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企業分析

企業分析と未来企業発掘――身体に装着する医療機器は、“一度売る製品”から”継続利用されるプラットフォーム”へ変わる

企業分析と未来企業発掘 身体に装着する医療機器は、“一度売る製品”から”継続利用されるプラットフォーム”へ変わる

今回の共通テーマは、「身体に装着する医療機器は、“一度売る製品”から”継続利用されるプラットフォーム”へ変わる」です。メニコンはコンタクトレンズ、Insuletはインスリンポンプというまったく異なる製品を扱っていますが、ビジネス構造を分解すると、装着型デバイス、消耗品、定期購入、長期利用、患者・利用者との継続接点という共通構造を持っています。今日は、医療機器企業を見る際に重要になる、Recurring Patient Platformという考え方を掘り下げます。

メニコン × Insulet──今日の比較「一度売る」のではなく「使い続けてもらう」

一見すると、コンタクトレンズとインスリンポンプには共通点がないように見えます。しかし企業分析では非常によく似ています。メニコンでは、利用者獲得からコンタクトレンズ装用、交換、定期購入、長期継続という流れがあります。Insuletでは、患者獲得からOmnipod導入、Pod交換、継続供給、データ蓄積、長期管理という流れがあります。つまり両社とも、Installed User Baseが増えるほど将来売上が積み上がる構造です。

これはMRIやCTのような大型機器メーカーとは違うビジネスモデルです。大型医療機器は一台売ると大きな売上になりますが、購入は数年に一度です。一方、メニコンとInsuletでは、一回の売上は小さいものの、患者・利用者が毎月、毎年継続します。この違いは企業価値を考えるうえで非常に重要です。

メニコンは、Subscription型です。メルスプランによって利用者との契約関係を作ります。Insuletは、Connected Medical Device型です。Podという消耗品に加え、CGM・アルゴリズム・患者データを組み合わせます。一言で整理すると、メニコン=Recurring Vision Care、Insulet=Recurring Digital Therapeutic Deviceです。メニコンが今後さらに世界企業になるためには、Insuletのように、継続購入+データ+ソフトウェアまで進めることが一つのヒントになります。

新しいJMEI評価軸 Recurring Patient Platform――患者が使い続けるほど強くなる企業

本日の2社から、JMEI企業分析に重要な概念を追加します。それがRecurring Patient Platformです。評価する項目は、利用患者・顧客数、継続率、一人あたり年間売上、消耗品比率、定期課金、データ蓄積、アプリ利用、他サービスへの展開です。医療機器企業を、「今年何台売れたか」だけで評価すると、この競争優位を見落とします。重要なのは、「一度獲得した患者が、その企業の製品・サービスを何年間使い続けるか」です。

本日の未来企業発掘|Beta Bionics

「患者がインスリン量を考えない世界」を作れるか

本日のInnovation Watchは、すでにNASDAQへ上場している新興医療機器企業、Beta Bionicsを取り上げます。未上場スタートアップではありませんが、JMEIの「未来企業発掘」という意味では、今後の糖尿病デバイス競争を考えるうえで非常に重要な企業です。主力製品はiLet Bionic Pancreasです。

通常のインスリン治療では、血糖、炭水化物量、インスリン感受性、補正量など、さまざまな計算が必要です。iLetの思想は、患者に計算させる部分を減らすことです。Automated Insulin Deliveryをさらに自動化し、最終的にはBionic Pancreasへ近づけようとしています。これはInsuletよりさらに「完全自動化」を前面に出した戦略と見ることができます。

2026年第2四半期の売上高は、3,200万ドル、前年同期比38%増となりました。Gross Marginは59.0%まで改善しています。会社は2026年通期売上高見通しとして、1億3,100万~1億3,600万ドルを維持しています。まだInsuletとは企業規模が大きく違いますが、成長率は高い。しかも収益構造で興味深い動きがあります。

Beta Bionicsでは、薬局チャネルによる売上が第2四半期に1,160万ドル、前年同期比153%増となりました。これは重要です。通常、インスリンポンプはDurable Medical Equipmentとして流通することが多いのですが、消耗品を薬局経由で継続供給できれば、患者アクセス、保険手続き、Recurring Revenueが改善する可能性があります。ここでも、Device→Recurring Revenueが起きています。

2026年第2四半期、新規患者の約69%が、従来のMultiple Daily InjectionsからiLetへ移行した患者でした。これは極めて重要な指標です。InsuletとBeta Bionicsが争って既存ポンプ患者を取り合っているだけではありません。インスリンポンプ市場そのものを広げている可能性があるからです。未来企業を探す際には、競合から市場シェアを奪う会社だけでなく、市場そのものを拡大する会社を高く評価すべきです。

さらにBeta Bionicsでは新規患者の30%超が2型糖尿病患者でした。2026年7月には、2型糖尿病への正式適応拡大を目指すピボタル試験への登録を開始しています。FDA承認を前提とすれば、2027年半ば頃の適応拡大を目指しています。これはInsuletと同じ方向です。つまり次の糖尿病デバイス大市場は、Type 1 Pump Marketではありません。Insulin-treated Type 2 Marketです。

さらにBeta Bionicsは、Mintというパッチポンプを開発しています。2027年第2四半期末までの本格上市を目指しています。これはまさにInsuletのOmnipodと競合する可能性があります。つまりBeta Bionicsは、iLet+Mint+Fully Closed Loop+将来的なBihormonal Systemという複数の技術を持とうとしています。

JMEI Innovation Watch暫定評価──Beta Bionics 自動化思想★★★★★/臨床価値★★★★★/成長率★★★★★/Recurring Revenue★★★★☆/2型糖尿病市場★★★★★/製品パイプライン★★★★★/収益性★★☆☆☆/企業規模★★☆☆☆/競合リスク★★★★☆/JMEI Innovation Watch評価:A+

まだ赤字企業です。2026年第2四半期の純損失は2,340万ドルでした。したがってS評価にはしません。しかし、iLet→Mint→Fully Closed Loop→Bihormonalという技術進化が成功すれば、Insulet、Medtronic、Tandemと並ぶ糖尿病デバイス企業になる可能性があります。

JMEI企業分析ゼミ

本日は15~30分程度を想定し、次の5問を考えます。

  1. メニコンの売上は7%増ですが、営業利益は約75%増えました。この場合、売上成長、利益率改善、1DAY比率、コスト削減のうち、どれが企業価値向上に最も重要でしょうか。また、一時的なコスト削減と構造的な利益率改善をどのように区別すべきでしょうか。
  2. メニコンのメルスプランは定期契約型ビジネスです。一般的なコンタクトレンズメーカーと比較した場合、契約者数、解約率、一人当たり売上、新製品移行率のうち、最も重要なKPIは何でしょうか。
  3. InsuletのOmnipodは、Pod、CGM、Algorithm、Dataを組み合わせます。この場合、Insulet最大の競争優位は、Tubeless hardware、Recurring Pod sales、Automated dosing algorithm、Patient dataのどれでしょうか。それとも、この4つを一体化していること自体が競争優位なのでしょうか。
  4. Insuletでは2型糖尿病患者の利用が急速に増えています。既存の1型糖尿病ポンプ市場でシェアを取ることと、ポンプを使っていなかった2型糖尿病患者を新規市場へ取り込むことでは、どちらが長期企業価値を大きくするでしょうか。
  5. Beta BionicsはInsuletよりはるかに小さな企業ですが、iLet、Mint、Fully Closed Loop、Bihormonal Systemという技術開発を進めています。JMEIの未来企業発掘では、売上100億円前後の段階から追跡を始めるべきでしょうか、それとも黒字化してから本格評価すべきでしょうか。さらに、売上成長、新規患者数、Recurring Revenue、FDA承認、臨床成績、黒字化のうち、どの順序で重要度を付けるべきか考えてください。

本日のJMEI企業分析から学ぶこと──「Installed Base」より一歩進んで「Recurring Patient Base」を見る

これまでJMEIでは、Installed BaseをMedTech企業の重要な評価軸としてきました。しかし今日のメニコンとInsuletを見ると、その一歩先があります。MRIやCTでは、Installed Base=世界中に何台自社装置が設置されているかです。一方メニコンやInsuletでは、装置台数より、何人の患者・利用者が毎日自社製品を使っているかの方が重要です。そしてその患者が、毎日使い、毎月購入し、データを蓄積し、アプリを使い、別の自社サービスへ移行するという関係が続きます。そこでJMEIでは今後、Recurring Patient Baseという考え方をMedTech分析へ加える価値があります。

今日の核心

今日の最大のポイントは、「医療機器を何台売るか」から、「何人の患者が毎日その会社の製品を使い続けるか」へ評価軸を変えることです。メニコンでは、コンタクトレンズ+メルスプランによって長期利用者を作っています。Insuletでは、Omnipod+Pod交換+CGM+Algorithm+Dataによって患者との関係を長期化しています。Beta Bionicsも同じ方向へ進んでいます。この構造は今後、糖尿病、睡眠時無呼吸、心不全、COPD、視力管理、補聴器、透析、在宅医療など、多くの医療領域へ広がる可能性があります。したがってJMEIのMedTech企業評価では、Installed Baseだけでなく、Recurring Patient Base、そして一人の患者との関係が何年間続き、そこからどれだけ継続的な医療価値と収益が生まれるかを見るべきです。これはJMEI企業分析データベース、Innovation Watch、Global Healthcare Leaders、HP企業分析、note、そして将来の『日本医療企業白書』へ共通して使える重要な評価軸になります。

※本記事は企業・産業研究を目的としたものであり、特定の株式の購入・売却を推奨するものではありません。

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