JMEI Global Healthcare Leaders No.012 「画像を撮る会社」から「診断と治療をシームレスにつなぐ会社」へ
世界の画像診断市場における絶対的なベンチマークが、ドイツのSiemens Healthineersです。同社は現在、「Imaging(画像診断)」「Precision Therapy(精密治療)」「Diagnostics(検体検査)」の3本柱で事業を展開しています。
同社の歴史における最大の転換点は、2021年の放射線治療大手・Varian(ヴァリアン)の買収でした。このディールにより、同社は「高精度な画像で病変を見つける ➜ AIで治療計画を立てる ➜ 放射線で精緻に叩く」という一連のオンコロジー(がん治療)サイクルを一社で完結させるプラットフォームを確立しました。
最新決算に見る「圧倒的な強さ」と「構造的な課題」
2026年7月31日に発表された2026年度第3四半期決算は、同社の強みと課題が極めてクリアに現れた内容となりました。
- グループ売上高:57億6,400万ユーロ(Comparableベース +2.8%)
- Adjusted EBIT:11億100万ユーロ(+15.6%、マージン 19.1%)
圧倒的な利益エンジン「Imaging」と「Precision Therapy」
- Imaging:売上高約30億ユーロ(+2.3%)、Adjusted EBITマージン 26.5%
- Precision Therapy(Varian含む):売上高17億4,900万ユーロ(+9.2%)、Adjusted EBITマージン 17.5%
画像診断セグメントの利益率26.5%という数字は、製造業としては驚異的な水準です。その技術的象徴が、次世代の光子計数型CT「Photon-counting CT(NAEOTOM Alpha)」です。従来のCTに比べて圧倒的な高解像度・低被ばく線量・スペクトル解析を同時に実現しており、CT市場における世代交代の主導権を完全に握っています。また、Varian事業も9.3%増収と好調で、買収シナジーが数字となって結実しています。
苦境が続く「Diagnostics」
一方で、教材として最も興味深いのがDiagnosticsセグメントの低迷です。
- 売上高:9億9,200万ユーロ(-5.5%)
- Adjusted EBITマージン:4.1%(前年同期は9.2%)
中国市場における調達制度の構造変化などの煽りを受け、同社は通期の売上成長率ガイダンスを従来の4.5〜5.0%から3.5〜4.0%へ下方修正しました。
「ヘルスケア事業だから無条件に儲かる」わけではありません。世界トップの支配力を持つImaging(利益率26.5%)と、コモディティ化や価格圧力に晒されるDiagnostics(利益率4.1%)のコントラストは、「その市場セグメントでどれだけ代替不可能な技術的堀(Moat)を築けているか」の重要性を如実に物語っています。
JMEI総合評価
※追跡テーマは「ImagingとVarianの稼ぐ力が、Diagnosticsの構造改革に伴う痛みをどこまで相殺できるか」です。
※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。