JMEI Global Healthcare Leaders No.015 KEYTRUDA後を作れるかが世界製薬最大級のテーマ
Merckを研究するときの問いは、一つに集約できます。
「KEYTRUDAの次を作れるか」
です。
2026年第2四半期売上高は166億ドル、前年同期比5%増。
このうちKEYTRUDA/KEYTRUDA QLEXだけで84億ドルです。
単純計算すると全社売上の約半分です。
ここまで一製品が巨大になると、その成功そのものがリスクにもなります。
1.KEYTRUDA依存は依然として非常に大きい
第2四半期のKEYTRUDA関連売上は5%増でした。
しかしMerck自身も、米国では複数適応ですでに高い浸透率に達しているため、今後成長率が鈍化すると説明しています。
そこで現在進めていることの一つが、皮下注製剤KEYTRUDA QLEXへの移行です。
第2四半期だけでQLEX売上は4億6,300万ドルとなりました。
これは単なる剤形変更ではありません。
点滴時間を短縮し、患者・病院双方の負担を減らすことで、KEYTRUDAブランドの競争力を長く維持する意味があります。
2.次の大型製品候補――WINREVAIR
現在のMerckで非常に注目したいのがWINREVAIRです。
第2四半期売上は5億8,800万ドル、75%増でした。
肺動脈性肺高血圧症という、KEYTRUDAとは全く異なる分野です。
この製品が大型化すれば、
Merck=がんのKEYTRUDA
という一極構造を少しずつ変えられます。
3.さらに面白い新薬がLIPFENDRA
2026年にはLIPFENDRA(enlicitide)が米FDA承認を取得しました。
これは成人高コレステロール血症を対象とする1日1回経口PCSK9阻害薬です。
従来PCSK9阻害薬は注射薬が中心でした。
もし経口薬として広く普及すれば、
「注射だから使われにくかった市場」
そのものを広げる可能性があります。
ここはJMEI Medical Trend Watchでも非常に面白いテーマです。
Injectable → Oral
という投与経路の革新だけでも市場構造を変えられる例です。
4.MerckはM&Aで「次」を買っている
2026年第2四半期にはTerns Pharmaceuticalsの買収も完了しました。
目的の中心は、慢性骨髄性白血病向け候補MK-4208(旧TERN-701)です。
買収による会計上の費用によって、第2四半期EPSは赤字になりましたが、これは本業悪化とは分けて見る必要があります。
ここにもJMEI企業分析の重要な教訓があります。
M&A費用で一時的に利益が落ちた会社を、単純に「業績悪化」と評価しない。
何を買い、その技術が将来いくらを生む可能性があるのかを見る必要があります。
5.次のMerckは「がんだけ」の企業ではない
現在Merckが育てている領域には、
- オンコロジー
- 肺高血圧
- 循環器
- 免疫
- HIV
があります。
HIVではGileadとの共同研究で、islatravir+lenacapavirによる週1回経口治療のPhase IIIでポジティブな結果を発表しています。
免疫領域ではtulisokibart。
がんではTROP2 ADCのsac-TMT。
つまりKEYTRUDAのキャッシュを、複数の次世代大型市場へ再投資しているわけです。
JMEI総合評価
将来の評価には条件があります。
2030年代にKEYTRUDAが縮小しても成長できる企業になっていること。
今後のMerck分析では、KEYTRUDAの売上高より、KEYTRUDA以外の売上構成比が毎年どれだけ上昇しているかを追う方が重要です。
出典
- Merck 2026年第2四半期決算
※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。