01JMEI Daily 02JMEIについて 03MEDIX50 04Global 10 05アカデミー 06研究・発信 07評価方法 08お知らせ お問い合わせ

Global Healthcare Leaders 10

GSK――ワクチン会社ではない。「感染症・免疫・がん」を束ねる巨大サイエンス企業

JMEI Global Healthcare Leaders No.025 ワクチン会社ではない。「感染症・免疫・がん」を束ねる巨大サイエンス企業

GSKは英国を代表する世界的大手製薬企業です。現在の事業構造は大きく、Specialty Medicines、Vaccines、General Medicinesから構成されています。特に重要なのが、HIV、呼吸器・免疫、オンコロジー、ワクチンです。かつてGSKにはコンシューマーヘルス事業もありましたが、現在はHaleonとして分離されています。したがって現在のGSKは、以前より明確に、研究開発型Biopharmaへ集中しています。

2026年第2四半期の売上は、84億900万ポンド、前年同期比5%増でした。Specialty Medicinesは38億ポンド、14%増。Vaccinesは23億ポンド、8%増。General Medicinesは23億ポンド、9%減です。Core営業利益は28億ポンドで7%増、Core EPSも9%増となりました。この数字を見ると、GSK内部で明確な世代交代が起きていることが分かります。つまり、従来型医薬品が縮小し、Specialty Medicines・Vaccinesが伸びる。GSKは売上構成そのものを高付加価値領域へ変えています。

2026年第2四半期のHIV売上は、約21億ポンド、10%増でした。この事業を担うのがViiV Healthcareです。2026年4月以降、GSKが78.3%、塩野義が21.7%という非常にシンプルな株主構成になりました。ここが今日の2社を比較する最大のポイントです。同じHIV事業に対して、GSKは経営支配する側、塩野義は技術と資本を提供する重要少数株主です。同じ事業でも利益の取り方が違います。

現在のHIV治療では、薬効そのものは極めて高い水準に達しています。すると競争軸が変わります。毎日1錠から、2か月に1回、半年に1回へと、投与頻度を減らす競争です。ViiVは現在、次世代インテグラーゼ阻害薬VH-184とカプシド阻害薬VH-499について、年2回投与を視野に入れた開発を進めています。これはGileadのlenacapavir/Yeztugoとも真正面から競合します。HIV市場では、「どの薬がウイルスを最も抑えるか」から、「患者がどれだけ治療を意識せず生活できるか」へイノベーションの意味が変わりつつあります。

GSKのもう一つの特徴がVaccinesです。第2四半期ワクチン売上は23億ポンド、8%増。代表製品のShingrixは約9億ポンド。髄膜炎ワクチンは約5億ポンドで21%増。RSVワクチンArexvyは2億ポンド超となり、前年同期比で2倍以上に伸びています。これは塩野義にはない大きな強みです。感染症に対して、塩野義は主に感染した後・曝露した後の薬を強みとします。GSKは、感染する前のワクチンまで持っています。したがってGSKは、予防、治療、長期感染症管理を横断することができます。

Specialty Medicinesでは、呼吸器・免疫19%増、オンコロジー17%増となっています。これは企業として非常に重要です。感染症はパンデミック、季節性、流行状況によって市場変動が大きい一方、がん、自己免疫疾患、呼吸器疾患などを持つことで、事業リスクを分散できます。これが大手Global Pharmaの強さです。

一方、2026年第2四半期では、GAAP営業利益が大きく減少しました。主な理由の一つが、慢性咳嗽治療薬候補camlipixantに関連した約13億ポンドの減損です。その結果、GAAP営業利益は前年同期比75%減となりました。しかしCore営業利益は7%増えています。ここは非常に重要な教材です。製薬会社では、会計利益が急減したから事業が急悪化したとは限りません。研究開発資産の減損が原因の場合があります。同時に、13億ポンドを失うほどの開発失敗が起こっても会社全体は成長できる。これが大手製薬企業のPipeline Resilienceです。

GSKは2026年に20本以上のPhase 3試験開始を予定しています。これは非常に大きな数字です。一社で20以上の後期臨床試験を同時に走らせるには、研究開発資金、臨床開発人材、世界の治験施設ネットワーク、薬事部門、製造能力が必要です。新薬開発において「企業規模」が競争優位になる理由がここにあります。

GSKの強さを整理すると、HIVのViiV Healthcare、世界有数のワクチン事業、呼吸器・免疫、オンコロジー、そして多数のPhase 3を同時進行できる研究開発基盤です。つまり一つの薬が強いのではありません。感染症・免疫システム全体への知識と事業基盤が競争優位です。

JMEI総合評価

最大の注目点は、HIV・ワクチン・Specialty Medicinesを成長させながら、General Medicinesへの依存をさらに低下できるかです。

参考資料:塩野義製薬「2026年度第1四半期決算」(2026年8月3日)、塩野義製薬「Fetroja米国政府調達」(2026年8月28日)、塩野義製薬「XOCOVA米FDA承認」(2026年6月1日)、GSK「2026年第2四半期決算」(2026年7月28日)、GSK/塩野義製薬「ViiV Healthcare株主構成変更」(2026年4月1日)

※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。

一覧へ戻る

免責事項

当サイトに掲載する分析・レポート・指標・講座等の内容は、医療企業および医療産業に対する理解を深めることを目的とした調査・研究および教育目的の情報提供です。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業その他の登録業務には該当せず、特定の有価証券の取得・売却を勧誘・推奨するものではありません。投資その他の意思決定は、利用者ご自身の判断と責任において行ってください。

掲載内容は作成時点で入手可能な公開情報等に基づいて作成していますが、その正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。また、掲載内容は予告なく変更・削除される場合があります。当サイトの情報の利用により生じたいかなる損害についても、当研究所は責任を負いかねます。

当サイトで言及する企業名・製品名・サービス名は、各社の商標または登録商標です。当研究所は、分析対象企業からの依頼に基づく評価の作成・掲載は行いません。