JMEI Global Healthcare Leaders No.023 オプジーボ、エリキュースの次を作る「ポートフォリオ転換」
Bristol Myers Squibbは世界最大級のバイオ医薬品企業です。代表製品にはEliquis、Opdivo、Reblozyl、Breyanzi、Camzyos、Sotyktu、Opdualag、Cobenfyなどがあります。現在のBMSを見るうえで重要なのは、Legacy PortfolioからGrowth Portfolioへの移行です。これは製薬企業における「世代交代」を研究する非常に良いケースといえます。
最新決算――売上129.7億ドル、6%増
2026年第2四半期売上高は129.73億ドルで、前年同期比6%増でした。為替影響を除いても5%増です。GAAP EPSは1.62ドル、Non-GAAP EPSは2.04ドル。さらに会社は2026年通期売上見通しを490億〜500億ドルへ引き上げました(Last 10K)。かなり強い決算ですが、今日注目したいのは総売上ではありません。
Growth Portfolioが7割近くへ向かう
BMSが最も重要視しているのがGrowth Portfolioです。2026年第2四半期のGrowth Portfolio売上は75.6億ドルで15%増となり、売上全体の約6割を占めるまで拡大しています(SEC)。BMSは古い大型製品から次世代製品群への移行を実際に進めているということであり、これこそが製薬会社の「企業寿命」を決める要素です。
Eliquisはまだ巨大だが、永遠ではない
Eliquisの第2四半期売上は44.81億ドルで22%増でした(Stock Titan)。一つの薬が3か月で約45億ドルという、極めて巨大な製品です。しかしいずれ特許・価格・競争の影響を受けます。BMSが本当に評価されるべきポイントは、Eliquisが強いうちに、その次を作れているかです。
オプジーボからQvantigへ――同じ薬を次世代化する
非常に興味深いのがオプジーボです。第2四半期のOpdivo売上は約25億ドルで4%減少しました。しかしその一部は悪い減少ではありません。患者がOpdivo Qvantigへ移行しているためです。Qvantigの第2四半期売上は2.61億ドルまで成長し、年換算では10億ドル超のペースに達しています(Yahoo!ファイナンス)。
ここには重要な企業戦略があります。同じ有効成分でも、静注から皮下注へ変えることで、患者の治療負担、医療スタッフ負担、投与時間などを改善できます。つまり医薬品イノベーションとは新しい分子を作ることだけではなく、既存薬の投与方法を変えることも大きなイノベーションになり得るということです。
Reblozyl、Breyanzi、Camzyosが伸びる
BMSのGrowth Portfolioでは複数製品が同時に伸びています。Reblozylは29%増、Breyanziは41%増、Camzyosは約4.16億ドルで59%増となりました(Yahoo!ファイナンス)。これは以前のAmgen分析とも共通する点ですが、強い製薬企業は「次の一つのブロックバスター」を探すのではなく、複数の中型・大型製品を同時に育てます。この方がパイプラインの強靭性(Pipeline Resilience)は高くなります。
Cobenfy――BMSが精神科へ入る理由
もう一つ非常に興味深いのがCobenfyです。統合失調症治療薬で、従来のドパミン受容体を直接標的とする薬とは異なり、ムスカリン受容体を利用した新しい治療概念です。2026年第2四半期売上は6,300万ドル、前年同期比81%増でした(Yahoo!ファイナンス)。売上規模自体はBMS全体ではまだ小さいものの、重要なのはNeuroscienceという新しい成長領域を作れるかどうかです。製薬企業では、製品売上だけでなく、新しい疾患領域へ入る足場となる薬を評価する必要があります。
次世代技術――CELMoD
BMSでは、タンパク質分解を利用するCELMoD技術も重要です。代表的な開発品mezigdomideでは、再発・難治性多発性骨髄腫の試験において、標準治療と比較して病勢進行または死亡リスクを50%以上低下させた結果が発表されています(Bristol Myers Squibb)。ここで重要なのは一つの薬ではなく技術プラットフォームです。CELMoDが成功すれば、多発性骨髄腫だけでなく複数疾患で薬を作れる可能性があります。製薬企業の価値を見る場合、個々の製品だけでなく、創薬プラットフォームそのものを見る必要があります。
CAR-Tには製造という壁がある
BMSのBreyanziは第2四半期に41%成長しました。しかし2026年8月25日、BMSがCellaresとの細胞療法製造契約を終了したことが報じられました。BMSは、CellaresのCell ShuttleがBreyanziの商業規模製造要件を満たさなかったと判断しています(Reuters)。
これは非常に重要なニュースです。CAR-Tの競争では薬効だけでは勝てません。患者から細胞採取、輸送、遺伝子改変、培養、品質管理、病院へ返送という複雑な工程があり、製造そのものが治療の一部です。製造力そのものが競争優位になる、ということです。
JMEI総合評価
最大の注目点は、Eliquis・Opdivoという旧大型製品から、Growth Portfolioへの世代交代を完遂できるかにあります。
※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。