報酬が変わるかもしれません。人件費が増えるかもしれません。競合企業が増えるかもしれません。技術革新によって、既存製品が使われなくなるかもしれません。つまり、医療需要の成長と、企業売上の成長と、企業利益の成長は、分けて考える必要があります。JMEIでは、医療企業の成長を、Market Growth、市場そのものの成長、Share Growth、市場シェアの成長、Innovation Growth、新しい医療技術による成長の3つに分けて考えることを重視します。市場が伸びる、その中でシェアも増える、さらに新しい医療技術によって、新しい市場まで作る。この3つが重なる企業は、非常に強い成長力を持つ可能性があります。単に、「医療市場は成長するから、この会社も成長する」ではありません。その企業が、成長する医療市場の中で、どのポジションを取れるのか。そこまで考えることが、医療企業分析なのです。

今回のポイント

第51講で最も覚えてほしいのは、「売上高成長率は、数字を見るのではなく、中身を分解する」ということです。売上高が10%増えた。そこで終わらない。数量なのか、価格なのか、製品ミックスなのか、新製品なのか、M&Aなのか、為替なのかを確認します。さらに、オーガニック成長、市場成長率、市場シェア、利益、営業CF、3年・5年CAGRまで見ます。そして、医療企業では、製薬、医療機器、診断、医療DX、病院、介護・福祉、それぞれで、売上を動かすエンジンが違います。最後に、「この成長は、来年も、3年後も、5年後も続くのか?」と考えます。売上高成長率は、過去の数字ではありません。企業の未来を考えるための入口なのです。

次回予告

第52講 利益成長率とは何か?――売上が伸びる会社より「利益が速く伸びる会社」が強い理由

今回は、売上高成長率を学びました。しかし、売上が増えても、利益が増えるとは限りません。売上+10%、営業利益+30%という会社。売上+20%、営業利益-10%という会社。どちらの成長が強いのでしょうか。次回のテーマは、利益成長率です。売上が増えたとき、利益はどれくらい増えるのか。固定費、変動費、営業レバレッジ、粗利益率、製品ミックス、研究開発費、販売管理費。これらが、利益成長を左右します。特に医療企業では、新薬、高付加価値医療機器、診断試薬、医療SaaSなど、売上増加以上に利益が伸びるビジネスモデルがあります。一方、人件費の大きい病院、介護・福祉では、売上が増えても、利益がなかなか増えない場合があります。次回は、売上成長が、どのように利益成長へ変わるのか。そして、「売上だけ伸びる企業」と、「売上以上に利益が伸びる企業」の違いを学びます。

本講座に関するご注意

本講座は、企業分析の考え方を学ぶための教育コンテンツです。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業には該当せず、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。講座内で企業を題材として扱う場合も、あくまで分析手法を説明するための例示です。

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