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Global Healthcare Leaders 10

Gilead Sciences――「HIVの会社」から次世代バイオファーマへ

JMEI Global Healthcare Leaders No.022 「HIVの会社」から次世代バイオファーマへ

Gilead Sciencesは、世界の感染症治療を大きく変えた企業です。HIV、B型肝炎、C型肝炎、そして新型コロナウイルス治療薬Vekluryなど、とりわけHIV領域では世界トップクラスの存在です。しかし現在のGileadを見る場合、「HIV企業」という理解だけでは不十分です。Gileadは現在、HIV、肝疾患、オンコロジー、細胞治療、ADC、自己免疫疾患へポートフォリオを急速に広げています。

HIVは依然として圧倒的な柱

2026年第2四半期売上高は、78億ドル、前年同期比10%増でした。Vekluryを除く製品売上も10%増の76億ドルです。HIV製品売上は、57億ドル、12%増でした。依然としてGileadの圧倒的な柱はHIVです。特にBiktarvyは38億ドル、7%増、Descovyは9.67億ドル、48%増となりました。四半期だけでBiktarvyが約38億ドルを売る。これは年間換算すれば150億ドル規模です。一つの薬で、日本のかなり大きな製薬会社の年間売上を超える規模になります。これがGlobal Pharmaのスケールです。

lenacapavir――年2回投与という革新

Gileadが現在持つ最も象徴的な技術の一つがlenacapavirです。HIVカプシドを標的とする新しい作用機序を持つ薬剤で、2025年6月、米FDAはlenacapavirをYeztugoとしてHIV感染予防に承認しました。最大の特徴は年2回投与です。第3相試験では、投与された参加者の99.9%以上がHIV陰性を維持しました。これは単なる「新しいHIV薬」ではありません。毎日薬を飲むPrEPから、半年に一度の予防への転換です。ここから重要な企業分析の視点が生まれます。医薬品のイノベーションは、効果が高いことだけではありません。服薬頻度を減らすことも巨大なイノベーションです。慢性疾患では、Daily PillからMonthly Injection、Twice-Yearly Treatmentのように治療負担が減るほど、患者のアドヒアランスを改善できる可能性があります。

オンコロジーとCAR-T

Gileadは長年、「HIV後の次の柱をどう作るのか」という課題を抱えてきました。そこで大きな投資を行ったのがオンコロジーです。代表製品がADCのTrodelvyで、2026年第2四半期売上は4.57億ドル、26%増となりました。さらにKiteを通じてCAR-T細胞療法を持っています。つまりGileadは、抗ウイルス薬からADC、CAR-Tへ技術領域を広げました。ただしCAR-T事業は足元では売上が減少しています。したがって「細胞治療を持っている=成功」とは判断できません。製造、患者アクセス、治療施設、コスト、競合など、細胞治療特有の課題があります。

112億ドルのAcquired IPR&D

2026年第2四半期のGilead決算で最も目を引く数字があります。Acquired IPR&D費用、112億ドルです。この大部分は、Arcellx(約70億ドル)、Tubulis(約31億ドル)、Ouro Medicines(約10億ドル)などの買収によるものです。この結果、Gileadは第2四半期に会計上大幅な赤字となり、EPSはマイナス8.45ドルです。しかしこれは「本業が赤字化した」という意味ではなく、将来の新薬候補を100億ドル単位で買いに行ったためです。実際、同四半期の営業キャッシュフローは36億ドルでした。企業分析では、会計上の赤字と本業のキャッシュ創出力を分けて考えなければなりません。

Arcellx・Tubulis――「次世代プラットフォーム」を買う

Arcellxは細胞療法企業です。GileadはKiteを既に持っていますが、それでもさらにArcellxへ巨額資金を投じました。これは、現在のCAR-Tを持っているから安心という考えではなく、次のCAR-T技術も外部から取り込むという戦略です。製薬・バイオ業界では技術世代交代が速いため、現在の製品を守るだけではなく、自分の製品を将来置き換える可能性のある技術を、競合に取られる前に自社へ取り込む必要があります。これは非常に重要なM&Aの考え方です。

TubulisはADC技術を持つバイオ企業です。GileadはすでにTrodelvyというADCを持っていましたが、それでもTubulisを買収しました。これもArcellxと同じ構造です。Trodelvyから次世代ADCへ進むための技術を内部へ取り込んでいる。つまりGileadは、「製品を買う」のではなく「次世代プラットフォームを買う」方向へ進んでいます。ここはJMEI未来企業発掘に極めて重要です。将来、大企業に買収される企業を探す場合、「新薬候補がある会社」だけでなく、大企業の現在の主力製品を次世代化できる技術企業を探すべきです。

キャッシュを次の医療技術へ変える構造と、最大の弱点

Gileadのビジネスモデルを非常に単純化すると、HIV事業から巨大キャッシュフローが生まれ、それがバイオ企業買収へ向かい、新しい疾患領域へ進出する、という構造です。第2四半期だけでも営業キャッシュフローは36億ドル。2026年上期では買収関連で113億ドルのキャッシュを使っています。つまり既存事業から得たキャッシュを、次の医療技術へ変換しています。これは非常に強力な構造です。

一方、最大の弱点も明確です。依然として売上の多くをHIVへ依存しています。2026年第2四半期の製品売上約76億ドルのうち、HIVは57億ドル、約4分の3です。つまりM&Aを大量に実施していても、第二のHIV事業はまだ完成していないと見ることができます。ここがGilead最大の課題です。

JMEI総合評価

Gileadについては今後、Arcellx・Tubulisなどへの巨額投資が、本当に次の大型製品へ変わるかを重点的に追跡します。

※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。

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