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国内医療企業

ジェイ・エム・エス(JMS)――病院の「当たり前」を支える日本の医療インフラ企業

JMEI 日本医療企業分析 No.026 病院の「当たり前」を支える日本の医療インフラ企業

JMSは広島県に本社を置く医療機器メーカーです。事業を一言で説明するのは簡単ではありません。輸液システム、注射関連、栄養システム、血液透析、腹膜透析、急性血液浄化、輸血・細胞関連、心臓外科、オンコロジー・麻酔、摂食嚥下など、医療現場の非常に広い領域へ製品を供給しているからです。公式製品サイトでは171製品が掲載されています。つまりJMSは、「一つの大型医療機器で成長する会社」ではなく、「病院で毎日消費される医療機器・消耗品を広く供給する会社」です。このタイプの企業は、JMEI企業分析では別の見方が必要です。

2027年3月期第1四半期の売上高は、151億円、前年同期比2.7%減となりました。海外での血液バッグ等の販売減少が響いています。営業損益は1億2,100万円の赤字です。ただし前年同期の営業赤字1億7,600万円からは改善しました。製造経費削減や為替差損の縮小が寄与しています。経常損失も1億1,400万円、親会社株主帰属四半期純損失は3億7,900万円となっています。つまり現在のJMSは、高成長企業ではありません。むしろ、低収益構造をどう立て直すかを見るべき企業です。これは非常に重要です。JMEI企業分析では、毎回「強い会社」だけを研究する必要はありません。むしろ、医療上重要な会社なのに、なぜ利益率が低いのかを考えることにも大きな価値があります。

JMSが扱う製品を見ると理由が見えてきます。シリンジ、注射針、チューブ、輸液関連製品、透析関連製品、栄養関連製品。これらは医療に不可欠ですが、差別化しにくい。さらに病院側には常にコスト削減圧力があります。したがって、「なくては困る」のに「高い価格を付けにくい」という構造になります。ここが製薬企業との大きな違いです。画期的新薬なら、強い特許と高い薬価によって大きな利益率を作れる可能性がありますが、シリンジや輸液セットではそうはいきません。すると競争力は、製品単価ではなく、製造コスト、品質、安定供給、製品ラインアップ、病院との関係、物流へ移ります。

JMSは原材料調達・成形から最終製品の滅菌まで一貫した自社生産体制を持ち、ISO13485、米FDA、欧州MDRなどへの対応体制も構築しています。千代田工場では、中空糸製品、不織布、各種カテーテル、透析関連装置、血液透析用コンソールなどを製造し、国内の主要滅菌拠点としても機能しています。ここを単なる工場と考えてはいけません。医療機器では、品質管理、滅菌、トレーサビリティ、規制対応、安定供給そのものが参入障壁になります。誰でも安価なチューブを作れるわけではありません。「人間の体内へつながるチューブを、毎日大量に、同じ品質で作る」能力は、それ自体が医療技術です。

JMSにはOEM事業もあります。シリンジやチューブ、バッグ類だけでなく、人工心肺・血液浄化回路、輸液・輸血関連、栄養関連、オンコロジー関連、さらに再生医療向けの細胞培養・保存容器や、プレフィルドシリンジ用容器まで提供しています。ここは今後のJMSで注目したい領域です。再生医療、細胞治療、遺伝子治療。こうした次世代治療が増えると、薬そのものだけでなく、細胞を培養する容器、保存するバッグ、移送する部材、患者へ投与する回路が必要になります。つまりJMSの既存製造技術が、次世代医療のSupply Chainへ入れる可能性があります。これはJMEIの「新治療→必須周辺機器を探す」という未来企業発掘の考え方とも一致します。

JMSには「キュアセンス輸液ポンプ IP-100」などの輸液システムがあります。ここが将来かなり重要です。単なる輸液セットの場合、消耗品を売るだけですが、輸液ポンプ+輸液セット+薬剤情報+患者情報+電子カルテ+アラームまでつながると、Infusion Platformになります。世界のMedTechでは、DeviceからConnected Device、Software、Clinical Workflowへという移行が進んでいます。JMSがここへ進めるかが、企業価値を大きく変える可能性があります。

JMSには血液透析と腹膜透析の両方があります。腹膜透析ではZERO SYSTEM、PD-MINISORA、PD-Relaxaなどを展開しています。透析は典型的なRecurring Patient Businessです。患者が治療を続ける限り、透析液、回路、バッグ、消耗品、機器が継続的に必要になります。したがって本来はJMSのRecurring Revenueと相性が良い領域です。問題は、この継続需要を十分な利益率へ変換できているかです。今後のJMSでは単なる売上より、製品別粗利、海外生産性、透析患者一人当たり売上、高付加価値製品比率を見る必要があります。

JMSを分析して感じる最大のテーマはここです。医療に必要で、技術もあり、生産拠点もあり、製品数も多いのに、それでも営業利益率は低い。つまり、社会的必要性=企業収益性ではないのです。ここを変えるには、単純な大量生産品から、高付加価値デバイス、Connected Medical Device、再生医療関連OEM、専門領域消耗品へ売上構成を変える必要があります。

※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。

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