JMEI 日本医療企業分析 No.018 「分析機器メーカー」の中に、世界で戦える医療企業が隠れている
島津製作所は医療専業企業ではありません。分析計測機器、医用機器、産業機器、航空機器を持つ科学技術企業です。
しかしJMEIでは、かなり重要な研究対象だと考えます。
理由は、同社の技術が、
- 製薬研究
- 臨床検査
- 画像診断
- ライフサイエンス
の複数段階に入り込んでいるからです。
2025年度の連結売上高は5,607億円。医用機器は全体の約13%ですが、分析計測機器は66%を占め、その中にも製薬・臨床検査などHealthcareと密接につながる事業があります。
つまり島津を「医用機器部門だけ」で見ると、この会社の医療産業における価値を過小評価する可能性があります。
1.最新決算は過去最高の第1四半期
2026年8月6日に発表された2027年3月期第1四半期では、
- 売上高 1,306億円:前年同期比+10%
- 営業利益 143億円:+17%
- 営業利益率 10.9%
となり、売上高は6年連続で第1四半期過去最高、営業利益も第1四半期として過去最高となりました。
利益の伸びが売上の伸びを上回っています。
企業全体としては良い状態です。
ただしJMEIで見るのは、その中の医療関連です。
2.医用機器事業が大きく改善
医用機器事業の第1四半期売上高は、
- 169億円:前年同期比+23%
でした。
営業利益は前年同期の7億円の赤字から11億円の黒字へ転換し、営業利益率は6.6%まで改善しています。
これはかなり重要です。
成長を牽引したのはX線システムです。
X線関連売上高は134億円、41%増。新しいX線透視撮影システムや回診用X線装置が好調でした。
一方、その他の機種は16%減っています。
会社は低採算製品を縮小しています。
私はこの点をむしろ評価します。
売上を何でも増やすのではなく、利益を生まない製品を整理している。
これは「規模」より「企業価値」を意識した経営への転換です。
3.島津の弱点は、医用機器の利益率だった
新しい中期経営計画でも、島津は収益力改善について医用機器事業を重点対象に挙げています。
2028年度までに全社営業利益率を2025年度の13.1%から14.7%へ引き上げる方針で、高付加価値製品、リカーリング収益、適正価格、不採算事業整理を進めます。
つまり会社自身も、
「医用機器は良い製品を持っているが、もっと利益を出せるはずだ」
と認識しているわけです。
これは今後3年間の重要な観察テーマです。
4.JMEIとしては「X線会社」以上に分析計測事業を見たい
島津最大の強みは、実はここです。
液体クロマトグラフ、質量分析計、ガスクロマトグラフなどを持ち、製薬会社、大学、研究施設、臨床検査などで使われています。
第1四半期の分析計測事業では、リカーリング売上が362億円、売上に占める比率は45%まで上昇しました。欧州ではClinical市場向け消耗品も伸びています。
このビジネスモデルは非常に強いです。
装置を導入
→ カラム・試薬・消耗品
→ 保守
→ ソフトウェア
→ 更新
という継続収益が生まれるからです。
島津は2035年に、
- 売上高1兆円以上
- 海外売上比率66%
- リカーリング売上比率45%
を目指しています。2025年度のリカーリング比率は32%です。
私はこの32%→45%を、売上1兆円以上に重要なKPIだと考えます。
5.AIも「製品」ではなく会社全体に入れる
島津は新中期計画でAIX=AI Transformationを掲げています。
研究開発ではAIによる技術探索、ソフトウェア開発期間最大50%短縮、営業では提案支援や価格最適化などを進め、さらに製品自体にもAIを組み込む方針です。
これは興味深い。
AI企業になるというより、
「150年間蓄積した科学計測技術をAIで強化する」
という戦略です。
JMEI総合評価
島津製作所は、単なるX線装置メーカーとしてではなく、「分析・診断・研究を横断する日本発Scientific Healthcare企業」として追跡する価値があります。
出典
- 島津製作所 2027年3月期第1四半期IR
※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。