JMEI 日本医療企業分析 No.025 「コンタクトレンズメーカー」ではない。定期利用者を抱えるビジョンケア企業
メニコンは、日本を代表するコンタクトレンズメーカーです。同社は1951年に日本初の角膜コンタクトレンズを開発した企業として知られています。現在の中心事業はビジョンケアで、1DAYコンタクトレンズ、2週間交換型レンズ、ハードコンタクトレンズ、遠近両用レンズ、オルソケラトロジー、レンズケア用品などを展開しています。しかしJMEIでメニコンを分析する場合、「レンズを何枚販売する会社か」だけを見るべきではありません。最大の特徴は、利用者との継続契約モデルを早くから構築していることです。その象徴がメルスプランです。
2027年3月期第1四半期の売上高は、324億円、前年同期比7.0%増となりました。営業利益は34億円、74.9%増。経常利益は33億6,100万円、90.1%増。親会社株主帰属四半期純利益は22億円、124.9%増です。かなり大きな利益改善です。特に注目すべきなのは、売上が7%増なのに、営業利益が約75%増えている点です。これは単純な数量増加だけでは説明できません。会社の説明によれば、1DAY商品は国内での販売拡大により伸長した一方、オルソケラトロジー関連は中国での景気停滞や競争環境激化などにより横ばいでした。利益面では、将来の成長のための投資を実行しつつも、国内価格改定効果や販管費コントロール、コスト構造見直し、為替差益の効果が加わって利益が伸びています。企業分析では、売上成長率より利益成長率が大幅に高い場合、「何が利益率を押し上げたのか」を必ず確認する必要があります。
現在のコンタクトレンズ市場では、1日使い捨てタイプへの移行が重要なトレンドです。メニコンの第1四半期でも、1DAYコンタクトレンズの販売拡大が増収の主因となりました。1DAYには企業側から見ても重要な特徴があります。長期使用型コンタクトレンズでは、一度販売して数か月・数年利用となる可能性がありますが、1DAYでは1日使用し廃棄し、翌日新しいレンズを使います。つまり利用者一人あたりの継続購入量が大きくなります。これは典型的なRecurring Revenue Modelです。製品寿命を短くするのではなく、衛生面・利便性・安全性という医療的価値によって、消耗品型ビジネスへ市場そのものが移行していると見るべきです。
メニコンを他のコンタクトレンズ会社と比較するとき、最も重要なのがメルスプランです。利用者が月額費用を支払い、コンタクトレンズを継続利用する仕組みです。これは単なる割賦販売ではありません。メニコンにとって、利用者との長期関係、定期収益、販売店との関係、継続的なレンズ交換、新製品への切り替えという複数の価値を作ります。実際、会社の説明では、1DAYのメルスプラン会員数増加や、高単価の1DAYやその他会員の遠近両用タイプの構成比率上昇及び価格改定によって平均月額費用が上昇していることが業績に寄与しています。つまり企業として見ると、Contact Lens Manufacturerから、Vision Care Subscription Companyへ近づきます。ここが非常に重要です。医療機器メーカーでは通常、製品を販売して取引終了になりやすいものですが、メルスプランでは契約後から関係が始まります。
コンタクトレンズは消費財のように見えますが、医療機器です。しかも、毎日、角膜に直接接触する医療機器です。したがって、装用時間、乾燥、感染症、角膜障害、近視進行、眼科受診などと密接に関連します。ここから将来のメニコンに大きな可能性があります。コンタクトレンズ、眼科検査、装用データ、スマートフォン、AIを組み合わせれば、単に「視力を補正するレンズ」だけではなく、Eye Health Platformへ進むことができます。
特に重要なのが近視管理です。世界的に近視人口が増加していることは、眼科産業にとって非常に重要な長期テーマです。特に小児近視では、単に視力を補正するだけではなく、近視進行をどう抑えるかという市場が形成されています。オルソケラトロジーや近視進行抑制レンズなどが、その代表です。これはメニコンにとって大きな意味があります。従来型コンタクトレンズでは、「見えるようにする」ことが価値でしたが、今後は「将来の視力悪化を抑える」という予防医療へ市場が広がります。つまり、Vision Correctionから、Myopia Managementへの転換です。
メニコンの競争相手は強力です。Johnson & Johnson Vision、Alcon、CooperVision、Bausch + Lombなどがあります。これらは世界規模の販売網と研究開発力を持っています。したがってメニコンが世界で勝つには、単純に「性能の良いレンズを作る」だけでは十分ではありません。日本企業として、定期購入モデル、近視管理、オルソケラトロジー、専門販売ネットワーク、アジア市場など、自社が優位性を持てる領域へ集中する必要があります。
メニコンは海外でも事業を拡大していますが、海外売上が増えれば、自動的に企業価値が上がるわけではありません。海外展開では、現地販促費、物流、製造、規制対応、販売網、為替などのコストが発生します。したがってJMEIでは、海外売上比率だけでなく、海外事業利益率を見る必要があります。売上が増えても利益が増えない海外展開では意味がありません。一方、現在のように1DAY比率上昇と利益率改善が同時進行するなら、事業の質が高まっている可能性があります。
JMEI総合評価
メニコンを今後分析するときには、レンズ販売枚数だけでなく、契約者数、1DAY構成比、会員継続率、近視管理製品、海外利益率を見るべきです。
※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。