JMEI Global Healthcare Leaders No.026 「インスリンポンプ」から糖尿病自動管理プラットフォームへ
Insuletは、米国の糖尿病医療機器企業です。主力製品はOmnipodです。一般的なインスリンポンプでは、ポンプ本体、チューブ、皮下カニューレを使用しますが、Omnipod最大の特徴はTubeless、つまりチューブを使わないパッチ型ポンプであることです。小さなPodを身体へ貼り付け、インスリンを自動投与します。最新世代のOmnipod 5では、CGMと接続して血糖情報を取得し、アルゴリズムによってインスリン投与量を調整します。つまり、単なるPumpではなく、Automated Insulin Delivery Systemです。
2026年第2四半期の売上高は、8億170万ドル、前年同期比23.5%増となりました。為替影響を除いても22.7%増です。Omnipod売上だけでは、7億9,590万ドル、24.6%増でした。米国Omnipod売上は、5億4,410万ドル、20.1%増。海外Omnipod売上は、2億5,180万ドル、35.5%増です。非常に強い成長です。特に海外成長率35%超は重要です。
Insuletは米国企業ですが、Omnipodという治療コンセプトが世界市場へ広がり始めています。
成長企業では売上が伸びても、営業費用、マーケティング、研究開発費が増え、利益が伸びないことがあります。しかしInsuletでは、Adjusted Gross Marginが72.9%、Adjusted Operating Marginが19.3%まで改善しました。Adjusted EPSは1.66ドルで、前年同期比41.5%増です。つまり、売上+23%に対して、EPS+41%。これは規模拡大によって利益率が改善する、Operating Leverageが出始めていることを示します。
Omnipodのビジネスモデルには非常に重要な特徴があります。Podは使い捨てです。つまり利用者が増えれば、Podを継続購入します。これは、本体販売から消耗品へという一般的医療機器モデルよりさらに強い。患者がOmnipodを継続利用する限り、定期的な売上が発生します。ここは今日のメニコンと非常によく似ています。コンタクトレンズもPodも、身体に装着し、一定期間使用し、交換し、再購入します。Insuletではさらに、患者データ、CGM接続、アルゴリズムまで加わります。したがってOmnipodは、Disposable Device+Software+Dataという非常に強いビジネスモデルになります。
2026年第2四半期では、米国の新規利用開始患者の40%超が2型糖尿病患者でした。これは極めて重要です。従来のインスリンポンプ市場は1型糖尿病が中心でしたが、世界の糖尿病患者の圧倒的多数は2型糖尿病です。つまり、Type 1からInsulin-dependent Type 2へ対象市場が広がると、TAM=Total Addressable Marketが大きく変わります。Omnipodの成長を考える場合、現在のポンプ市場シェアだけを見るべきではありません。「注射をしている2型糖尿病患者の何%がポンプへ移行するか」を見る必要があります。
InsuletはOmnipod 5で止まりません。次世代のOmnipod 6では、さらに自動化を進めています。2026年第2四半期時点で、Omnipod 6のピボタル試験から良好なデータが得られたことを会社は説明しています。さらに2型糖尿病を対象としたFully Closed Loopシステムも開発しています。これが実現すると、患者が血糖を見て、インスリン量を計算して、投与するという作業がさらに減ります。最終的な方向はArtificial Pancreasです。
従来は、血糖測定器、インスリン、注射器、インスリンポンプ、CGMが別々に存在しました。しかし現在は、CGM、Algorithm、Insulin Pump、Automatic Dosingへ統合されています。すると競争相手も変わります。Insuletの競合は、Medtronic、Tandem Diabetes Care、Beta Bionicsなどです。しかし同時に、DexcomやAbbottというCGM企業との接続も極めて重要になります。つまり企業同士の関係は、競争+協業になります。良いポンプだけでは勝てない、良いCGMだけでも勝てない。糖尿病管理エコシステム全体で競争します。
ここは非常に重要ですが、2026年にはOmnipod製品の一部について製造上の問題に伴う自主的な医療機器修正が発生し、FDAによるClass I分類となった事例もあります。糖尿病ポンプでは、これは特に重要です。インスリン投与が少なすぎれば、高血糖、ケトアシドーシスにつながる可能性があります。逆に多すぎれば、重篤な低血糖につながる可能性があります。つまりInsuletの競争優位は、Algorithmだけではありません。Manufacturing Qualityが生命線です。医療機器企業では、成長率が高い、生産量を急拡大、品質問題というリスクがあります。したがってInsuletについては、売上成長だけでなく、製造不具合率、リコール、FDA対応も必ず追うべきです。
JMEI総合評価
品質問題の管理は重要ですが、Omnipodの、Tubeless+Disposable+Automated+Connectedという構造は極めて強い。Insuletは単なるインスリンポンプメーカーではなく、Diabetes Automation Platformとして見るべき会社です。
※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。