JMEI 日本医療企業分析 No.017 血圧計世界企業から「高血圧データ企業」へ
オムロンは総合電機企業ですが、JMEIではオムロン ヘルスケアを中心に医療企業として研究する価値が高い会社です。その理由は、家庭用血圧計という巨大なinstalled baseを持っているからです。
売上16.7%増に対して営業利益は約2倍
2027年3月期第1四半期、オムログループ全体の売上収益は2,098億64百万円、前年同期比26.1%増、営業利益は188億57百万円、226.0%増でした。ヘルスケア事業だけを見ると、外部収益は364億円、前年同期比16.7%増、営業利益は24億円、101.7%増となっています。主力の血圧計が日本・アジアのオンライン販促によって大きく伸びたことが寄与しました。
ここは非常に重要です。売上が16.7%伸びたのに対して営業利益は約2倍になっています。つまり現在のヘルスケア事業では、販売増が利益へ強く転換される局面に入っています。
血圧計を売る会社から、血圧データを持つ会社へ
従来なら、血圧計を作り家電量販店や薬局で販売するというビジネスモデルでした。しかし現在は違います。血圧計からOMRON connectへ、そこで血圧データが蓄積され、食事・体重・睡眠などとの統合を経て、高血圧管理、さらには疾病予測・受診支援へという方向へ進み始めています。
2026年6月、オムロン ヘルスケアは食事・栄養管理アプリ「カロミル」を提供するLife Log Technologyを完全子会社化しました。カロミルは国内670万人超が利用し、17億枚超の食事写真データを持っています。一方、OMRON connectは137カ国・地域で展開し、累計1,800万ダウンロードを超えています。
これは単なるアプリ会社の買収ではありません。血圧データと食事データを一つにする動きです。実際、2026年8月17日には血圧データと食事データを組み合わせ、高血圧管理の可能性を検証するモニター調査の開始も発表しました。
ここからオムロンの企業像が変わります。
Blood Pressure Monitor Companyから、Hypertension Management Platformへの転換です。
「Going for ZERO」が求めるもの
オムロン ヘルスケアは、循環器疾患の発症・重症化・再発を減らす「Going for ZERO」を掲げています。血圧計はその入口です。この戦略を本気で実行するなら、測定から記録、解析、リスク予測、行動変容、医療機関との接続まで必要になります。
2026年6月にはJMDC、筑波大学と、レセプト・健診・ライフログデータを使った睡眠時無呼吸症候群リスク予測モデルの開発も発表しています。つまり、医療機器・医療データ・AIへ企業活動が広がっています。
データ側とハード側、二方向の戦略
もう一つ興味深いのが、血圧計用カフなどを生産する松屋アールアンドディへのTOBです。オムロン ヘルスケアは、血圧測定精度に重要なカフの品質と生産能力を強化する目的を明示しており、2026年6月にはTOB結果も公表されました。
こちらはLife Log Technologyとは正反対です。Life Log Technology買収がデータ側の強化だとすれば、松屋アールアンドディ買収はハードウェア・製造側の強化にあたります。つまりオムロンは、デバイスの競争力を守りながらデータ側へ進出する二方向戦略を取っています。
JMEI総合評価
血圧計販売以外のデジタルヘルス収益を、本格的な事業へ育てること。オムロンを見るときは、今後「血圧計の販売台数」だけでなく、OMRON connectの利用者数、継続利用率、他データとの統合、医療機関との接続、デジタルサービス売上を追うべきです。
※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。