JMEI 日本医療企業分析 No.016 「モニターを売る会社」から患者データ企業へ進化できるか
日本光電は、生体情報モニター、脳波計・心電計、AED、除細動器、人工呼吸器などを扱う日本を代表する医療機器企業です。しかし今後の企業価値を考えるなら、単に「医療機器の種類が多い会社」と見るより、患者からリアルタイムの生体情報を取得する企業として見る方が面白いと思います。
最新決算は一見かなり悪い数字
最新決算は一見かなり悪い数字です。2027年3月期第1四半期の売上高は474億5百万円、前年同期比5.2%減。営業損益は前年同期の14億円の黒字から、9億83百万円の営業赤字へ転落しました。純損益も7億56百万円の赤字です。これだけなら「日本光電は業績悪化」と判断したくなります。
しかし今回の決算は中身を分解する必要があります。減収の主因は、国内で年内に取り扱いを終了するAbbott製品の影響で、国内売上は260億8千万円、前年同期比15.0%減となりました。会社によれば、Abbott製品の影響を除く実質ベースの国内売上は前年同期並みで推移しており、表面上の落ち込みほど自社事業が弱っているわけではありません。
海外を含めた全社ベースでも、Abbott製品の影響を除けば数%の増収に相当するとみられ、表面の「売上-5.2%」と自社事業の実態には無視できない差があります。企業分析ではこういう調整を見抜くことが重要です。
生体情報モニターと海外売上は伸びている
商品別では、生体情報モニターが173億56百万円、前年同期比6.0%増と好調でした。海外売上高は213億25百万円、10.3%増で、円ベースでは二桁成長となりました。私はここを評価します。日本光電が将来さらに大きな企業になるためには、「日本の病院で強い会社」から「世界の病院で使われる会社」への転換が必要だからです。
本当の資産は「患者データ」ではないか
日本光電の本当の資産は「患者データ」ではないでしょうか。生体情報モニターでは、心拍、血圧、SpO₂、心電図、呼吸、体温など、患者の状態が継続的に取得されます。将来的にこれをAIと組み合わせれば、異常発見から急変予測、アラート、臨床意思決定支援へ進むことができます。
そこで日本光電を見るときの問いを変えます。「今年モニターを何台売ったか」ではなく、「世界中に設置されたモニターから取得されるデータを、医療価値へ変えられるか」です。この転換に成功すれば、Hardware→Data→AI→Clinical Decision Supportという成長モデルを作れます。
課題は収益力
一方で課題は収益力です。第1四半期の営業赤字は、国内減収に加えて賃上げなどによる販管費増も影響しています。したがってJMEIとしては、海外売上比率と同時に営業利益率を重点監視すべきです。「良い製品を持つ会社」と「高い企業価値を作れる会社」は同じではありません。
出典
- 日本光電 最新IR資料
※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。