JMEI Global Healthcare Leaders No.011
Biogenは一度成功したバイオ企業が、次の成長源をどう作るかを見る格好の教材です。
かつてBiogenは多発性硬化症(MS)領域で非常に強い企業でした。
しかし現在、その旧来製品群は縮小しています。
2026年第2四半期では、
- Growth Portfolio:10億6,100万ドル、24%増
- Legacy MS Portfolio:7億6,700万ドル、14%減
となりました。
ついに新しい成長製品群の売上が、旧MS製品群を上回っています。
これはBiogenという企業の転換点です。
1.売上高は2%、3%ではなく「中身」を見る
2026年第2四半期の総売上高は27億3,600万ドル、前年同期比3%増でした。
数字だけ見ると、
「それほど成長していない」
となります。
しかし中を見ると、
- SPINRAZA
- LEQEMBI
- SKYCLARYS
- ZURZUVAE
- SYFOVRE
- EMPAVELI
などの成長製品が拡大しています。
つまり古い巨大製品が減少しながら、新製品がそれを上回り始めている。
企業分析では、総売上成長率だけを見ると、この変化を見逃します。
2.LEQEMBIはBiogenの一部にすぎない
BiogenにとってLEQEMBIは重要ですが、エーザイとは立場が違います。
エーザイはLEQEMBIの世界売上を計上し、Biogenは協業契約に基づいて純売上・売上原価・ロイヤルティなどの50%相当をAlzheimer’s collaboration revenueとして計上する構造です。
つまり同じ薬を扱っていても、企業ごとに収益の入り方が違う。
これは企業分析で非常に重要なポイントです。
「この薬が売れたから、この会社の売上がそのまま増える」
とは限りません。
共同開発契約を必ず読む必要があります。
3.Biogenはアルツハイマー病の「次」も狙っている
Biogenで特に注目したいのがDiranersenです。
2026年第2四半期時点で、同社はこのtau標的薬についてPhase 2でproof-of-conceptを得たとしており、Phase 3へ進める計画を示しています。
これは非常に興味深い。
LEQEMBIはアミロイドを標的にしています。
Diranersenはtauを標的としています。
つまり将来的には、
アミロイド+tau
という複数病態を標的とする治療へ進む可能性があります。
アルツハイマー病治療が「一薬剤市場」ではなく、複数治療を組み合わせる巨大市場になる可能性を見るうえで重要な研究テーマです。
4.M&Aで企業を作り直している
Biogenは2026年5月、Apellis Pharmaceuticalsの買収を完了しました。
これによってSYFOVREとEMPAVELIを追加し、2026年第2四半期からBiogenの成長ポートフォリオへ寄与しています。会社は2027年までに少なくとも2億5,000万ドルのランレートシナジーを想定しています。
さらに8月6日にはRayTheraの買収を完了しました。
ここから見えるのは、
Biogenは自社創薬だけで会社を再建しているわけではない
ということです。
外部技術を買収して、
Neurology + Rare Disease + Immunology
へポートフォリオを再構築しています。
※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。