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Global Healthcare Leaders 10

Baxter International――「病院に必要なものを全部持つ会社」は、なぜ事業を削ったのか

JMEI Global Healthcare Leaders No.027 「病院に必要なものを全部持つ会社」は、なぜ事業を削ったのか

Baxter Internationalは約100年の歴史を持つ米国MedTech企業です。現在の中心事業には、輸液ソリューション、薬剤調製、輸液システム、外科関連製品、スマートベッド、患者モニタリング、ナースコール・院内接続、診断機器などがあります。非常にJMSと似た、Essential Hospital Infrastructure Companyですが、規模は大きく異なります。

2026年第2四半期売上高は、29億6,000万ドル、前年同期比5%増でした。オーガニックベースでも5%増です。米国売上は約16億ドル、4%増。海外売上は約14億ドル、報告ベース7%増、オーガニック5%増でした。GAAP純利益は1億3,500万ドル、調整後EPSは0.56ドル。会社は2026年通期見通しも引き上げています。急成長企業ではありませんが、世界の病院インフラ企業として、安定した成長を続けています。

第2四半期のMedical Products & Therapies売上は、約20億7,600万ドル、7%増でした。主な成長源は、Drug Compounding、IV Solutions、Advanced Surgeryです。一方、Novum IQ大型輸液ポンプの出荷・設置停止などの影響でInfusion Systemsは弱含みました。ここは非常に重要です。輸液ポンプは、ただ液体を流す装置ではありません。投与量を誤れば生命に直結します。したがって、製品品質・ソフトウェア・規制対応が企業業績そのものを左右します。MedTech企業では、新薬企業とは異なる「品質リスク」が存在します。

Baxterを理解するうえで重要なのが、Kidney Care事業の分離です。現在の決算では旧Kidney Care事業は継続事業から除外されています。つまり、かつて透析の巨大企業だったBaxterが、「何でも持つ会社」から「強い事業へ集中する会社」へ変わろうとしているわけです。これはJMSとの対比で極めて面白い点です。JMSは、輸液、透析、栄養、心臓外科などを幅広く持ちますが、Baxterは事業を整理しながら、輸液・病院システム・Connected Careへ集中しています。企業価値を高めるには、事業を増やす能力だけでなく、捨てる能力も必要です。

BaxterはHillrom買収によって、スマートベッド、患者モニタリング、ナースコール、診断機器などを獲得し、現在のHealthcare Systems & Technologies事業へつながっています。2026年第2四半期の同セグメント売上は、8億100万ドル、4%増でした。ここが今後のBaxterで重要です。昔の病院ベッドは、患者を寝かせる家具でしたが、現在は、患者位置、離床、転倒リスク、ナースコール、バイタル情報などとつながる、Connected Care Endpointになりつつあります。

2026年1月、Baxterは新しいDynamo Seriesストレッチャーを発表しました。患者移乗を減らす設計に加え、Voalte Nurse Callなどとの接続によってリアルタイム通知にも対応します。一見すると「ただのストレッチャー」ですが、患者からベッド/ストレッチャー、センサー、ナースコール、医療スタッフというデータ経路ができます。つまりBaxterは、Hospital Furniture CompanyではなくHospital Workflow Companyへ進もうとしています。

Baxter製品は、ICU、手術室、病棟、救急、薬剤部、輸液治療、患者搬送など、病院のさまざまな場所で使われます。これは極めて大きな強みです。新しいソフトウェア企業が病院へ入ろうとすると、営業、セキュリティ、規制、IT接続、院内承認など多数の壁がありますが、Baxterはすでに病院との取引関係を持っています。したがって既存デバイスへソフトウェアやAIを追加する方が、新規企業より容易な可能性があります。つまり、Installed Base+Hospital Relationshipそのものが競争優位です。

しかしBaxterにも収益性の課題があります。第2四半期のMedical Products & Therapiesのセグメント利益率は19.3%で、前年同期22.8%から低下しました。Healthcare Systems & Technologiesは20.3%でした。さらに輸液ポンプ関連の品質問題、ハリケーン影響、事業再編なども経験しています。巨大で安定した企業だから安心とは限りません。医療インフラ企業では、Supply Chain Resilience、Manufacturing Quality、Regulatory Reliabilityが企業価値へ直結します。

※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。

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