JMEI Global Healthcare Leaders No.004
世界の医療企業を研究するとき、避けて通れない企業の一つがJohnson & Johnsonである。
Rocheは医薬品と診断、Eli Lillyは医薬品、Novo Nordiskは糖尿病・肥満症領域を中心として、それぞれ明確な強みを持っている。
それに対してJohnson & Johnsonの現在の特徴は、
- Innovative Medicine(医薬品)
- MedTech(医療機器)
という二つの巨大事業を一社の中に持っていることである。
1.年間売上1,000億ドル企業へ
2026年第2四半期のJohnson & Johnsonの売上高は253億10百万ドル。
前年同期比6.6%増となった。
事業別では、
- Innovative Medicine 163億84百万ドル
- MedTech 89億26百万ドル
である。
さらに会社は2026年通期の売上高見通しを引き上げ、報告ベース売上高の中央値を1,011億ドルとしている。
Johnson & Johnsonは140年の歴史の中で初めて、年間売上高1,000億ドル超を視野に入れている。
日本の医療企業を研究するとき、この「世界のスケール」を知ることは非常に重要である。
2.第一のエンジン――Innovative Medicine
現在、Johnson & Johnsonの売上高の約3分の2を占めるのがInnovative Medicineである。
2026年第2四半期の売上高は前年同期比7.8%増だった。
同社は、
- DARZALEX
- CARVYKTI
- TECVAYLI
- RYBREVANT
- TREMFYA
- SPRAVATO
- CAPLYTA
など、がん、免疫、神経領域などに複数の成長製品を持っている。
ここが単一の大型薬に大きく依存する企業との違いである。
医薬品企業では特許切れが避けられない。
したがって重要なのは、
「現在売れている薬」ではなく、「次の大型製品を継続的に生み出せるか」
である。
Johnson & Johnsonはそのリスクを、多数の製品と研究開発パイプラインによって分散している。
3.第二のエンジン――MedTech
もう一つの柱がMedTechである。
2026年第2四半期売上高は89億26百万ドル、前年同期比4.5%増だった。
成長には外科領域の創傷閉鎖・バイオサージェリー、心血管領域の電気生理やShockwave、Visionのコンタクトレンズ、整形外科の外傷領域などが寄与した。
この構造がJohnson & Johnsonの大きな特徴である。
新薬開発という高リスク・高リターン事業だけでなく、手術、循環器、整形外科、眼科など、実際の医療現場で継続的に使用される医療機器事業を持っている。
4.なぜ「医薬品+医療機器」なのか
ここがJMEIとして最も研究したい部分である。
医薬品企業は、新薬が成功すれば極めて高い利益を生み出せる。
一方で、
- 臨床試験失敗
- 承認失敗
- 特許切れ
- 薬価政策
- 競合薬登場
などのリスクも大きい。
医療機器にもリスクは存在するが、製品群や治療領域を広く持つことで収益源を分散できる。
Johnson & Johnsonは、
- Innovative Medicine=高成長・高付加価値
- MedTech=医療現場との強固な接点
を組み合わせていると見ることができる。
単なる「巨大企業」ではなく、異なる性質の事業を組み合わせたポートフォリオ型医療企業なのである。
5.巨大企業だから安全とは限らない
ただし、企業規模が大きければ将来も安泰というわけではない。
Johnson & Johnsonほどの規模になると、新製品一つが成功しただけでは企業全体の成長率を大きく押し上げにくい。
年間売上高1,000億ドル規模の企業が5%成長するには、単純計算でも年間約50億ドルもの新たな売上が必要になる。
したがってJohnson & Johnsonには、
- 大型医薬品の継続投入
- MedTechの成長
- M&A
- 新しい治療技術への投資
を同時並行で進め続ける必要がある。
「大きさ」そのものが、成長のハードルにもなるのである。
6.朝日インテックと比較すると見えてくるもの
今日、日本企業では朝日インテックを取り上げた。
この2社を並べると非常に興味深い。
Johnson & Johnsonは、巨大な資本・研究開発・製品群を持つ総合型である。
朝日インテックは、限られた領域で圧倒的な専門技術を磨くグローバルニッチ型である。
企業規模では比較にならない。
しかし企業分析で重要なのは、
「どちらが大きいか」ではなく、「なぜその企業が選ばれるのか」
である。
世界の巨大企業と正面からすべての領域で戦う必要はない。
一つの領域で世界トップクラスになることも、十分に強い企業戦略なのである。
この視点は、日本の医療企業を世界と比較するときに極めて重要になる。
7.JMEIが今後追跡するポイント
Johnson & Johnsonについては、今後特に四つを見る。
一つ目は、Innovative Medicineの成長製品が特許切れ製品を補えるか。
二つ目は、MedTechの成長率を再加速できるか。
三つ目は、M&Aによって取得した技術・企業を成長につなげられるか。
四つ目は、医薬品とMedTechという二本柱の組み合わせが今後も競争優位として機能するかである。
JMEI評価
Johnson & Johnsonの最大の強みは「巨大であること」だけではない。
世界規模の研究開発力、販売力、ブランド、資本力に加え、Innovative MedicineとMedTechという二つの異なる成長エンジンを持っていることである。
2026年第2四半期には売上高253億ドルを超え、会社は通期売上高見通しも引き上げた。
一方で、巨大企業であるからこそ高い成長率を維持する難しさもある。
今後の焦点は、
「1,000億ドル企業になった後、何によってさらに成長するのか」
である。
JMEI評価(9項目)
JMEIでは、すべての分析対象企業に同じ9項目の枠組みを適用しています。各項目の定義はJMEI評価方法をご覧ください。
| 評価項目 | 評価 | 所見 |
|---|---|---|
| 財務分析 | ★★★★★ | 年間売上高1,000億ドル超を視野に入れる世界最大級の医療企業。2026年第2四半期も増収を維持し、通期売上高見通しを引き上げている。 |
| ビジネスモデル | ★★★★★ | Innovative MedicineとMedTechという性質の異なる二つの巨大事業を保有。医薬品の高成長性と医療機器の安定した医療現場との接点を組み合わせている。 |
| 成長性 | ★★★★☆ | がん・免疫・神経領域などの成長製品とMedTechが成長を支える。一方、企業規模が巨大であるため、高成長率を維持するハードルは高い。 |
| 技術力 | ★★★★★ | 医薬品から手術、循環器、整形外科、眼科まで世界トップレベルの研究開発基盤を持つ。M&Aによる外部技術の取り込み能力も高い。 |
| 医療現場での有用性 | ★★★★★ | 医薬品だけでなく、外科、循環器、整形外科、眼科など実際の医療現場との接点が非常に広い。世界の医療を支える基盤企業の一つである。 |
| 医療制度との関係 | ★★★★☆ | 世界各国の薬価、保険償還、医療機器規制などの影響を受ける。巨大なグローバル企業であるため、政策変更の影響範囲も大きい。 |
| 社会的インパクト | ★★★★★ | 医薬品とMedTechの双方から世界規模で患者・医療機関に影響を与えており、世界の医療企業を比較する際の基準点となる存在である。 |
| 経営戦略 | ★★★★★ | Innovative MedicineとMedTechの二本柱を維持しながら、研究開発とM&Aを組み合わせて次世代の成長領域を獲得する戦略が明確である。 |
| リスク分析 | ★★★★☆ | 医薬品の特許切れ、臨床開発リスク、薬価政策、規制、M&A統合に加え、巨大企業ゆえに高い成長率を維持する難しさがある。 |
| JMEI総合評価 | ★★★★★ | 4.7/5.0 |
JMEI総合評価
Johnson & Johnsonは、規模、研究開発力、事業分散、世界展開のすべてで世界最高水準に位置する医療企業です。一方、すでに巨大であるため、「1,000億ドル企業になった後に何によって成長するのか」を継続的に確認していきます。
出典
- Johnson & Johnson, “Q2 2026 Results”
- Johnson & Johnson Investor Relations, 2026 Second-Quarter Earnings Materials
Johnson & Johnson「Q2 2026 results, raises 2026 outlook」
※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。