JMEI 日本医療企業分析 No.009 「製薬+健康」の独自モデルは世界でどこまで強くなれるか
大塚ホールディングスを「ポカリスエットの会社」と考えてしまうと、現在の企業像を大きく見誤ります。
グループには医薬品、ニュートラシューティカルズ、消費者関連、その他事業があり、「治療」だけではなく予防・健康維持まで含むTotal Healthcareを志向しています。大塚製薬自身も医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業を両輪と位置づけています。
2026年7月31日に2026年度第2四半期決算を発表しました。2026年1〜6月の連結売上収益は約1兆3,324億円、前年同期比12.8%増、営業利益は約2,806億円、17.3%増となり、上半期として過去最高水準となりました。医薬品事業だけで約9,516億円、ニュートラシューティカルズ事業も約3,001億円の売上規模です。
1.最大の強みは精神・神経領域
大塚を医療企業として研究するとき、最初に見るべきなのは精神・神経領域です。
REXULTIやABILIFY MAINTENAなどの中枢神経領域を長年育ててきました。そして2026年7月27日には、ADHD治療薬SIMTRIYO(centanafadine)が米FDAから承認されました。成人だけでなく6歳以上の小児も対象となっています。
これは単なる新薬一本の追加ではありません。
大塚が長期間蓄積してきた、
- 統合失調症
- うつ病
- アルツハイマー病に伴うアジテーション
- ADHD
といった精神・神経領域のフランチャイズを、さらに拡大していることを意味します。
2.M&Aでも精神・神経を深掘りする
2026年6月、大塚製薬はTranscend Therapeuticsの買収を完了しました。同社はPTSDなど精神・神経疾患の研究開発を行う企業です。つまり大塚は既存製品を販売するだけではなく、外部技術を取り込んで精神・神経領域をさらに厚くしようとしています。
ここには、世界企業と共通する戦い方があります。
自社研究だけに頼らない。
有望な企業や化合物があれば、
研究提携 → 出資 → ライセンス → 買収
という方法でポートフォリオに組み込む。
これはJMEIの未来企業発掘でも重要な観察ポイントです。
3.大塚にはもう一つ面白い医療の柱がある
今回、JMEIとして特に注目したいのが大塚メディカルデバイスです。
同社は未充足医療ニーズを対象に革新的医療機器を開発しており、ReCor MedicalやVeryan Medicalなどをグループに持っています。代表的な技術には、治療抵抗性高血圧に対するParadise超音波腎デナベーションシステムがあります。
これは大塚の将来を考えるうえで面白い存在です。
大塚は、
医薬品 + 食品・栄養 + 医療機器
という他社とはかなり異なるポートフォリオを作る可能性があります。
4.2028年に向けた課題
大塚は中期経営計画で2028年度売上高2.5兆円を目標としています。その一方で、主要薬の特許切れによる約3,100億円規模のマイナス影響を、新薬やニュートラシューティカルズ製品の成長で吸収する計画です。
ここが企業分析の核心です。
製薬会社は、現在利益が出ているだけでは十分ではありません。
「特許が切れた後に何が残るのか」
を見る必要があります。
SIMTRIYO、精神神経領域の新規パイプライン、腎・循環器、がん、医療機器などをどこまで第二・第三の柱にできるかが今後の評価を左右します。
JMEI総合評価
大塚ホールディングスは、「創薬企業」と「総合ヘルスケア企業」の中間に位置する、日本でもかなり独特な会社です。
今後は特に、精神・神経の次に何を世界的事業へ育てるかを追跡したい企業です。
※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。