01JMEI Daily 02JMEIについて 03MEDIX50 04Global 10 05アカデミー 06研究・発信 07評価方法 08お知らせ お問い合わせ

国内医療企業

PHCホールディングス――糖尿病・検査・医療DXを束ねる「隠れた総合ヘルスケア企業」

JMEI 日本医療企業分析 No.019 糖尿病・検査・医療DXを束ねる「隠れた総合ヘルスケア企業」

PHCホールディングスは、一見すると「何の会社なのか」が分かりにくい企業です。しかしグループを分解すると、その理由が見えてきます。Ascensiaでは糖尿病管理、LSIメディエンスでは臨床検査、ウィーメックスでは電子カルテや医療DX、Eprediaでは病理診断、メディフォードでは創薬支援、PHCではライフサイエンス関連機器などを展開しています。

つまりPHCホールディングスは、一つの医療機器を主力とする会社ではなく、研究、診断、治療支援、慢性疾患管理、医療ITという複数の医療インフラを保有している企業です。この「事業の広さ」を競争優位へ変えられるかが、PHCを分析するうえで最大のポイントになります。

営業利益171%増――表面的には非常に強い決算

2027年3月期第1四半期は、売上収益906億72百万円、前年同期比8.1%増、営業利益104億13百万円、171.0%増となりました。親会社の所有者に帰属する四半期利益も63億38百万円となり、前年同期の赤字から黒字へ転換しています。表面的には非常に強い決算です。

会社の説明によれば、営業利益の増加は糖尿病マネジメント事業の好調な販売に加え、コスト削減効果、持続血糖測定(CGM)事業の譲渡に伴う収益改善、為替の好影響などが重なった結果です。前期にはCGM事業譲渡(前期の営業赤字約90億円)による赤字要因がなくなったことも大きく寄与しています。

本業の成長、構造改革、一時的・特殊な要因に分ける

しかし企業分析では、「営業利益が171%増えた」という結果だけを見るべきではありません。本業の成長、構造改革による改善、CGM事業移管という一時的・特殊な要因に分けて考える必要があります。これはJMEI企業分析で非常に重要な基本です。決算の数字を見るだけではなく、「なぜその数字になったのか」を分解する必要があります。

通期業績予想は売上収益3,597億円(前期比1.3%減)、営業利益270億円(同19.0%増)で、円高の為替前提とCGM事業譲渡による減収を織り込みながらも、上期は計画を大幅に上回るスタートを切っています。

糖尿病管理と医療ITをつなげられるか

PHCグループのAscensiaは糖尿病管理事業を世界的に展開しています。糖尿病は典型的な慢性疾患で、患者は一度診断されれば、その後長期間にわたり血糖測定、検査、薬物療法、生活管理を続けます。ここにPHCの他事業を組み合わせる余地があります。

糖尿病管理機器、臨床検査、電子カルテ、健診、医療データ。これらを別々の事業として持つだけではなく一つにつなぐことができれば、「検査機器を販売する企業」から「患者の健康を長期間管理する企業」へ変わる可能性があります。

特にウィーメックスが持つ電子カルテ、電子薬歴などの医療IT基盤は重要です。医療機器メーカーの多くは患者データを取得できますが、そのデータを医療機関の診療情報と接続することは簡単ではありません。PHCはその両方に接点を持っています。

細胞・遺伝子治療の「周辺インフラ」

PHCは診断・ライフサイエンス領域の再編も進めています。ここで注目したいのが、細胞・遺伝子治療(Cell & Gene Therapy)です。この市場が拡大すると、治療薬を開発する製薬会社だけが成長するわけではなく、細胞培養、低温保存、品質管理、分析、輸送、製造設備といった周辺産業も同時に成長します。

これはJMEIの未来企業発掘で重要な考え方です。「次の新薬を作る会社」を探すだけではなく、「その新薬が普及したら必ず必要になる企業」を探す。PHCは、次世代医療のインフラ企業として成長できる可能性を持っています。

強みと弱みは表裏一体

一方、強みと弱みは表裏一体です。PHCには多くの事業があるため、「PHCといえば何の会社なのか」が見えにくくなっています。Danaherのような企業も多数の事業会社を抱えていますが、Danaherには、企業を買収し、Danaher Business Systemを使って経営を改善し、さらに成長させるという明確な企業モデルがあります。

PHCにも同じように、「複数事業を持っているからこそ生まれる価値」が必要です。Ascensia、LSIメディエンス、ウィーメックス、Epredia、PHCなどを単に保有するだけでは十分ではありません。それぞれのデータ、製品、顧客基盤を接続できるか。ここが今後の評価を左右します。

※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。

一覧へ戻る

免責事項

当サイトに掲載する分析・レポート・指標・講座等の内容は、医療企業および医療産業に対する理解を深めることを目的とした調査・研究および教育目的の情報提供です。金融商品取引法に基づく投資助言・代理業その他の登録業務には該当せず、特定の有価証券の取得・売却を勧誘・推奨するものではありません。投資その他の意思決定は、利用者ご自身の判断と責任において行ってください。

掲載内容は作成時点で入手可能な公開情報等に基づいて作成していますが、その正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。また、掲載内容は予告なく変更・削除される場合があります。当サイトの情報の利用により生じたいかなる損害についても、当研究所は責任を負いかねます。

当サイトで言及する企業名・製品名・サービス名は、各社の商標または登録商標です。当研究所は、分析対象企業からの依頼に基づく評価の作成・掲載は行いません。