JMEI Global Healthcare Leaders No.021 「一つのブロックバスター」に依存しないバイオ企業
Amgenは世界のバイオ医薬品産業を代表する企業の一つです。世界で初期の大型バイオテクノロジー企業として成長し、現在では、循環器、骨、炎症・免疫、がん、希少疾患、肥満などへ事業を拡大しています。協和キリンと比較すると最大の違いは、製品ポートフォリオの厚さです。
売上100.5億ドル、22製品が二桁成長
2026年第2四半期のAmgen売上高は100.5億ドル、前年同期比10%増となりました。製品売上は9%増の95.4億ドル。22製品が二桁成長し、17製品は第2四半期の売上ペースを年率換算すると年間10億ドルを超える規模です。非GAAP営業利益率は48%に達し、フリーキャッシュフローも35億ドル(前年同期19億ドル)へ倍増しました。
この数字から分かるのは、Amgenには「一つの主力薬」という考え方が当てはまりにくいということです。複数の大型製品が同時に成長しています。
6つの成長ドライバーが製品売上の約70%
Amgenは2026年第2四半期に、Repatha、EVENITY、TEZSPIRE、希少疾患、革新的腫瘍領域、バイオシミラーという6つの主要成長ドライバーが前年同期比26%増となり、製品売上の約70%を生み出したと説明しています。
代表例を見ると、Repathaは37%増の9億5,300万ドル、EVENITYは38%増の7億1,400万ドル、TEPEZZAは14%増の5億7,600万ドル、UPLIZNAは90%増の3億3,500万ドル、TEZSPIREは42%増の4億8,600万ドル、肺がん治療薬IMDELLTRAは115%増の2億8,800万ドルでした。非常に重要なのは、一つの薬が20~30%伸びているのではなく、複数の薬が同時に成長していることです。これが製薬企業の強さです。
Proliaの32%減が教えること
一方、すべてが好調というわけではありません。骨粗鬆症治療薬Proliaは第2四半期売上が32%減の7億5,900万ドルとなりました。複数のバイオシミラーが世界で上市された影響で、販売数量が20%、実勢価格が12%それぞれ低下しています。EnbrelやOtezlaにも価格・競争圧力があります。
ここが今日の最大の教材です。成熟製品が衰退すること自体は、製薬企業では避けられません。特許は切れます。バイオシミラーが出ます。薬価も下がります。問題は、「古い薬が落ちる前に新しい薬を育てられるか」です。Amgenは現在、Proliaなどの減少の一方で、Repatha、EVENITY、TEPEZZA、UPLIZNA、TEZSPIREなどの成長という世代交代を進めています。
Horizon Therapeutics買収――新薬を「買う」という競争力
Amgenの近年の大型戦略がHorizon Therapeutics買収です。これによって、TEPEZZA、KRYSTEXXA、UPLIZNAなどを取得し、希少疾患事業を一気に強化しました。2026年第2四半期もこれらの製品は二桁、あるいはそれ以上の成長を示しています。
ここから重要なことが分かります。大企業は必ずしも、すべての新薬を自分で発明する必要はない。有望な会社を見つけ、買収し、自社の世界的販売網に乗せる。これも創薬産業における競争力です。
MariTideと、肥満市場への参入
Amgenで現在最も注目すべき開発品の一つがMariTideです。MariTideはGLP-1受容体を活性化し、GIP受容体を阻害する抗体ペプチド複合体で、Eli LillyやNovo Nordiskの肥満薬とは異なる投与間隔・作用機序を狙っています。現在、慢性体重管理を対象とする複数の第3相試験が進行しており、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、閉塞性睡眠時無呼吸症候群などへ研究対象を広げています。同時にAmgenは、より初期段階だった別の肥満症候補AMG 513の開発中止を発表しており、MariTideを肥満領域における唯一の主力候補として資源を集中させる姿勢を示しています。
ここで前回分析したResMedともつながります。肥満治療薬が、糖尿病市場だけでなく、心血管、睡眠、肝疾患、腎疾患などへ広がれば、肥満薬は単なる減量薬ではなくなります。AmgenはMariTideを通じて、Lilly、Novo Nordiskが作り上げた巨大代謝市場へ参入しようとしています。
ロカチンリマブ撤退の影響が限定的だった理由
ここが協和キリンとの比較で最も重要です。Amgenもロカチンリマブから撤退しました。そして、その後ロカチンリマブ全体が安全性問題によって開発中止となりました。しかしAmgen全体への影響は限定的です。なぜなら、Repatha、EVENITY、TEPEZZA、KRYSTEXXA、UPLIZNA、TEZSPIRE、MariTide、その他多数の製品・開発品があるからです。
つまりAmgenの強みは、「すべての開発品を成功させること」ではありません。むしろ、「いくつか失敗しても企業全体として成長できること」です。これは製薬企業における非常に重要な競争優位です。
競合と、Amgenの文化
最大級の競合は、Eli Lilly、Novo Nordisk、Roche、Merck、AstraZeneca、Sanofi、Johnson & Johnsonなどです。ただしAmgenは、巨大製薬会社でありながら、バイオテクノロジー企業としての文化を維持している点に特徴があります。また近年は、自社研究、大型M&A、外部提携を組み合わせています。この点ではDanaherやStrykerで学んだ、「外部技術を買う能力も競争優位」という考え方が製薬業界にも当てはまります。
JMEI総合評価
Amgenを評価するときは、一つ一つの新薬より、「衰退製品を新しい成長製品へ絶えず入れ替え続ける能力」を見るべきです。
※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。